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《キリストの洗礼》アンドレア・デル・ヴェロッキオ、レオナルド・ダ・ヴィンチ

《Battesimo di Cristo》Andrea del Verrocchio e Leonardo da Vinci

この作品の注文の経緯は不明ですが、フィレンツェのサン・サルヴィ教会付属のヴァッロンブローザ修道院のために、ヴェロッキオ工房によって制作されました。

P1120852 2のコピーBattesimo di Cristo, Andrea del Verrocchio e Leonardo da Vinci, 1475-1478, Tempera e olio su tavola, 177×151 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 35), Firenze

この作品は10年近くヴェロッキオの工房に置かれていました。彼は成功した芸術家だったので、多数の共働者や弟子に制作を委託するのは普通のことでした。実際、この絵も人騒がせな様式の違いを見せており、間違いなく複数の画家の手で制作されたことが分かります。

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イエスは右脚に体重を乗せ、やや体を傾けています。腰布を巻いただけのイエスの肉体は、全体の骨格や筋肉の形体が細かいところまで正確に描かれています。

そのイエスの方へ一歩足を踏み出した洗礼者聖ヨハネはイエスの頭上に椀で水を垂らすことによって、洗礼を授けています。これは「灌水式」といわれる儀礼に従ったものです。

イエスもヨハネもヨルダン川の水に足を浸していますが、水は透明さを示す熱練した技巧で表現されています。ふたりの間にはしっかりとした関係性が感じられ、まるで眼前でこの場面が繰り広げられているかのようです。

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ヨハネは伝統的なラクダの毛皮を着て、手には棒につけた十字架を持っています。この十字架には「神の子羊を見よ(ECCE AGNUS DEI)」という銘文が巻きついています。これは『ヨハネによる福音書(1:29)』にある言葉ですが、これによって先駆者ヨハネはイエスをメシアだと認めています。

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上方からは、父なる神の手から解き放たれた聖霊の白ハトがイエスの上に神の恩寵を下らせています。これは四福音書がそろって述べている通りです。

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川の左岸には2人の天使がいて、この場面に立ち会っています。左側の天使を、20歳頃の弟子レオナルドが描いたというヴァザーリの主張は、現在でも広く認められています。その瞳は輝き、閉じたロは微かに緩み、金髪はきれいなウェーブを描いています。入念に描き込まれた細部が一体となって、実に美しい表情をつくっています。彼はイエスの脱いだ衣をしっかりと抱え、洗礼の様子をやさしく見守っています。他の人物も非常に巧みに描かれていますが、この天使像はそれらを超えた美しさがあります。

この天使を見たヴェロッキオは、その後、絵筆を握ることがなかったというヴァザーリのエピソードはフィクションでしょうが、師が若き弟子の才能に嫉妬したことは想像できます。

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20世紀になると、学者たちは天使の背後の風景もレオナルドの手によるものではないかと考え始めましたが、これも現在、一般に受け入れられています。ゆったりと流れるヨルダン川の川面は陽光の反射できらきらと輝き、周囲のごつごつした岩山は後方へ行くほど霞んでいきます。そこに描かれている風景は、フランドルの画家たちやそれに影響を受けたポッライオーロの綴密な描写とは違い、大気の温もりや湿気を感じさせます。

1470年代に制作されたフィレンツェ絵画において、この作品ほど人物や風景が写実的に再現された作品は他にありません。


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ウッフィーツィ美術館/Gallerie degli Uffizi

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