《ダヴィデ》アンドレア・デル・ヴェロッキオ
《David》Andrea del Verrocchio
アンドレア・デル・ヴェロッキオのブロンズ製の《ダヴィデ》は、メディチ家の依頼によって1473年から1475年の間に制作されたと言われています。そして1476年には、ロレンツォと弟のジュリアーノによってフィレンツェ政庁に売却され、政庁舎(ヴェッキオ宮殿)入り口の階段に飾られていました。
David, Andrea del Verrocchio, 1472-1475 circa, Bronzo, 126 cm, Museo Nazionale del Bargello, Firenze
当然、先行するドナテッロの《ダヴィデ》を意識しているはずですが、ドナテッロの挑発的で異教的なエロティシズムをたたえるダヴィデに対し、こちらは、はつらつとした若い生命力と率直な知性にあふれています。鎧もつけていますし、同性愛的な雰囲気は抑えられているものの、したたるような美少年像であることには違いありません。どの角度からでも眺められるように構成された多視点彫像という点できわめて斬新です。近年の修復で、古代風のチュニックや剣は金箔で飾られていたことがあきらかになりました。
興味深いのは、愛弟子の少年レオナルド・ダ・ヴィンチをモデルにして制作したと伝えられていることです。レオナルドは神々しいほどの美貌を謳われた人ですし、このダヴィデの深い知性を宿したまなざしを見れば、その可能性はかなり高そうです。
ダヴィデの足元に配置されたゴリアテの頭像は、美術史家の議論の対象となっています。バルジェッロ美術館では、頭像はダヴィデの足の間に配置されていますが、一部の美術史家は「作者のヴェロッキオは頭像が《ダヴィデ》の右側に配置されることを意図していたはずだ」と主張してます。その結果、ロンドンのナショナルギャラリーやアトランタのハイ美術館では、一時的に頭像がダヴィデの右側に飾られたこともあります。
バルジェロ美術館/Museo Nazionale del Bargello
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