救急医療の経営学
大阪府の救命救急センターが、現場の立て直しのためのクラウドファンディングしているのが話題。
医師の平均年収は1500万円ぐらいなので、諸手当や社会保険料を考えると、医師を1人、1年間雇っただけでCFで集めたお金は溶けてしまうことになる。
当該病院の意図としては、まず医師を確保して患者数を捌けるようにすることで売上を確保し、悪循環を打開する切り口にする意図なんだろうが、上述のことを考えると2000万円程度では救命センターを抜本的に改善するのは難しいんじゃないかと思う。
救急部門は不採算医療か
救急部門は、365日動かすのに人件費がかかるため、高コスト体質が避けられない。救急部門は、単独で捉えると不採算になりやすい。これは事実だと思う。
一方で、民間の急性期病院では不採算と知っていながらも救急に力を入れているところは多い。それは、救急部門を自院の病床稼働率向上のための窓口としているから。
救急部門が患者を集めてくることで、その後の急性期治療のニーズを確保することができる。ケアプロセス全体で収益を上げると考えれば、救急部門は価値が高い。逆に言えば、後方病床なしで救急センターだけ動かすのはプロダクトミックスとしてはうまくいかない。
経営改善策を考える
公表されている事業報告書と病床機能報告をざっと見たところ、当該病院は集中治療室2室と一般病棟1病棟の3看護単位しかない。極端に救急医療に特化した医療機関になっている。
稼働率をみると、2つの集中治療室は9割前後で良好な一方、一般病棟は7割切っている状況。金がかかる部門を内部補填する収益部門がない、というのが一番の課題だろう。病院としてのビジネスモデルが構築できていない。
ぱっと思いつく経営改善策としては、①他の急性期病院やリハビリ病院と組んで、患者を積極的に送るかわりに寄付等を募り、スポンサーに入ってもらう(療養担当規則の整理は必要)、②自院に回復期リハビリ病棟等のポストアキュート病床をつくって、自院内で救急部門を内部補助できる収益部門を生み出すか、というところ。いずれにせよ、後方病床との関係で救急センターの強みを収益性につなげる必要がある。
余談だが、このCFで当該病院への関心は全国的に高まったので、この注目度の方が、集まった資金よりも価値が高い財産かもしれない。関心がよい評判になり、良い人材の確保につながることに期待したい。
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