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建築写真に人は必要か不要か

1.建築写真とは

建築写真についてWikipediaで調べてみると、”建築物を撮影した写真のこと”とある。当たり前か(笑)
垂直水平(あおり補正)の静的な写真で、余計なものを消して設計意図を説明できる写真が好まれるのはその通りだ。
フィルムの時からシフトレンズを使ってあおり補正をしていることが多かったが、今ではAdobeのPhotoshopやLightroomと言う優秀なソフトが自動であおり補正をしてくれたり、簡単な操作で補正ができる非常に便利な時代だ。
不要な電線なんかも簡単に消せちゃうので、開発技術に感謝したい。

建物外観については二点透視図法、内観においては一点透視図法的な、いいかえれば静的かつ説明的ものが好まれ、あおりの調整によって垂直方向のパースペクティブを修正されるケースが殆んどである。また、どうしても写り込んでしまう人物や電柱や電線などを消去する作業が行われることも多い。

注目したいのは人の有無に関する説明である。
設計意図表現のために人がいない状態で撮られることが多いと書いてあるが、それは正解なんだろうか...
おそらく半分正解、半分不正解である。

極度に人物が少ない状況、もしくは全く居ない状況で撮影が行われる事が多い。これは、設計した建築家の設計時における設計意図を明確に表現するためだが、一方でこのような建築写真の恣意性や、硬直化・マンネリ化した表現を批判する意見もある。

2.人の有無はコンセプトによる

コンセプトとは日本語で言うと「概念」であり、建築においてはその建築や空間のテーマを意味する。
人の有無はそのコンセプトというものが、何を表現しているかに大きく関係してくる。
あえてわかりやすく噛み砕いて言うと、
人の行動を促すデザインや使い方を表現したい場合は人は必要。
空間の美しいデザイン、かっこいいデザインを表現したい場合は人は不要。
どちらが良いとかではなく、設計者が何をその建築空間に表現したかであり、撮影する側はその意図を汲み取って表現することが求められる。
意図を汲み取って、表現できるかが建築写真家の良し悪しになる。

3.人の有無による見え方の違い

takiatelierが設計したコワーキングスペースを事例に、人がいる場合といない場合の写真を比べてみる。

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見比べるポイントは、床と机の高さの違い素材の多様性である。

床と机の高さの違いはコワーキングスペースという用途上、見知らぬ人が向かい合って座ることが想定される。
その際、お互い同じ視線の高さだと目があって、なんだか気まずくて、仕事にならない。
そこで設計の考えは、床に段差をつけて向かい合う机の高さを変えることで、視線の高さを変化させて、気まずいシチュエーションを避けるようにしている。
これは人の行動、感情に関する設計コンセプトなので、人が写っている写真の方が見た人に伝わりやすい。

素材の多様性は、この空間がRPGゲームをテーマにしており、各ゾーンごとにRPGにあるような荒野や草原、酒場などを表現する素材をが配置してある。
そのため全体に色んなゾーンがある、色んな仕上げがあることを写真で伝えなければならない。
全体を写すには、視線を遮る障害となる人がいてはストレートに伝わらないので、人が写っていない写真が望ましい。

このように、何をどう表現するかによって人の有無は変わってくる。
また建築写真は設計意図などの説明と一緒に紹介されることが多いため、ここがどのような空間でと言う説明を思い描きながら撮るとより伝わりやすさが増す。
撮影実績は、portfolioサイトをからご覧いただけます。


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