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明暗差を美しく見せる建築写真の撮影、現像方法

ある晴れた日の撮影。
直射日光が窓から射し、室内との明暗差が大きくなる時がある。
何度シャッターを切っても、目で見ている様子が全然撮れないことはないでしょうか。
外の明るさに合わせて撮ると、室内は真っ暗。
室内の明るさに合わせて撮ると、外は真っ白。

この現象は、写真業界では白飛び黒つぶれと言います。
今回は、室内外の明暗差が大きくても、白飛びも黒つぶれもしない撮影テクニックをご紹介

なぜ目で見た通りの写真が撮れないのか

人の目と脳は、カメラよりも優秀です。
目から得た光の情報を、脳に信号として送り、その情景が見える。
目からの入力と脳での出力の間にある情報処理が優秀で、ある程度の明暗差であれば自動的に補正してくれます。
一方で、カメラは情報処理をしてくれません。
明るい方に合わせて設定すると、明るい方だけにあった写真に仕上がります。
その逆、暗い方に合わせた場合も同じです。
だから、目で見ている様子がそのまま撮れないという現象が発生します。

シャドー、ハイライトには限界がある

ここからが、写真の専門的な話。
写真を現像ソフト(PhotoshopやLightroom)で現像すると、シャドーハイライトという項目があります。
シャドーは暗い部分だけ、ハイライトは明るい部分だけの明るさを調整する機能です。
この機能を使えば、ある程度の白飛びや黒つぶれが補正できます。
一般的には、白飛びした部分は色の情報が残っていないので、いくらハイライトをマイナス補正(暗く)しても白いままです。
黒つぶれであれば、シャドーをプラス補正(明るく)することで、ある程度の色が認識できるようになります。
しかし、シャドーのプラス補正には限界があり、どこかで不自然な写真、ノイズの多い写真になってしまう。
限界値は、カメラ本体のダイナミックレンジという性能に依存します。

露出ブレンドできれいな現像を

シャドー、ハイライトの調整には限界があり、限界値はカメラのダイナミックレンジという性能に依存する。
そこで、目に見える情景に近い写真に仕上げるために、露出ブレンドという方法があります。
露出ブレンドとは、同じ構図で明るさの異なる写真を合成するテクニックです。
実際に最近撮影し、露出ブレンドを用いて現像した写真で、その工程を解説します。

撮影現場でやること

まずは、三脚にカメラをしっかり固定
ここで構図がブレてしまうと上手くいきません。
オートフォーカスになっている場合は、フォーカスをあわせた後に、マニュアルフォーカスに切り替えて下さい。
この状態で、外の明るさと中の明るさ別に撮影します。
明るさの調整は、シャッタースピードで行ってください。
そうやって撮った写真がこちらの2枚です。

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(外の明るさに合わせた写真)

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(中の明るさに合わせた写真)

外の明るさに合わせた写真は黒つぶれ、中の明るさに合わせた写真は白飛びが発生。
この2枚の写真を素材にし、現像処理をしていきます。

Lightroomで現像処理

Lightroomに写真を読み込み、簡単な現像をします。

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(外の明るさに合わせた写真をLightroomで現像)

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(中の明るさに合わせた写真をLightroomで現像)

2枚の写真を選択し、Photoshopのレイヤーとして開くを選択。
ここからPhotoshopでの操作になります。

スクリーンショット 2020-03-09 20.59.13

Photoshopでの現像処理

レイヤーの順番で、外の明るさにあった写真を下にしてください。

スクリーンショット 2020-03-09 21.06.49

そして、中の明るさにあった写真を選択し、TK Basic V6 Panelというプラグインを使います。
このプラグインは、ルミノシティマスク(輝度マスク)を作るもので、明るさごとに選択ができる超便利ツール。

スクリーンショット 2020-03-09 21.09.48

風景写真を撮って、本気で現像に取り組み人は、知っているかもしれません。
このプラグインを使って、中の明るさで撮った写真のシャドー部分を選択。
白くなった部分が選択されており、黒くなった部分は非選択という意味です。

スクリーンショット 2020-03-09 21.11.23

緑色になっているApplyボタンを押せば、一発でマスクが作成されます。

スクリーンショット 2020-03-09 21.13.06

これで、外の明るさに合わせて撮った写真の上に、中で撮った写真のシャドー部分が合成され、黒つぶれしていたところが明るくなる。

スクリーンショット 2020-03-09 21.15.08

(外の明るさに合わせた写真)

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(中の明るさに合わせた写真のシャドー部分のみ露出ブレンド)

あとは、不透明度のバーを触ることで、反映度が変わるので、どれぐらい黒つぶれ部分を明るくするか調整できます。

スクリーンショット 2020-03-09 21.23.44

描画モードによって、どのように反映させるのか変わってくるので、お好みのものを選択してみてください。
これで露出ブレンドは完成です。

再びLightroomで現像処理

このまま明るさやコントラストをPhotoshopで現像を続けてもいいのですが、我が家のパソコンでは操作が遅いので、Lightroomに戻して現像を続け、完成した写真がこちら。

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露出ブレンドでは、シャドー、ハイライトの調整では難しい、滑らかで視覚体験に近い写真に仕上がります。
もちろん、合成なので2枚で行う必要はありません。
様々な明るさが混在する複雑な環境であれば、3枚、4枚と重ねて、より階調を滑らかにすることができるでしょう。
ただし、この方法は手間と時間がかかる可能性があります。
安請負になる可能性が高いので、この方法前提のお仕事であれば、金額に反映しておきましょう。

一級建築士だからわかること

さて、写真が得意ですが、それよりも詳しいのが家づくりです。
なぜなら、私の本業は一級建築士。
上記の内容は、撮影テクニックであり、建築写真を撮る上で本当に大切なことは、設計意図の理解です。
小さな家づくりでも、建築士は様々なことを考えています。
私も自邸をリノベーションする際、一生懸命に考え抜きました。
デザインのこと、性能のこと、暮らしやすさのこと。
それをブログにまとめているので、お時間あればぜひご覧ください。

また、私の撮影実績は、ポートフォリオサイトからご覧いただけます。


建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい