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読書記録 暗黒童話(乙一)

 実家に帰省、姉の本棚を見ていると、乙一さんの作品が並んでいる。久々に読むとする。姉妹で絶妙に作家の好みが違うのだが、お陰で読む作家の幅が広がった。

暗黒童話 (乙一、2001年)

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 何度か読んだことがあるが、毎度面白かった記憶のある暗黒童話。乙一さんの作品は、「怖すぎないホラー」というジャンルだと思っている。そのため、ホラーが苦手な人でも安心して読むことができる。(わたし自身も然り)

あらすじは、


ほんの些細な出来事で左眼を失った女子高生の菜深は、事故のショックでそれまでの記憶も無くしてしまう。明るくて人気者だった彼女の性格は一変し、周りは困惑や失望。そんな中、左眼の移植手術を受ける。手術は無事成功したが、ある日左眼が元の所有者の「記憶」を写し始める。記録するなかでそれは実在している街や人物であると知り、菜深は引き寄せられるようにその土地へと向かう…。


 左眼が断片的に見せる記憶が、まるで主人公とともに探索ゲームをしているかのようで、読みながらワクワクした。わたし自身の昔読んだ記憶が曖昧なので、あれ?誰が犯人だっけ?この人か?と全員を疑う始末に。少々グロテスクな表現や、想像するとゾクっとするシーンもあったりしたが、それが乙一さんらしさ?で良かった。著書初の長編らしいが、まんまとミスリードを誘われたり、最後までドキドキハラハラで読むことができた。

 ホラーが苦手だけどホラーが読みたい人、暗い話が好きな人にはもってこいの作品だと思う。

 ところで、これを機に乙一さんの経歴を調べてみると、別名義での活動も多くて驚いた。中田永一というペンネームで活動されていることは知っていたが、それ以外にも2、3個ほど。正直、この人があの「くちびるに歌を」と同じ作者だとは、今も思えない(失礼)。こんなにも作風を変えられるなんて、やはり天才である。

 久々に乙一さんの作品を読んだので、GOTHやZOOなども読み返してみようかな。  

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