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常夏(とこなつ)

暑い京都の夏をどのようにすごすか。これは現代だけではなく、千年以上も前の都人もそうだった。それを如実に表現しているのが『源氏物語』の「常夏」の帖である。平安時代の寝殿造りの屋敷のなかには池が造られ、小川が流れていた。そこに釣殿という池に張り出した殿舎があった。

この帖は、光源氏が「いと暑き日、東の釣殿に出でたまひて涼みたまふ」という書き出しで始まっている。息子の夕霧や親しい殿上人たちと、西川 (今の桂川) の鮎を取り寄せて、宴会をしている場面である。

京都では、今は5月から鴨川に床 (ゆか) が張られて、涼みながらの食事の光景が見られるが、これの貴族版である。大御酒、氷水、水飯などを食べている。氷水は冬の間、北山に数カ所あった氷室に貯めておいた氷。水飯とは、この当時まだ「茶」が日本にはなかったので、水茶漬けを食べていたのである。

2002年6月10日 吉岡幸雄 染司よしおか工房だより より
※アイキャッチは『日本のデザイン』第1巻 源氏物語「常夏」より


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