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「きさらぎ駅」を見たので感想と考察

※画像はイメージです

アマプラで映画「きさらぎ駅」を観たので、少しだけ感想と考察を書きたいなと思いますよ。

どんな映画?

 嘗て2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)のオカルト掲示板に投稿された、実在しない「きさらぎ駅」に降り立った女性の不気味な実況を元ネタにしたホラー作品です。

 元ネタでは、遠州鉄道で帰宅中のコテハン"はすみ"が前述のような実況を行い、通りがかりの車に送ってもらう車中で途切れて音沙汰がなくなる、というところで終わります。

 対して本作は、(だいぶ改変された)元ネタの後日談の位置づけになっています。主人公は大学のレポートのネタとして、きさらぎ駅から生還した"はすみ"を取材し、自らの意思できさらぎ駅に辿り着きます。そうして、"はすみ"のやり遺しを代わりに務める、という内容です。

面白かった点は?

 元ネタが"はすみ"ひとりの体験であったのに対して、電車内にいた複数人の体験に変えたところは映画的には良かった、と思います。元ネタのような押し迫る恐怖はなくなったものの、上手いこと本編に繋げつつ、怖さの残るエピソードでした。

 また、新たにきさらぎ駅に参加した主人公以外はリセット・ループ状態にあるという設定も良かったと思います。いかにもホラゲー的な設定の持ち込みという安っぽさが、逆にきさらぎ駅が都市伝説として語り継がれている理由として得心のいく、言わば強みになっていました。わかりやすいルールがあるとわかりやすいですよ(構文)。

ダメだった点は?

 序盤の「はすみ」視点エピソード(元ネタ)部分のカメラワークで強かに酔いました。ホラーゲーム風の映像にしたかったのでしょうが、不自然な一人称視点と視野周辺の歪みまでゲーム風になっていて、いわゆるゲーム酔いの状態になります。めちゃくちゃ酔いやすい体質なので個人的な症状ではありますが。
 若者ウケの演出とは言え、もう少し見易くして欲しかった…。

次の周回の考察

 最後の最後、主人公の女性が例の電車に残っていることが分かりましたが、彼女の記憶はどこまで残されているんでしょうね。例の電車に迷い込んだ最初のタイミングの記憶、ということであれば、助ける対象の女子高生は既にいません。新たに乗車してきた女子高生を取り違えるのか、氏名を確認して「いない…?」となるのか。いずれにせよ、誤った知識を植え付けられたせいで、毎周のように自分が脱出しようとして他の人間を先に扉に向かわせるはずなので、永遠に囚われたまま、ということはほぼ確定なのだろう、と思います。
 しかし、頭のいい彼女のことです。対象の女子高生がいない、ということにさえ気がつけば、嵌められた事実まで辿り着くかも知れません。そうなれば脱出できて、きっと”はすみ”の元へ再び向かうはずです。復讐の炎を燃やして。
 そう考えると、この物語の結末は螺旋ループのように見せておいて、現実に戻るかも知れない主人公の復讐劇の予兆でもあるんですね。

 ところで、主人公の誤算で脱出できた例の女子高生、現実での時間経過によるギャップとかないんでしょうか。"はすみ"が迷い込むより先に乗車していることから、下手すると現実ではとうの昔に死亡届が出ていて戸籍も残っていない、家族もどこにいるやら、という事態になるのでは…。
 どのみち、あまり救いのない話になってしまいますね。

終わりに

 「きさらぎ駅」の実写映像化はこれで2度目になります。最初は確か「2ちゃんねるの呪い」とかそういうタイトルの短編ホラー集に収録されていたものがあったと記憶しています。そちらは比較的に原作準拠になっているものの、終盤では駅の周辺は人肉嗜食の連中が住む集落だった、というゴアエンド匂わせな結末でした。迫ってくる不気味さという点では最初の実写化の方が好みではあるものの、今作ではループ異世界モノとして新しいきさらぎ駅の方向性を提示してくれたな、という印象です。
 さして怖さはないけど、都市伝説のアレンジとしては悪くないので、時間が余っていればご覧いただきたい、という作品でした。(了)

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