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医師の海外留学助成金の情報

学内のprojectで調べる機会がありましたので、医師が海外留学をするに当たって申請可能な留学助成金情報を公開しておきます。

筆者が臨床医なので (放射線科、スイス University of Zurichへの1年4ヶ月の留学経験あり。後輩の留学助成金の申請指導 → 取得経験あり)、その視点からの情報提供となります。

留学助成金情報一覧

領域を問わず、医科系の留学において申請出来そうな国内の留学助成制度について一覧にしました。
これとは別に海外機関の留学助成もあるのですが、フォローアップが面倒だったので、省いています。

海外学振が王様と思いますが、正直、高嶺の花かな、という印象があります(臨床医の片手間研究では厳しいと感じています)
次点では何と言っても上原が人数も多くスタンダードかな、と思います。
海外留学中でも申請出来るのはフレキシビリティが高いですね。
また、給与が出ていても、重複で受給出来るのが大きいです。

上原の助成金受賞者の業績を何となく調べてみたのですが、助成金申請時点で原著論文1本(IFも決して高く無い)という先生もチラホラいらっしゃいます(指導して助成金を取得した後輩の自験例あり)。
シンプルに研究計画書の善し悪しが結構左右するのだと思います。

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留学助成金取得における問題点とは

忙しい臨床医の先生に留学助成金情報の話をすると以下の3点を言われる事が多いです

◆ 留学助成金の小難しい研究計画書を書くよりバイトして稼いだ方が楽(major科医師)
業績が無いので留学助成金なんて通らないと思う
◆ 申請の締め切りが既に過ぎている事に気付いた・・・

個人的には留学助成金情報については大学や指導医などが情報提供すべきかな、と思っています。

◆ そんな物がある事を知らない若手が多い
◆ そうと知っていれば、case reportでもletterでも少しでも業績リストを稼いでおこう、という発想になる(研究計画申請書の査読で、各々の論文の中身までは調べないと推測されるので、論文数は大事)
 ◆ 研究計画書は指導医がチェックをした方が良い (殆どの人が初めて研究計画書を書くので指導医が見てくれればライバルに差が付く?)

留学助成金を取得する事のメリット

筆者が個人的に考えるメリットは下記です。

非課税所得が得られる
厳密には嘘です。公的には国内居住者であれば雑所得です。

外国の研究機関等に派遣される日本人研究員に対して支給される奨学金|国税庁

が、もし雑所得として受け取っても、全額、必要経費として算定出来るのでは?と素人考えでは思っています・・・(自己責任でお願いします)

”バイトして稼ぐ”と言っている医師の殆どは、程ほどに高給取りと推測され、余剰にバイトで稼いだ分の半額弱が税金として持って行かれるゾーン(累進課税的な意味で)にあるので、額面の2倍稼ぐ事が必要です。
これは結構大変では?と思います。

◆ 業績になる
留学に当たって助成金を得ていると国内・国外向けへの業績の1つとしてCVにも記載出来ます。
助成金がある事で手持ち資金が担保される事で、国によってはビザなども少しは通りやすくなるかもしれません。(と言っても、留学助成金が無いからと言って、医師でビザが取れなくて跳ね返された、というパターンは見聞きした事がありませんが)

◆ 自分の研究成果を振り返る・言語化するチャンスとなる
自分の取り組んでいる内容を言語化して専門外の先生に説明する、というのは一般的な研究者に取って非常に重要なskillとなります。

留学に行くタイミングである学位取得前後に自分が今まで取り組んでいた仕事・留学によって学べるであろう事、を言語化する事はこのskillを磨く上で重要なステップと思います。

また、この様な言語化の過程で、今まで自分ではそこまで大した事無いと思っていた研究成果や研究の方向性が意外と重要である事に気付く事があります。

◆ (助成金を取得出来れば)自己肯定感の獲得に繋がる
学位研究で1本論文を通した位だと、廻りの評価が付いてきません (論文が出たからといって、それをみんなが読んで、みんなが褒めてくれる訳ではありません)。
留学助成金で評価されると別の角度から自分の研究が評価された様に感じて、より頑張ろうという気持ちになれるかもしれません。

参考資料

留学について少しでも調べた事がある人は御存知と思いますがUJAという団体が日本人研究者への情報提供を多く行っています。

UJA (海外日本人研究者ネットワーク) Web Site
https://www.uja-info.org/


留学助成金を取得する上での研究計画については指導医に科研費の申請書類などを見せて貰うのが一番良いと思います。
しかし、研究にactiveで無い施設だと、中々科研費をバリバリ通している研究者へのアクセスが無かったりする事もありますよね。
その場合は、科研費作成関連の書籍が比較的多く出ていますので、これで独学で勉強しても良いかもしれません (筆者は完全に独学でした)。

これらの書籍は科研費のローカルルールなどについても分量が多いですが、研究計画書を記載する上でのフォーマットなどは科研費も科研費以外の留学助成金のフォーマットも似通っている場合が多いです。

フォーマットフリーの申請書でも科研費の書類に近づけて書く事で、申請者自身の頭の中が整理されると思います。


◆ 毎年、出版されていて、毎年筆者も購入している科研費申請におけるバイブル的な書籍になります。


◆ 自分の専門分野と被っていないと実感を持って読み込めないかもしれませんが、具体例がふんだんに記載されているので参考になります。


◆ 海外学振などを申請出来る見込みがある優秀な先生はこちらも有用かもしれません。


◆ 上述のUJAが纏めた書籍です。研究助成金情報についても記載があります。一部抜粋が実験医学HPに公開されています。


まとめ

新専門医制度が始まり、医師が今後留学に行こうとすると年齢的に30台前半以降が現実的な所です。
そのため、今後は医師は家族帯同で留学に行かれる先生が非常に多くなると思います。

この様な環境で、留学先で折角だからささやかながら観光にも行って、となると生活費はかなりの高額になります。
お金の心配をしながら留学をしたり、そのために早期に帰国する・一時帰国してバイトをする、というのは非常に勿体ないと個人的には感じています。

留学助成金を取得する事で、そういった事が少しでも解決が付けばと思っています。


本entryの情報がこれから留学に行かれる方にとって、何かしらの助けになれば幸いです。

何か関連情報・御意見などありましたらお気軽にお問い合わせください。


日本医科大学 武蔵小杉病院 放射線科 関根鉄朗 拝


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