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お互いに認め合える社会に

現代は自由に物が手に入るようになり、私の周りでは物欲より「自分の存在を認めて欲しい」という承認欲求を満たしたい人が増えています。近年の現代人は人間関係の悩みや苦しみから解放されようと、人との距離をおいてきた結果、社会から認められる機会までも減らしてきてしまったように思えます。今、ネット社会では「いいね」をもらって自分の価値を確認しようとする人々が膨れあがっている中で、あらたな社会全体のコミュニケーションの構築や承認欲求を満たす方法が問われているのではないでしょうか。

無駄と思えることはムダでない?

一昔前は、やたら賞状や感謝状といった目に見える記念品がもらえた時代がありました。しかし、そんなもの貰っても嬉しくないだろうとか、相手が欲しいものを贈るべきなどという風潮(相手の空気を読むこと)により、徐々に廃れていきました。確かに貰いすぎると嬉しさや価値は半減するかもしれませんが、全く何もないと感謝の形が見えにくくなり、それとともに人との関わり合いも少なくなって、どんどん人の心も錆びついていったように思います。

  一方、うつ病を改善するために、紙に字を書く、紙の本を読むといったことが効果があるという報告があったり、自然の中での非効率な活動が自律神経を改善させることも皮肉なものです。一見、無駄に思えることは実は無駄ではなかったのかもしれないと思うことの一つです。

いま、承認欲求を満たしてくれるもの

話を承認欲求に戻しますと、一番分かりやすいのがSNSの「フォロワー」や「いいね」でしょうか。自分の投稿した文章や写真に対して誰かが瞬時に評価をくれます。まさに、認められたい気持ちを十分に満たしてくれるシステムです。しかし、毎回いいねやフォロワーが増えるわけではないので、更に過激なことをして注目を集めたいと思うのは特別な感情ではありません。

また、最近「有償ボランティアスタッフ」というものが現れたことが印象的です。これは、お金を払ってボランティアに参加させてもらうシステムです。もともとボランティアは無償の助け合いの活動ですが、こちらにも、承認欲求をくすぐられる仕組みが隠されているようです。
あるYouTubeで活躍する人物が主催するイベントでボランティアスタッフを募集していましたが、ボランティアという言葉とは真逆の「お金を払って働かせてもらうもの」でした。しかし、そのYouTuberは、ビジネスで役立つ情報とか人間関係が楽になる方法などを教えると共に、以下のようなポジティブな言葉で一部の人々の弱さを認めてくれます。
「キミならできるよ!絶対大丈夫!」
「楽しめば良いんだよ!」
「チャレンジ最高!」

仕事で上手くいかずトラブル続きで自信をなくしている人、人生に虚無感を感じて生きがいを探している人、失敗しないようになるべく目立たないように生きている人。そういう人たちにとって、君たちイイね!と認めてくれることが、人々の承認欲求を満たしてくれ、喜んでお金を払って働く価値があると思ってしまうのです。

  実は私自身も一時期ハマりそうになったことがありましたが、時々見せる傲慢な表現に疑問を持ち、冷静に誰が一番得をしているか既得権益を考えるタイミングを持てたことで、我にかえることが出来ました。しかしながら、やはり、自分を認めてくれるを言葉の力は特別に感じるし、なによりやる気をもらえるので「お金を払う価値がある!」という沼から抜け出せなくなります。

社会でお互いを認め合うシステムを

人がいったん承認欲求を満たすことが生きる目的になってしまうと、その人たちをコントロールするのは比較的容易になるため、注意が必要です。そんな偏った社会にならないためにも、皆でお互いに承認欲求を満たしてあげられるような仕組みを国や地域で考えていくことが大切だと思います。

  私は、一昔前の非効率な世の中に戻したいのではなく、今の便利な世の中でも、いかに人との関わり合いを作っていくか、人から人へ文化や技術を継承して豊かさを持続させるかを考えていきたいのです。たとえ世の中のしくみが変わっていっても、(恥ずかしながら)人が人を思いやる気持ちは、ずっと続いていくと考えたいのです。

今はまだその具体的なアイディアは浮かびませんが、デジタル化した高度な社会の中でも、人々が地域や社会に認められて元気になり、一人ひとりが自信を持って自分らしさを表現でき、お互いに認め合うことで、笑って暮らせることが人生を豊かにするのではないかと思っています。


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