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性についての色々なジャンルの話
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#短編小説

#46.【短編】熾火

#46.【短編】熾火

好きな歌詞がある。これを歌った時点で彼女は「勝ち」だと思った。何に対してかは分からないけど、それでも彼女は確かに勝ったのだと思った。一番綺麗な私って、いつの時のことを言っているのだろう。言葉だけのイメージだと何となくバージンのことかと思うけど、それだと、経験した後の私は、ずっと、いつまでも経験前の私に及ばないということになってしまうのか。それだと何か悔しい。勝ち目ないじゃん。まぁ、曲全体を見ると儚

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#43.【短編】齧

#43.【短編】齧

雨の日は陰鬱な気分になる。「今日はあなたの日ではないよ」と告げられているような気がするから。勝手に決めないで欲しいけど、雨にとってだって「雨じゃない日」があるのだから大目にみることにした。

噛んで欲しくなる時がある。もちろん誰でもいい訳じゃないから、いつも断らないでいてくれる安心感はありがたい。性欲を開放する為だけの画一的な手段でもなければ、認識できないほどの絶望に打ちひしがれた時の救いを求める

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#32.【短編】21グラムの価値は

#32.【短編】21グラムの価値は

ー以前書いたこちらに出てくる風俗嬢視点の話ー

旦那と別れたのは3年前。結婚生活は安定していたけど、子供が生まれて以降ずっとレスだった。後はきっとありふれた話。疼きを持て余して、アプリで知り合った年上の既婚者との関係にはまり、それが明るみに出て離婚。彼のことは嫌いではなかったけど、思った程ショックではなかったことに自分でも驚いた。悔いがあるとすれば、娘に悪いことをしてしまったと思うこと。でも、当時

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#27.【短編】心が叫びたがっている夜は

#27.【短編】心が叫びたがっている夜は

酷く苛立っていた。時刻は23時。眩暈を覚えたくなる程の激務を投げ出さないのは、別に特段強い責任感を持ち合わせているからではない。生きる為に金を稼ぐ。恐らく仕事からでしか得ることのできない高揚感を感じることはあるが割り切っている。手段としての仕事に傾倒はしていない。新進気鋭の若い経営者や「結局"それ"は仕事にしか無い」といったことを言う著名人の言葉は、理解や共感する部分もあるが自分とは別世界の話だ。

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