【短編】「1-1=」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 087
算数の授業中、ぼくは定規でノートに線をひいたら、鼻水が止まらなくなった。
熱もあるみたいだ。
ひきざんの授業だった。
3桁の整数を筆算をつかって解く方法を先生が板書していた。
ぼくはあたまはいい方ではないけれど丁寧に数をひとつずつひいていった。
するとそのたびにどこかでドレミファソラシドが鳴る。
ピアノの音だった。6から3をひくとドが。
8から2をひくとラが鳴った。
計算を間違えると耳をつんざく不協和音が鳴った。
授業にまったく集中できなかった。
逆に音楽の時間のことだった。先生がピアノをひくとショパンに合わせて僕のノートの中で数字が勝手に減っていった。そのおかげで計算が狂ってしまった。せっかく解いた問題だったのに。宿題の提出までにまたやり直さないと。
熱はひかないまま、朦朧としたぼくは帰宅し、ベッドによこになった。
少し休もう。
まだショパンが頭の中で鳴っている。
「ひく」という言葉が秩序を失っていた。
今日は、はずれくじを、ひいたらしい。
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