複雑な制度を理解するための考え方#労務の仕事

労務に関する仕事をするにあたって、対応に明け暮れるのは最近では定額減税ですね。

この手の突然あらわれた期間限定の制度について、給与計算する人が全部を把握する必要はなく、完璧に説明できるほど理解する必要はないのです。行政担当者でなければ税理士でもないのだから。

まずは落ち着いて、行政の文書を丁寧に読み解く必要があります。難解な用語や複雑な仕組み、無数にある例外的ケースが文字ばかりで難しく書かれているが、面食らってはいけません。

この記事は定額減税について書くのではなく、労務関係の難解な制度について企業担当者としてどのように労力をかけずに立ち向かうか、私が考えていることについて書いてみようと思います。

自分の「仕事」に関係のあることと、ないことを区別

まずは給与計算など自分の仕事に関わる部分と、関係ないことを区別しましょう。説明の冊子は決して分かりやすく書かれてはいません。一方で、役所の文書なので意味が曖昧に取れるような書き方はされていないので、集中してじっくり読めば理解はできるようにはなっているはずです。

まずはざっと読んで全体像を把握しましょう。
次に自分の仕事に関係のない箇所を確認。例えば個人が直接、役所に対して行う手続きは会社には関係ありませんね。関係ないのだから理解する必要はなく、従業員に対して説明する義務もないのです。
親切心で説明はしますけど、業務として従業員に話した内容には責任が生じるので言い方には注意しましょう。

特に私は「給付金がもらえますよ」みたいなことは決して断定的に言わないようにしています。
給付金の支給の決定をするのも実際に支給するのも役所であって、会社の担当者は手続きとして請求するだけですね。自分が制度を勘違いしていることもあるし、例外的な要件があったりするので注意ましょう。もし、もらえない場合にあとでトラブルになる可能性があります。

自分の「会社」に関係のないことは知らなくて良い

会社が行う手続きにしても、自分の会社に関係ないことについては細かく理解する必要はありません。
大企業であれば中小企業のことは知っている必要はないし、テレワークをしている人が一人もいなければテレワーク特有の例外事項は関係ないのです。従業員もその家族も全員日本に住んでいるとわかりきっているのなら、海外居住者についてのことは知らなくて良いでしょう。

複雑な制度の分厚い冊子を隅から隅まで全部読む必要はないのです。

※ただ、関係のある項目については細かく読んだ方がいいです。小さい文字で書かれた注釈が実はかなり重要だったりします。太字や大きい文字ばかり目に入りますが、隅々まで読みましょう。

わかりやすく翻訳しよう

どんな処理が必要なのか、従業員に何を説明しなければならないかわかったところで、難解な制度をわかりやすく翻訳する必要があります。

例えば、源泉所得税の「居住者」「非居住者」については国税庁のサイトに以下のような説明があります。

国内法による取扱い
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。

国税庁

私の会社では海外赴任とかはないので、居住者は「日本にずっと住んでいる人」、非居住者は「外国に住んでいる人」の説明で十分です。

池上彰さんになったつもりで、わかりやすい言葉に言い換えてみましょう。自分がどのような手続きをしなければならないのか。従業員に対し何かを提出させる必要があれば、いつまでに何を確認して何をしてほしいのか、やらないとどうなるのか、文章化します。
想定される疑問点も質問される前に最初から書いておきましょう。

わからなければ、役所に問い合わせ

わからない場合は行政以外のネットの情報を見ることもあるのですが、情報が間違っていたり、古かったりすることもありので注意。税理士や社会保険労務士、弁護士などの国家資格を持った専門家が書いていることや、最新の情報であることを確認してから内容を読むようにしましょう。

それでもわからなければ役所に直接問い合わせて確認をすれば良いのですが、全然わからない状態ではうまくコミュニケーションが取れないので、最低限、概要とそこで使用されている用語の定義には目を通しておきましょう。

ちなみに、税務署や区役所が開催する説明会は、説明の冊子を読みあげるだけなのでほとんどわかりません。言葉の定義を噛み砕いて、分かりやすい例えをあげて平易な言葉で教えてほしいのに、役所では言葉の定義ありきで説明されるからです。

あと、あなたの周りにいる「なんか詳しそうな人」に何もわからない状態で「教えてちょうだい」というのもやめましょう。税理士や社会保険労務士ならともかく、新しく始まった制度を一般の人が説明できるほど理解はしていません。まずは自分で頑張りましょう。

やっと理解して、社内通達

どのようなことか一通りわかったところで社内通達の文書を作成しますが、これをまとめるのも大変です。
社内通達は、制度を理解させることが目的ではないので、
・これは何で
・何をしてほしいのか
をわかりやすく簡単にまとめます。
そして細かい内容については国税庁のページのURLを貼り付ければ良いかと。

最初の話に戻ると、定額減税についてなんですが一応私は中身を理解したものの社内通達文書がうまく書けませんでした。文例があれば良いと思って検索したのですが、なかなか見つからない。

本当に必要なことは、ネットには書かれてないんだ、と思いました。







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