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彩花さんは、長野県のとある村出身だそうだ。 子供の頃の不思議な体験を聞かせてもらった。 そこはこぢんまりとした神社だった。 山の神と称され、春に田の神になり秋に山に戻る神を祀っている。 近所の信心深い住人達が世話をしていたので、山中にあるわりには小綺麗だった。 参道の階段は雑草が除かれ、敷地内に複数点在する塚も掃除されている。 お供え物も簡単なものが飾ってあった。 といってもかなり昔に廃神社となった場所。社や賽銭箱、神輿を入れた倉の戸は朽ちている部分がある。 ぼそぼそとした
長野県に人肉を出していたと噂される、既に廃墟になっているレストラン跡がある。 廃墟マニアの咲子さんは目当ての廃旅館のついでに立ち寄ったそうだ。 背丈ほどある植物に囲まれ、太い蔦や折れた樹木。 歩くに難儀したが、すぐに土に汚されたコンクリートが覗いているのに気付いた。 長屋に台形を逆さにした屋根を乗せたような、不思議な骨組みをしていた。 全焼したと聞いたので、おそらく鉄筋コンクリートの造りだったのだろう。 廃墟というには目立つものが無い、がっかりするようなものだった。 落書き
脚がない人が腰を下ろした時、どのように動くかご存じだろうか。 洋一さんは14歳の頃、競歩大会に参加したそうだ。 長野県にある湖をぐるりと一周する学校行事。冬の寒い時期にやるのに強制参加だった。 もちろん生徒たちのやる気はマダラ。 でも洋一さんは目立ちたい。女の子に一目置かれたいと思った。 なので下校後、個人的に練習をした。 流石に毎日一周はキツイので約2/3周、K水門まで。 K水門近くは駐車場がある。そこまで母親に迎えに来てもらうのだった。 辺りがとっぷりと暗くなる頃、
思いがけず、嬉しい感想を頂戴した。 ので、私もつらつらと思った事を書いてみたくなった。 竹書房さんが毎月開催している怪談マンスリーコンテスト。 2月の最恐賞に輝いたのは丸太町 小川さんだ。 以前よりTwitterやコンテストの選考通過者でお名前は拝見していた。 名前の字面とアイコンのかわいらしさが妙にツボなのも相まって。 どんな方なのだろうと探れば、エブリスタで実話怪談を掲載していた。 ペタペタと、素足で近づいてくるような物語の運び。 シンプルでいて純文学的な表現。 怖い話
少し泣きながら、この話をしようと思う。 私の祖父が亡くなった後の話だ。 うちの家庭は少し複雑で、私は祖父母に育てられた。 2人とも若々しく『おじいちゃんとおばあちゃん』というよりは『ヤクザとその情婦』のような出で立ちだった。 昭和の無口な男を絵に書いたような祖父。 髪型はアイパー。首に金ネックレス、指にオパールのリング。それにグラサンと煙草。 年中草履で黒ずくめ。 そんな強面の祖父は非常に孫煩悩だった。 2年前の夏。 腹痛に倒れて検査入院の結果、大腸癌が見つかった。 抗が