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【Facebookアーカイブ④ 情報爆発 医師と患者の知識など】


<情報爆発と医学リタラシー④>

情報爆発が生み出す世界というのは「星空」のようなものだと考えています。

「星空? きれいでいいじゃないですか?」と思われるかもしれませんが

皆さんは、星空を見て どの星が何光年離れているか? わかりますか? 星の新旧わかりますか? 

同じように 情報の旬や新旧はそれをフィルターする専門家でないとわからないのです。

特定のリタラシーが鍛えられていない人が見上げる「星空」は、平面に光が分散しているようにしか見えません。しかし現実には、個々の恒星から光が届くまでの時間は、観察する人からの距離によって異なり、タイムマシンのように振る舞っています。事実は、まったく平面ではないのです。

爆発する医学情報もまた、新旧、文脈、そしてエビデンスレベルの異なるものが珠玉混合になっています。臨床における判断に役立つ医学臨床論文であっても、観察研究と介入研究があるのはご存知の通りです。前者のcase report的な研究論文もあれば、後者のエビデンスレベルが高いrandomized controlled trial(ランダム化比較試験)のような研究論文もあります。

こうした医学情報は、臨床経験というバックグランドを持つものが、自分の医療現場への適合性を判断してはじめて役立つものではないでしょうか。論文のABSTRACTやWEBでのまとめのような断片的な結論だけで、自分の医療行為を変えるという判断はできないと考えます。

しかし、この点は、医学を修めていない一般の人にはなかなか理解いただけないところでもあります。

実際に、患者さんから「WEBにこう書いてあった」と言われ、方針を理解してもらうのに苦労したことは、どの医師も経験していることだと思います。NYAUW!

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<医師の付加価値はどこにあるのか①>

これからの医師の役割の一つは、世間一般の医学リタラシーを高めることだと考えます。

「WEBにこう書いてあった」という患者さんやマスコミの話を聞いて、いきなりその情報を否定するのは止めるべきです。

そうではなくて、その情報を持っている患者さん自身がどうしたいのか、要するに「SO WHAT ?」と問いかける必要があるということです。これは、ムンテラやインフォームド・コンセントの概念を超えた、患者さんによる意思決定を支援するという態度です。

このとき、医師は単なるアドバイザーに成り下がるのではありません。患者さんの生死や生活の質を大きく左右するような、人間にとって最大の意思決定に関する専門家になっていくということです

いかに人工知能が発展しても、人工知能の「オススメ」だけで決められることと決められないことがあるでしょう。そして、医学的な意思決定こそ「オススメ」や「星何点?」だけでは決められないことの代表的なものになるはずです。MYAUW!

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<医師の付加価値はどこにあるのか②>

この場面において、患者は「こうすれば治癒するらしい」という情報を持っています。そして患者が注目するのは、あくまでも治癒に関するポジティブな情報です。そこには「希望バイアス」としか言えないものが必ず生じます。

たとえば「95%の確率で治癒する」という情報に触れた場合、患者は「95%」のほうに注目します。しかし医師は、残りの「5%」の現実を日常的に経験しています。この部分に関する経験に基づいた医学リテラシーは、人工知能がまだまだ苦手で提供できないものであり、私たち医師の付加価値となるでしょう。

そうした時代にあって、医療現場の価値はむしろ上がっていきます。特定の疾患に関する「5%」を経験している場合と、そうでない場合のギャップにこそ、付加価値の源泉になるからです。(5%の情報だけであればいずれAIもカバーしてきます。そこにDRYデータだけを伝えるだけでなく、WETにコミュニケーションをすることも求められてくるのではないでしょうか?)

この「5%」は患者さんだけでなく 他の医療従事者もアクセスや解釈ができないものです

このとき、医療情報の爆発がもたらす専門性の細分化が、越えなければならない課題として立ち上がってきます。つまり、医師同士がそれぞれの「5%」をお互いにリスペクトし、高度に連携していく必要があるということです。

これまでのように、偶然の出会いに依存したリスペクト関係では不十分であり、積極的に、そうした関係を広げていくことが重要になってくるはずなのです。

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<医療従事者(以下、医療側)と患者の知識量逆転①>

これまでの人類史において、専門的な情報はその分野の専門家(ギルド)にしかアクセスのできないものでした。しかしいまや、過去にはアクセスが制限されてきた情報が、どんどん専門家でない人にもアクセスできるものになっています。この環境変化そのものを止めることはできません。

いまや、医学INSIDERと医学OUTSIDERは(ほとんど)同じ情報を手に入れることが出来ます。それどころか、表面上は医学INSIDERと医学OUTSIDERの間で、知識量の逆転が起こるケースさえ生まれています。患者のほうが、特定の疾患に関する知識量だけなら、医療側よりも多いという現象が現実に見られるのです。これは、本当に重大なことです。

患者は、自分や自分の愛する人の疾患がとても気になります。ですから患者は、特定の疾患の当事者として、ピンポイントに必死で勉強します。彼らが得る情報の質やバイアスはともかくとして、多くの事前情報を持って、診察を受けるような時代なのです。

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