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星々ワークショップ vol.5 合評会メモ

星々ワークショップ vol.5 の合評会に参加しました。

事前に受講生が5000字で創作して提出し、当日に互いに感想を述べて、ほしおさなえ先生、森潤也先生 @junyamegane、緑川聖司先生 @midorikawa_se の講評、賞の発表、という流れ。

感想の持ち時間が4分しかなくて、話しきれないことがありました。というわけで、残りをこちらに書きます。

あと自分が書いたプロセスや、考えてたことも残しておきます。これは将来の自分用。あるいは商業デビューしたときのセルフ辱め用。

感想

設定の意外性、主題(≒登場人物や世界の変化)、構成、表現の4軸で見ています。提出作品は公開されていないので、著者名・作品名ではなく番号にて。

01 - 父への反発、凹んで改心しました、というのは、普遍的ではある。時系列で主人公は変化しているけれど受動的。自分語りによって「周りをわかっていない」の表現になっている。冒頭で何が起こっているのかが分かりにくい。

02 - 自由律詩っぽいフォーマットで、残念ながら私はこの方面に死ぬほど疎いので、コメントしづらい。しんみりした雰囲気がじわじわくる。

03 - TikTok のイマドキ感と、運動が苦手という普遍的悩みの組み合わせが面白い。主人公のがんばりが伝わってくる一方で、やや受動的(?)かも。でも感情移入できる。エピソードを適切に端折って時間経過させるので、進行のテンポがいい。

04 - BL のタイムループもの。エピソードは時間をいったりきたりする一方で、情報が出てくる順序はわかりやすい。人物の登場順もしかり。 全体的に分かりやすい。ぞっこんとか言うのかな?(BL文脈では使うのかな)

05 - 各登場人物ごとにファーリのイメージを持っているという設定と、文体が合っている。自分の意志で出ていくという変化と、希望を捨ててないという変化のなさ。ファーリってだれだよ感があるので、細かい設定をスキップしても気にならない。

06 - 置いていかれた者が入れ替わっていたら、という設定が、謎解き構造と連動している。黄昏、よそ者で、各エピソードがつながる一方で、根幹で何がつながっているのか分かりにくい。個々のシーンで起こっていることは分かりやすい。

07 - 花嫁のスピーチと見せかけて、密かな贈る言葉になっているのが面白く、文体が活かされている。ふっきろうとする余韻にじわじわ共感。彼氏の話あたりでひっくり返すのがスリリング。百合っぽさを押しすぎないところが自然。

08 - 心の声が漏れてる設定は面白い。二度読み系。聞こえてたからならではのエピソードがないのは、もったいない。

09 - 墓を壊すことと、歴代親族がwktkすることの連動が面白い。供養ってことか。人物の出し方、情報の出し方がスムーズ。最後がちと分からなかった。現象も心情も、過不足なく描写されている。

10 - 認知症からみた世界というのは、面白い。カズオイシグロが書きそうな微妙に信頼できない語り手っぽい。状況と、物悲しさが徐々に明らかになるペースがいい。教えたげたい欲の抑制と発露の逡巡もいい。

11 - 遺跡で学ぶ、民族間の協調というコンセプトは、普遍的ではあるけど、もうひとひねるあると、意外性があるかも。最後の展開がやや急。個々のシーンで何が起こっているかは分かりやすい。

12 - ありがちかなー、とは確かに感じた。物語世界での時間進行がすごく短いシーンを、5000字かけるので、密度は濃い。一方で情報多すぎ感はある。言いたいことを言うっていうドキドキ感がいい。

夢をかなえるために必要なたったひとつのこと

という、暑苦しい題名で、5000字の掌編を書きました。ナビ(当日のコンテンツと進行のしきり)のナヲコさんから、ナビ奨励賞をもらいました。ありがとうございます。めちゃ嬉しい。

星々サイトに後日載せてもらいます。

今回は「最後のひっくりかえしよりも前に、小さな変化をつくる」ことを意識しました。いつも最後の最後で強引なひっくりかえしをして、よく分からん、って言われるので。

NOVA 2021 春号を読んでいました。

自分にかけた/かけられた足かせを外そうとする物語、が多いと感じました。そのテーマを参考にすることにしました。

物語設定としては「気合や根性や思いの強さではなくて、地味で科学的で実践的な問題解決こそが役に立つ」にしようと思っていました。これは割と私がずーっと思っているモチーフです。なにかを変えるのは、正義よりも、ロジスティクスだ、的な。

ブレインストーミングの末「自己編集できるアンドロイドが、自己変革のためにリバースエンジニアリングする」にしました。はい、NOVA の高丘哲次「自由と気儘」です。あとはテッド・チャン「息吹」。

そのあとあーだこーだと設定や人物像をいじくって、ログラインを作りました。「人間によって制約が課せられたアンドロイドが、そのメカニズムをつきとめ、地道な努力で自己変革する。

設定: アンドロイドは自己編集できるが、性格を変えるには、認知と思考を分析し変更する必要がある。
- 普段と違うことをしようとすると、それが正当な行動であったとしても、不快か不安を感じる。
- アンドロイドは合言葉でサスペンド・レジュームする
- サスペンド: 浅き夢見じ酔ひもせず / あさきゆめみしゑひもせす、高周波の第九でサスペンド
- レジューム: ナマムギナマゴメナマタマゴ
- アンドロイドのNNモデルは蒸留と枝刈りによって圧縮されてるでむずい。
- 人間とアンドロイドの認知の対応
主題: 自己変革のためには、体系的にコンフォートゾーンから抜け出す必要がある
- 文体: 主人公の舞台でのひとりがたり
- 登場人物
- コンフォートゾーンにとどまっていたアンドロイドが、不快感を徐々に解消して作曲するようになる
- 聴衆 : イラストを描きたいデザイナー / プレーしたいフットサルコーチ / 工業デザインしたいCADオペレーター /  映画を鑑賞したい、土木ワーカー
などなど。

課題が「語ることについて」であること、読書会の課題図書が童話語りだったことを踏まえて、今回は、二人称(「あなた」に話しかける文体)にしようと思っていました。ブレインストーミングしながら「自己啓発セミナーのうさんくさい講師」が出てきて、選びました。いくつか参考にした作品があります。

マンガ「闇金ウシジマくん」30巻〜「フリーエージェントくん」
与沢翼っぽい、うさんくさいやつ。

映画「マグノリア」のトム・クルーズが演じるうさんくさいセミナー講師。「イチモツを敬え。おマンを手なづけろ」とか真顔で言うトム・クルーズ。うける。

映画「億男」で、藤原竜也が演じるセミナー講師。「あなたの夢、叶いまーす!」とか言う。映画の評価はいろいろだけど、このシーンの演出と演技は、熱狂と冷めた目がびんびん伝わってくる。

だいたい1ページごとのペースで、意外なことが起こるようにしました。人間ではなくアンドロイド、自分でブレーキ、奉仕時間、人間の登場などなど。

ナマムギナマゴメナマタマゴは、村上龍「希望の国のエクソダス」から。最初は高周波とか、音楽とか、あさきゆめみしとか考えてました。でも説明が長くなるなー、テンポ悪いなーと思いました。そんなわけで、合言葉とか早口言葉とか、意味のないフレーズから選びました。

息切れ。だいぶ酔っ払ったので、この辺で。ありがとうございました。

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