APシールとCLシールとは?そして「つくる責任」につながるのか?
あまり日本では知られていないと思うが、APシールとCLシールとは何かについて少し書いてみようと思う。多くの蛍光ペン、特にTextmarkerでは海外メーカーをよく手にするが、よく見ていると、ペンに「AP」というマークが記されている製品があることに気が付く。
日本製品で見かけることは滅多にないが、これは、The Art and Creative Materials Institute, Inc. (通称ACMI)という国際的な協会が作っている認定プログラムで認証された証。アート系、クラフト系、クリエイティブ系などの製品・素材に対して、その製品の安全性を認証しており、世界の多くのメーカー、企業が参画している。
ACMI認定製品のシールは2種類あり、AP(Approved Product)シールと、CL(Cautionary Labeling)シール。
APシールとは?
一定の基準のもと安全性を認められている製品を意味している。100%の安全性というより、急性または慢性的な健康被害を引き起こすのに十分な量は含まれていないことを示している。「ただちに健康被害は引き起こさない」という言い回しが日本人ぽいのかな。医学の世界で100%の保証は出来ないし、有毒性も、薬の効果も副作用も、一定の中長期の時間がないと証明されないため、仕方ないのもよくわかる。
CLシールとは?
対して、CLシールは、既知の健康上のリスクが認められているものにラベル付けされる。つまり取り扱いを間違えると危険を伴う(正しく使うには問題ない)ため、正しい利用を求めるハザードマークになる。正直こちらを見ることはめったにないかもしれない。
APシール登録企業とは?
APシールの価値が、利用者、特に子供たちの安全性というのは大きなポイントになるが、ビジネスライクに捉えると、それにより開ける市場がある、と捉えるのも一つ。アメリカ市場に進出したい、特にその教育現場に普及させたい、という考えがあったら、重要な要素になるのかもしれないが、現実的にそこまで効果があるかを実証することは難しいところ。
実際、日本企業で登録されている会社は12社(2019年8月時点)しかなく、そのうち、近所の文具店で取り扱いがある身近なメーカーとなると、呉竹(筆ペン)くらいになる。ただ、じゃ、日本企業はこの認証を無視しているかというとそうではなく、伊東屋、サクラ、シャチハタ、ゼブラなどはアメリカ法人側で登録・参画しているから企業として無視しているわけではない。BICも、フランスとしてではなく、アメリカ法人が登録している。
それでもやはりアメリカ企業ともなると、その数、200社弱(2019年8月時点)と、企業体として重視していることがわかる。Textmarkerでも手にすることが多いSharpie(これは企業名ではない)も、Newell Brands(ニューウェル・ラバーメイド社)として登録されていた。
そして、この規格、日本並みかそれ以上に、欧州企業の参画が少ない。文具用品などはドイツか日本という印象だが、あまりに少ない。50年以上歴史のあるACMIはあくまでもアメリカの認証機関なんだな、というのがこのあたりから伝わってくる。もしくは、有害性物質がどのようなものに多く扱われるか、と考えたときに、インクなどの塗料と考えたら、かつ子供が使うことの少ない万年筆メーカーにとっては関係ない、と考えたら、この数字は分からないこともない。むしろアメリカでよく見るクラフト系のペンキとかの方が重要なのかもしれない。
ちなみに、日本の12社の中で気になったのが100均のダイソー。さすがにビジネス感を感じずにいられない。ダイソーは国内3,000店舗超に対し、海外2,000店舗超(28の国と地域)なので、自社ブランドをどうアピールするかにこの認証を使っているのかもしれない。安かろう悪かろうではない、というところだろうか。
いずれにしても、広義で考えると、このあたりの取り組みはSDGs(持続可能な開発目標)の12「つくる責任 つかう責任」と関連する要素になってくるのかもしれないとも思う。どう紐づけるかは企業次第だけど。でも、そう考えると、時代が求めているものにアジャストしていくことが(建前上)必要になってくる現代において、APシールも一つの重要な取り組みになるのかもしれないし、これに限らずどんな規格であろうと、その水準をキープすることには、ただの商品開発にプラスの予算が必要になることから、何もしない企業や製品より前を向いていると評価してもいいのかもしれないな、と思うところもある。
さて、冒頭、APシールを蛍光ペンで目にすることがある、という話だが、手元にあるものでみると、Sharpieと呉竹だった。まさしく登録企業らしい。
そして、このAPシール、CLシールが気になった理由は、手元で見つけたからだけではなく、もう一つある。そもそも蛍光ペンのインクって何なのか?そしてその有害性について調べ始めたからなのだが、これについてはまたの機会に!