《レオ10世と2人の枢機卿》ラッファエッロ・サンツィオ
《Leone X con i cardinali》Raffaello Sanzio
1516年頃に教皇レオ10世は自身の肖像画をラッファエッロに注文しました。フィレンツェの名門メディチ家出身のジョヴァンニは、ロレンツォ・イル・マニーフィコの息子で、ユリウス2世の死去にともない、1513年にレオ10世として教皇の座につきました。
その頃ラッファエッロは、1508年からローマに移り住み、ヴァチカン宮殿でユリウス2世の居室の装飾に携わっており、その仕事で彼の将来が約束されることになりました。
この時、ラッファエッロは円熟期の35歳、1520年に37歳の若さで急逝するため、これは晩年の傑作ということになります。そして、おそらく最後の活動期の唯一の完全な自筆です。
1514年、ヘリオドロスの間にラッファエッロが《アッティラと大教皇レオの会見》を制作していた際に、レオ10世は、大教皇レオ(レオ1世)のモデルとして自分の姿を描かせました。
Stanza di Eliodoro, Raffaello Sanzio e allievi, 1511-1514, Affresco, Musei Vaticani, Città del Vaticano
Incontro di Leone Magno con Attila, Raffaello Sanzio, 1514, Affresco, 500×750 cm, Musei Vaticani, Città del Vaticano
そして、その2年後、レオ10世は2人の枢機卿をともなう肖像を注文しました。
Ritratto di Leone X con i cardinali, Raffaello Sanzio, 1518, Olio su tavola, 155,2×118,9 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 66), Firenze
左側の、ほとんど横顔で描かれている人物はレオ10世の甥ジューリオ・デ・メデイチ(のちの教皇クレメンス7世)で、右側で教皇の椅子に手をかけている人物は親族の1人ルイージ・デ・ロッシです。ルイージは1517年に枢機卿になったばかりで、1519年には死去しました。
当初この作品は集団肖像画として着手されたものではなく、もともとレオ10世のみを描くはずでした。2人の枢機卿はあとから加ることになったもので、ラッファエッロ自身もしくは弟子の手によって描かれたと推測する向きもあります。
少なくとも最初の構想では、教皇の甥でウルビーノ公のロレンツォ・デ・メディチとマッダレーナ・ドゥ・ラ・トゥール・ドーヴェルニュ(フランス王フランソワ1世の親戚)の結婚に贈るための肖像画でした。それは、1518年9月8日に執り行われた結婚式に教皇が参列できなかったためです。
机上のモティーフを見れば、ラッファエッロがどれほどの表現力を持っていたか、また、人物の顔を見れば、どれほど人間の心理描写に優れていたかがわかります。
レオ10世の前には、真紅の織り物がかけられてた机が置いてあります。レオ10世は拡大鏡を手に、研究によってハミルトン聖書と判明している豪華な挿絵入り写本を読もうとしています。同じ机の上のは、細工の施された金銀製の鈴が置かれています。
この並外れた細部描写により、ラッファエッロは芸術と学問の愛好者である注文主の洗練されたしぐさを際立たせています。
さまざまなニュアンスの赤によって表現される均ーな色調、穏やかではありますが、教皇の権威と彼の宮廷の華麗さを暗示する雰囲気、そして構図全体の調和、これらが、この作品をラッファエッロの作品のなかでも非常に評価の高い、重要な作品の1つにしています。
この作品は、2人の教皇に仕えた画家としての、またラッファエッロの存在によってイタリアでもっとも重要な芸術の中心地となった都市の文化の主導者としてのラッファエッロの経歴を象徴的に物語っています。
ヴァザーリはとりわけこの作品を気に入り、ダマスコ織の服が「衣ずれの音を立て」、玉座の上にある金の玉に「窓の光や、教皇の両肩、部屋の周囲の壁」が反射している様子を称賛しています。
この作品はさまざまなコピーが作成されました。アンドレア・デル・サルトが作成したコピーは、ナポリのカポディモンテ美術館に展示されています。
Copia di Andrea del Sarto,1523, Olio su tavola, 155,5x119,5 cm, Museo e Real Bosco di Capodimonte
ウッフィーツィ美術館/Gallerie degli Uffizi
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