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資産運用会社は必要?

定年退職まで、外資系の資産運用会社に、信託銀行(運用部門)出向を含めて、約20年勤めました。在職当時、よく考えていたことの一つが「資産運用は重要だが、資産運用会社は必要か」ということでした。

人は立場や状況によって、感じることや考えることが変わります。私は車を運転しているとき、車道を走る自転車が邪魔と思い、自転車に乗っているときは自動車危ないな、と思っていました。手前勝手な話です。

運用会社のビジネスモデルは、ファンドマネジャーが優れた製品を作る工場の役割、営業は自社商品を売り、お客様の資産の状況説明や管理を担う管理部門の役割も重要。金融業界のメーカーの役割と理解していました。

運用資産が増えれば、お客様、運用会社、販売会社(証券・銀行など)、資産管理会社(信託銀行)の4者がWin-Winとなるビジネス。

ビジネス・モデルは好きでした。人事採用や若手の教育のときに熱く語ったものです。しかしながら、いざ自分が投資する側になると、自社のファンドを含め投資信託に投資する気にならなかった。なぜか…

ゼロ金利時代において投資時に支払う販売手数料3%以上、あとは継続して信託報酬が2%近くかそれ以上取られる。最初の年に5%失うマイナス・スタートの運用、「何を好んでやるか」、という話です。販売手数料は販売会社が総取り。信託報酬は販売会社、運用会社、資産管理会社(信託銀行)の3社で分けますが、当時は販売会社の取り分が悔しいほど多かった。

さらに、投資信託の中で行われる証券取引の手数料、海外投資の場合の証券保管管理料、為替手数料、監査報酬などがファンドから支払われます。
取り分が相対的に少ないため、投資信託委託会社の役割を担う運用会社の中には運用に関わる事務コストをファンドにチャージして、資金回収するケースもありました。

これらは「隠れコスト」といわれ、一般的には運用報告書まで読み込まないとわかりません。保険会社の運用商品はほとんどコストの開示がないので、それよりずっとましですが。

当時の運用会社のお客様は、直接相手となる証券会社や地方銀行、機関投資家などであって、個人投資家(最終受益者)ではなかった。正直、有力な証券会社や地銀の販売能力のすごさに驚く場面も少なくなかったです。

運用会社は販売会社の方を向き、売れるための商品づくりをしていたかもしれませんが、優れたファンドマネジャーは独自の運用哲学を持ち、運用を委託された資産の収益向上にべストを尽くしていました。少なくとも私にはそう見えていました。

山崎元さんは著書『山崎元の最終講義 予想と希望を分割せよ』の中で、「金融業界の不都合な真実の一つだと思いますが、手数料を比べるだけで、99%の商品(投資信託)は、はっきりいってクズです。」と述べています。

今は、販売手数料ゼロかつ信託報酬の少ない投資信託が生まれています。
新NISAやiDecoなどの税制優遇もあり、投資信託は重要な投資先です。

運用会社やファンドマネジャーの"素晴らしい"ストーリーに関心を持ち、気に入った投資信託で資産運用を始めるのは、よい一歩前進だと思います。
ですが、投資に関心を深め、自分で考えるようになると、違う選択も出てくると思います。

誰でもポジショントーク、自己正当化する傾向があります。インデックスに勝っている期間を切り取って説明しているケースもあります。優れた運用者であっても長期間にわたって常に勝ち続けることは容易ではありません。

バブル崩壊後やリーマンショック後に運用を開始した日本株投資信託の大半は例外を除いて運用成果はプラスのはずです。日経平均やTOPIXのインデックスが基本的に上向きでしたから。但し、短期目線で右往左往した一般投資家はババを引いているかもしれません。

私個人は昔からネット証券を通じた個別株と低コストETF中心の投資です。証券売買手数料ゼロはありがたい。

NISA創設後は投資信託の購入を本格化し、新NISA口座では積立枠・成長枠ともにインデックス投信の積立を続けています。税制の優遇はありがたい。



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