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床の間をあるものにリメイクした話

 このnoteでは一級建築士で住宅の設計をしている私が、中古住宅を購入してリノベーションした体験談を書いています。
プロだからこその選択、決断、それらの理由についてなるべく詳しく書いて、これから住まいを手に入れようって方に新築以外にも快適な住まいを手にする方法があることを知ってもらうことを目的としています。

1.今までのおさらい

これまでを簡単に振り返ってみると、まずは一級建築士の私がなぜ新築住宅ではなく中古住宅を購入してリノベーションをしたかについて書きました。
答えは簡単で、夫婦の要望全て叶えるには新築ではお金が無くて、この方法でしか実現できなかったからです。

リノベーションをしようと思ってまずすることとして、中古住宅を探すことだと思います。
ネットに載っている情報は、専門家ネットワークの余り物である場合が多いこと、土地に強い不動産屋さんと中古住宅に強い不動産屋さんがいることを説明し、中古住宅に詳しい不動産屋さんに要望を伝えて見つかったら教えて下さいと声を掛けておくのが最適と書きました。
また、本当にリノベーションできる中古住宅なのかは建築士がの判断が必要で、気になる物件があったら内見に同行してもらう方が良いことも紹介しました。
私の場合は、元々不動産の知り合いがFacebookの友達にいて、プロである自分の目でリノベーションできることを判断して、今に至っています。

3つ目に書いたのは、気になる中古住宅を見つけた時に不動産は基本的には早い者勝ちであることについて書きました。
早い者勝ちになってしまうのは、不動産屋さんの収入源が販売時の手数料であることに起因します。
また「不動産のプロ=建築のプロ」ではないので、不動産の紹介は不動産屋さん、リノベーション可能かどうかは建築士が判断すると書きました。
内見に同行してくれる建築士の調査精度、提案力がそのままコストに跳ね返ってきたり、概算見積書提出までの時間が早い者勝ちで買えるかどうかに影響してくるので、信頼できる不動産屋、建築士に出会えるかどうかが重要です。

リノベーションする中古住宅が見つかり、早い者勝ちの競争に買って売買契約ができたので、どのように設計をしていくか、設計時に考えたことについてまとめました。
新築とリノベーションでは同じ設計でも考え方が違うこと、今回の住まいのデザインコンセプト「実家感を活かす」について説明してあります。
もしかしたら建築を専門にしている方や、これから建築業界を目指す学生向けの内容かもしれません。

住まいはデザインだけではなく機能も大切です。
リノベーションに関わらず、住まいで気になるのは耐震性能と断熱性能だと思います。
そもそも耐震と断熱がなぜ必要かというところから書き、耐震診断をもとにできる限りの耐震補強を施したこと、光熱費シミュレーションにより住宅ローンを組むぐらいのスパンでお得な住まいがどんな性能のものかシミュレーションデータと実測値を比較しながらまとめました。
4000字越えのボリュームのせいかまだあまり読まれていません(笑)
でもこれを知って家づくりをするのか、知らずに家づくりをするのかでコストや快適度で大きな違いがあるので、是非知っていただきたい。

これまでのまとめだけで1200字を越えてしまった...www
ここからが今回のお話です。

2.床の間をリメイクして家具に

今回はリノベーションならではの家具デザインについてご紹介します。
実家感を活かしたデザインにするため、障子や欄間の彫刻、緑色の左官の壁、柱が見える真壁の構造を残して空間づくりをしました。
こんな感じです。

しかしそれらは元々あった場所にそのまま残しただけであって、少し芸が足りない。
そこで考えたのが床の間です。
床の間は仏壇の隣にある床が一段上がっている部分のことで、住まいの格式の高さを表現しています。
床の間には床に壺を飾ったり、壁に掛け軸を下げたり、お客さんをもてなす時に装飾できるように作られています。
そのため床の間の板は立派なものを使う傾向があります。

立派な床の間の板を捨てるのは簡単ですがもったいない気がしたので、今回はダイニングテーブルにリメイクしました。

テーブルの脚はL字のアイアンで作り、床の間の板の裏に構造用合板を貼って補強兼高さ調整をしてはめ込みました。

木自体は硬く、さらに表面にウレタン塗装のコーティングがかかっていたので、テーブルの上でボールペンを使ったりしても全然平気です。
照明器具の反射している部分あたりは、よく見ると傷がありますが、それもリノベーションならではの味!
最初から傷があることで、引越してすぐも気を遣うことなく使えて、ちょっと水なんてこぼしても何とも思いません。
これが新品の家具だったらきっと傷つけたり、汚すことを恐れてビクビク使っていたことでしょう。
また積極的に残した障子や欄間の彫刻、緑色の左官の壁、柱の木と昔から共存するものなので、色味の雰囲気もあっていてとても良い味を出してくれています。
ちなみにこのテーブルは、20,000円程で作ることができました。
構造用合板との接着はボンドで自分で貼って、板のカットは現場に入っている大工さんについでに切ってもらって、脚は鉄工所に18,000円程で作ってもらいました。
またもし再利用した天板が傷んでしまったら、アイアンの脚は再利用できるので、ちょっとエコな仕組みにもなっています。

そのまま残す、リメイクして残す、リノベーションならではのデザインを楽しんで、オリジナリティある住まいにできて大満足です。

建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい