段ボールを使って制作されたVRアニメーション"Passenger"

概要

本日は、先日noteで取り上げたWe Are One: A Global Film Festivalの上映作品の中から、段ボールを使って制作されたVRアニメーション"passenger"をご紹介します。

Passengerはオーストラリアの制作チームによる、約10分間のVRアニメーションです。2019年のメルボルン国際映画祭でプレミア上映され、また同年のベネチア国際映画祭の公式上映作品にも選ばれています。

Passengerの脚本開発は、タクシーの運転手さんへの取材を通して行われたそうです。タクシーの運転手さんたちが、オーストラリアに初めてやってきた移民の人たちにどのようなアドバイスをしてきたかや、彼ら自身がオーストラリアに移住してきた時の経験談を元に、ストーリーが練り上げられています。

また作品制作にあたっては、長さ60Mにもおよぶ巨大な段ボールのセットを組み上げ、そのセットの中で360°カメラをフレーム毎に動かしながら、ストップモーションの手法を用いて撮影を行ったそうです。

段ボールでセットを組むというシンプルで原始的な手法と、最新のVR技術を組み合わせて制作しているところが、とてもユニークな作風につながっています。

あらすじ

"Passenger"は、新たな国へと移り住む人の物語です。(設定ではオーストラリアのメルボルン)

この国に移り住んできたあなたは、タクシーの後部座席に座り、鳥の姿をしたタクシーの運転手さんに家まで送り届けてもらいます。

家までの道中、あなたはだんだんとまるで夢のように幻想的な街の風景へと引き込まれていき、新しい世界へと導かれていることに衝撃を受けます。

実はそのタクシーの運転手さん自身も、オーストラリアへの移民です。あなたはその土地のことを彼に案内してもらいながら、彼自身の人生のストーリーを垣間見ることができます。

このストップモーションのVR映画は、見知らぬ場所に訪れるときの動揺する気持ち、すなわち異国の地で新しい家(=ホーム)を見つけて、はじめの一歩を踏み出す瞬間を掘り下げ、新たに紡ぎ直した作品です。

感想

この作品を見て最初に衝撃を受けたのは、やはりセットの大半が段ボールで作られていることです。自分が乗っているタクシーはもちろん、周囲の建物や道路、森林などの一つ一つが丁寧に段ボールで作られています。

また段ボールを使っていても安っぽさは感じさせず、逆に温かみのあるほっとする世界観を作り出しています。段ボールのセットだけでなく、タクシーの運転手さんの語り口や、風景、ストーリーの全てが穏やかで、居心地の良い空間となっています。

またタクシーの運転手さんへの取材を元にした物語でありながらも、運転手さんが鳥の姿で描かれていることをはじめ、美しくて幻想的なストーリーもこの作品の魅力です。家までの道中に通過する街並みやトンネル、森林など、どれをとっても現実とはかけ離れているのに、どこか懐かしさを感じるような描き方をしています。

一点だけ注意事項としては、基本的にタクシーで移動しながらストーリーが展開していく作品のため、VR酔いをしやすい方は、動きの激しい部分では目をつぶるなどの対策をした方が良いかもしれません。(私は大丈夫でしたが、この作品を見て酔ったという人もいました)

以上、VRアニメーション"Passenger"のご紹介をさせて頂きました!長さ60Mものセットを、段ボールで組み上げながら作った労力を考えると、制作した方々に頭が上がりません。

We Are One: A Global Film Festivalでは 2020/5/29-6/7の期間、"Passenger"を含め色々な作品をYouTubeで無料で見られるため、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください!

*Twitterもやっていますので、宜しければぜひフォローをお願いします!

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