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【連載小説】優しい人類が作っていく優しい世界④

もしかして、僕がやりたいことを思い浮かべれば何か出来るのかな。でもやりたいことなんて考えたことがないし、高卒の僕には何もできないだろう。しかも働いたこともないのだから、こういうのを社会不適合っていうのだろう。子供のころはヒーローになりたい、この世界に危機が訪れたら救世主になりたいなんて思っていたのだけれど、そんな漫画の世界のような事できるわけがないと小学生のころには気が付いた。中学生になると、お父さんのように満員電車で通勤して家族のために我慢して働くだけの人生になるくらいなら死んでしまいたいと思うようになった。
それも僕が社会に出て働けるわけがないという不安から作られたいいわけなのかもしれない。やりたいことをするなんて所詮無理なんだ。いっそのことお金のためにだけ働いて没頭できる趣味を見つけよう。なんて迷っているうちにも時間が過ぎていく。
テレビを見ていたら、ボーカロイドの作曲家の特集をしていた。音楽が得意でも楽譜が読めるでもないのに感覚だけで作曲しているらしい。芸術の世界ってすごいんだな。しかも本名や顔を出さないのに曲が売れている人もいる。音楽ってすごいよな、楽しくなったり悲しくなったり、外国語で言葉が分からなくても感動する。
そうか、音楽や芸術なら僕にもできるかもしれない。人のためになれるかもしれない。やっとやりたいことがみつかったような気がした。今はネット社会だ、引きこもりの僕でもリモートでならできそうだ。
働きたくはないが、人のためにはなりたいということを思い出した。

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