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新規国債43兆円のひみつ

令和3年度一般会計の新規国債発行額は43兆円と政府は発表しています。「公債依存度は40.9%」と報道されていて「支出に対して収入が6割しかないのか!日本はヤバいな!」と国民が思うようにマスコミも誘導しています。しかし、これらは作られた数字なのでまったく心配する必要はありません。結論から言えば予算に計上するべき額は20兆円です。半分以下ですね。以下、その説明をいたします。

国債43兆円の内訳を見てみましょう。
新規国債発行額 43兆5970億万円
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2021/seifuan2021/02.pdf
債務償還費相当分(交付国債分を除く)
(A)14兆7,317億円

利払費相当分
(B) 8兆5,036億円

政策的支出による赤字相当分
(C)20兆3,617億円
となっています。
このうち、(A)+(B)は「国債整理基金特別会計」に支出されます。(専門用語で、この支出のことを「繰り入れ」(くりいれ)と言います。)

これらのお金は、国債整理基金特別会計で、
・国債の元本の返済
・国債の利息の支払い(利払い)
に充てられます。
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/special_account/kokusaiseiri/2021budget.html

みなさんは、ここで気づかれたのではないでしょうか。
(B)は国債の利息の支払いの費用です。
国債整理基金特別会計に入れられるのは分かります。(A)はどうでしょうか。利息の支払ではありませんね。そうすると、
(A)は国債の元本を返すための財源として国債が発行されていることになります。

これは、単なる借り換えです。

つまり、新規国債発行額43兆円のうち14.7兆円は、実質的には借り換えです。本来は借換債で財源を確保すべきものです。

同じように「財政投融資特別会計」予算で発行される財投債45兆円で調達されるお金も、26.6兆円が国債整理基金特別会計へ繰り入れられます。このお金も政府の借入金の元本の返済や利払いに充てられます。実質的には借り換えです。

つまり、令和3年度の国債発行予定額236.0兆円のうち、
・一般会計からの繰り入れのうち
 14.7兆円
・財政投融資特別会計からの繰り入れのうち
 26.6兆円
・借換債
 147.2兆円
を足して合計188.5兆円が借り換えになります。

つまり、コロナ禍で予算が膨らんだと言われる令和3年度の予算でも、令和3年度に発行される国債のうち80%が借り換えのために発行されている国債であり、新しい資金需要に対応するために発行されている国債は全体の20%しかないということが事実として分かります。
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2021/highlight201221.pdf

このように、令和3年度の予算を見ても、国債の元本の支払いや国債の利息の支払いをする財源は、借換債の発行であって税金ではないと言えます。

それでは、なぜこのような複雑な会計処理をしているのでしょうか
国債発行残高の1.6%を将来のために積み立てると見立てて、一般会計に計上するルールがあるからです。「60年償還(しょうかん)ルール」と言われるものです。これが、上記(A)「債務償還費相当分」14.7兆円です。

この目的は、国民に対して国家予算の新規国債の発行額を大きい額に見せるためです。

もしこれがなければ、一般会計予算は、
106兆6097億円
→91兆8780億円
に減額されます。
また、利息分の8兆5036億円も借り換えの時に元本に組み入れればいいだけなので、それも抜くと、
→83兆3744億円になります。

そうすると、新規国債の発行額も上記(C)の額
20兆3617億円だけになり、
財政緊縮派が「公債依存度」と呼んでいる数字も、
20兆3617億円÷83兆3744億円
=24.4%にまで下がります。(もっとも、公債依存度という言葉そのものがおかしいと思うので、私は自分ではその言葉を使いません。)

日本のGDPは約560兆円なので、
一般会計の赤字もGDP比はわずか3.6%になり、
日本の財政は極めて健全だということになります。

なぜ日本政府はこのような数字のトリックを使っているのでしょうか。
そうです。増税するためです。

日本国民が日本の財政の本当の姿を知ってしまうと、増税する必要はないことがバレてしまいます。事実を知った国民は、さらに進んで消費税をゼロにしても問題ないことが分かります。自分の選挙区の政治家に働きかけるようになると、事実を知っている政治家が選挙で選ばれるようになり、消費税は廃止の方向に向かいます。すると、消費税を毎年政府から払い戻してもらっている輸出大企業は利益を失います。財務省も取りやすいところから取って自分たちの権力を行使するということができなくなります。既得権益層に影響が出てきます。(マスコミががんこに緊縮財政を主張している理由は私にも分かりません。思いつく理由としては、財務省が国税庁を持っているので国税に入られて不透明な取材費の追求を指摘されたくないからか、また、広告費が輸出企業から入ってこなくなるのを恐れているからか、というものがあります。)

もう言葉だけの「国民の命を暮らしを守る」という呪文はいりません。
菅政権には、本当に国民のためのになる予算を編成してもらいたい。

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