『検索窓の世界 ⑨夜』

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日没から日の出までの時間のことである。つまり太陽が地平線や水平線の向こう側にある時間帯のことである。宵ともいう。

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気象庁によると、夜とは18時頃から翌日6時頃までを指すらしい。
しかし、夜に対する捉え方は、年齢や環境、仕事柄や精神状態によって異なるように思える。

小学生の頃、夜は短かった。
「9時には寝なさい」と言われて、ドラえもんを観て、クレヨンしんちゃんを観て、お風呂に入ったらもう終わりである。
9時以降の夜は知らない。寝ている間に長い夜は更けていく。

高校生の頃は、「一夜漬け」という言葉があった。
テスト前日は夜だけが頼みの綱だった。一生朝が来ないでほしかった。この夜を止めてよ…とJUJUの歌詞みたいな台詞を頭の中で反芻した。
あの夜に食べたカップラーメンってなんであんなに美味しく思えたんだろう。

大学生の頃は、夜が明けるまでが夜だった。
居酒屋の飲み放題でコークハイを何杯も飲み、友達や先輩が吐くのを当たり前のように眺めながら、朝を迎えた。
今でもコークハイを見ると、あの頃の夜を思い出す。そして、居酒屋を出ると眩しすぎる朝がいつも通りやってくることを。

大人になるにつれて、夜にしかできない楽しみが増えた気がする。
深夜ラジオを聴いたり、夜の坂道を自転車で下ったり、夜のサービスエリアでコーヒーを飲んだり。
ドラえもんやクレヨンしんちゃんでは教えてくれない夜が、たくさんあった。

文豪たちは夜をこう表現した。
志賀直哉は「死人のように静まりかえる」、村上春樹は「町全体が眠り込む」、伊坂幸太郎は「深海にいるかのように静かで暗い」と。

これを書いている夜も、誰かの夜を想像する。
セレブは六本木の高層マンションでパーティーをしているだろうし、キャバ嬢は歌舞伎町で何千万円というお金を動かしているだろう。ラッパーは渋谷のクラブで危険なドラッグに手を染めているだろうし、タクシー運転手は「割増」を灯して東京中を走り回っているだろう。

僕は文豪のようにうまく夜を表現できないけれど、静かになることだけが夜ではない。
誰かが寝静まる頃、誰かが輝く夜もある。
あの日短かった夜は、輝けば輝くほど長くなり、この自由が永遠に続くと思い込む。
誰にも縛られたくない…と尾崎豊の歌詞みたいな台詞を呟いた、28の夜。