日本式労働システムの欠陥

日本式労働システムの欠陥

就職氷河期とよばれる1993年から2005年の間、バブル崩壊後の不景気の中ただでさえ数の多い団塊ジュニア層は苦戦を強いられることとなる。
実はもう1つ要因があって、日本の正規労働者はよほどのことが無い限りクビにできないようになっており、クビにする場合でも多額の金銭を支給しなければならない。
例えば欧米のように簡単にクビを切れるような制度(ただし手厚い社会保障があってのことだが)であった場合、使えない年齢が高めの社員はとっくにクビになっていて、就職氷河期だからといってそれほど雇用がタイトになることはなかったのではないだろうか。

日本の社会保障が非常に脆弱でもやってこれたのは長い間企業がその役割を担ってきた一面があるからだ。
社員を家族とみなす終身雇用が一般的であったため本来であれば必要であった社会保障の充実が遅れてきてしまった。
その代わり国から仕事をもらうという相互関係もあったのだろう。
しかしその終身雇用体制もほぼ崩壊の道を辿り、実質的な社会保障が捕捉率(必要な人に対してどれぐらいの割合の人が受給できているか)の低い生活保護ぐらいしかないの実情である。
生活保護の捕捉率は15%から18%と言われておりフランスの91%などと比べるとできるだけ生活保護は受けさせないのが国の方針と考えられる。

日本は社会保障を整備する代わりに雇用を維持することを重要視してきた。
公共事業も名目上は雇用の維持である(実際には票につながる先に仕事を分配するのだが)
本来はあまり必要のない仕事であっても無理矢理でも作り出さないと雇用が維持できず、雇用が維持できないということは社会が維持出来ないということであった。
実の所をいうと世の中の仕事の何割かは必要のない仕事である可能性が高い。
都市部では100m四方のわずかな範囲に何軒もコンビニが乱立している地域すらある。
確かにそれだけの需要がある地域なのかもしれないが実情は客の奪い合いをしているだけだったりする。
問題になっているレオパレスはそれほど需要が見込めない地域に複数の賃貸物件を所狭しと建てては約束した家賃収入が得られていない。
公共事業では年度末に重要度の低い場所まで掘り起こしては埋め直しをしている。
海岸地域では津波など過去に一度もおきていない地域にまで護岸工事をして豊かだった海岸を潰している。
除染作業なんてほとんど意味は無いのに表面の土を削って生態系や環境を滅茶苦茶にした上、汚染土を全国の自治体に押し付けている。

このように何が何でも仕事作り出したり、需要も無いのに過度な広告で消費を促したりしなければならないのは仕事が無ければ給与が得られないので生活していけないからである。
迷惑なキャッチセールスや多量の折り込みチラシ、入れ替わり立ち替わり巡回する灯油販売や廃品回収。
様々なサービスが過剰となり過多と成り果てているのは、需要があろうと無かろうと仕事が無ければ生活できないからである。
こんなことをやっているから多くの人間が疲弊して暮らしにくい世の中になっていくのである。

私達は消費に支えられた資本主義社会の中に生きていて絶えずお金を稼ぐために仕事をし、その仕事が元で環境を破壊したり人々の暮らしを不快にしたりしていることがある。
本来であればそのような仕事は不要であり、需要以上の数の同業者もいらないし、必要以上の広告で無理矢理消費者の購買意欲を高める必要も無いのである。
このような馬鹿げた競争サイクルは国土を疲弊させ、資源を枯渇させ、人間を疲れさせるだけの悲しい末路につながるのだ。
もしも日本が一部の先進国のような充実した社会保障を備えているとすれば、社会に必要とされていない仕事を誰が好き好んでやるだろうか。
まともな人なら社会に必要とされ社会から感謝されることを願っている。
それゆえ我々は日本人が持続可能な社会保障というものを模索しながら最終的にはみんなが幸せになるような社会を目指していく必要がある。
ところが現在のベクトルは最終的にはみんなが疲弊して行く道である。
そのことが分かっていながら手をこまねいている政府には何にも期待出来ないのだから我々がいったい何をし、どうすることが日本という国を少しでも長く存続させ出来うれば人々がより幸福に近付けるかという議論をしていく必要がある。

現在多くの識者がその方途としてベーシックインカムを提唱している。
ベーシックインカムに興味が無い人はたくさんいるだろうが、日本は近い将来増大する社会保障費と国債利払い金などにより様々なサービスが中止になったり縮小すると言われている。
そのような事態になってからベーシックインカムを導入しようとなってもそれこそ財源が無いのでどうすることもできないかもしれない。
国がベーシックインカムに否定的なのはベーシックインカムが導入されると国が好きに使える予算が限定的になるからに他ならない。
票田先や地盤固めに予算を使うといったような馬鹿げたことができなくなる。
国が好き勝手に使えるお金が減れば減るほど国民の力が増すのである。

ベーシックインカムの最大の目的は日本の労働の復活である。
無意味な仕事は放棄して、社会的に価値のある自分自身が求める仕事を行うことでブラック企業を排除し、今まで眠っていた才能やら発想やらそういったものが生まれる環境を作ることである。
ベーシックインカム導入と共に企業の解雇要件を大幅に緩和し、年齢だけ重ねた迷惑パワハラ社員なんか入り込む隙間も無いぐらい生き生きとした職場環境を目指す。
日本人すべてのやる気を引き出し、それを阻害してきた数多の要因を取り除き、本当に世界に通用するような技術や研究、事業などを推し進めることで起死回生の逆転劇を目標に掲げよう。
そうしていけばそれがすぐに成果を結ぶことが無かったとしても何十年か後には花開いて私達の求めるような日本を築けるかもしれない。

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