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障害とテクノロジー
学習障害と言われるものなのかどうか知らないけれど、ぼくは手で漢字をほぼ書けない。
横にお手本があればそれを映しながら書けるけれど、どうにも「漢字」というものを記憶して、手書きの時にアウトプットすることが苦手だ。
小学校の時に初めて漢字を学び始め、「一」~「十」まではなんとか行けたけれど、次の「学校」という漢字でめげたのを今も覚えている。
いや、めげたというより「ひらがな」も覚えないといけない。
「カタカナ」も覚えないといけない。
その上、この複雑な漢字を?
って立ち止まってから、一歩も前に進めなくなった。それだけの労力を割くための「コスト」を払う意味がまったく理解できず、そしてまた理解できないことに対して指一本たりとも動かす気力が湧いてこない。
ぼくの中にあるやっかいなこの特性のことをなんと名付ければいいんだろうか。
おそらく、この特性のおかげであっけらかんとしたぼくはうつ病を発症したし、「やっかいだなぁ」とは思うけれど限りなく本能に近いこの特性を変えられないまま生きてきた。
ところで、ワープロというテクノロジーが生まれて、ぼくの人生は大きな変革を迎えた。
初めて書いた長い文章は卒論だった。
ほとんど平仮名で書き上げたその卒論を1字1字辞書を片手に漢字に置き換え清書するっていう気の遠くなる作業中にワープロを手に入れた。
それからはのめりこむ様に2回目の清書が始まって、全部をワープロで書き上げる頃にはブラインドタッチを習得していた。
そう、ワープロというテクノロジーを使って、ぼくは漢字を書くという技を得ることができたんだ。
このテクノロジーが生まれなければ、ぼくは「うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話」っていう本を書こうなんて夢にも思わなかっただろうし、そもそもうつ病の闘病も、より深刻なものになったに違いない。
自分の内面を文章として書きだし、ブログに綴る。
ワープロソフトがなければ、その「外在化」という治療をぼくはすることができなかったのだから。
「できない」ことが「できる」ことになり、それが「得意」と言っていいようなものになる。
その瞬間をぼくは自分の人生の中で体験することができた。
話は変わるけれど、以前。。。サラリーマン時代にぼくの部下になった子で耳の聞こえない子がいた。
彼とぼくのコミュニケーションは「メール」やSMS(ショートメッセージサービス)で手話ではなかった。
正確には「手話」と「日本語話者」に大きな違い。。。言語を2つ覚えるかのような違いがあることを後年知って、ちょっと申し訳ない気分にはなったけれど、彼は他の耳の聞こえない方との間でもSMSを多用していた。
書いた文章が一度遠くの交換機を通って目の前の誰かのもとに届く。
それはとても不思議な光景だったのかもしれないけれど、「耳の聞こえない」という障害をもつ方にとって、簡単に多くの方とのコミュニケーションを可能にするテクノロジーの変革であったとぼくは思う。
車いすは、それがなければ移動できない誰かに移動の自由を与えてくれ。
義手や義足は、それがない方に「ある」を実感させてくれる。
点字は目で字が読めない方に読書の楽しみを与え。
そもそも眼鏡はぼくのような近眼で乱視のような人にも生活の自由を与えてくれる。
歴史を重ね、テクノロジーが発展することによって、特定の特徴が社会参加の「障害」となっていた方々に社会参加のチャンスが訪れ、その中には歴史に名を遺すような活躍をする方もいらっしゃったし、そうでなくても「今まで社会参加できなかった方」が参加できる社会はそれ以前に比べて多様性が拡大し、生産性の絶対数も上昇してきたと言えると思う。
この先。
これから未来。
さまざまな技術が特定の特徴を社会参加の「障害」とする社会を変革していくことだろうと思う。
頭脳に直接映像をみせることができたり、頭脳によって様々なコントロールをできるような社会になれば身体「障害」という言葉が死語になるのかもしれない。
自閉症と言われる方の内面世界とコミュニケートする方法がみつかったら、そこに眠っている膨大な知的財産に人類は出会うことができるようになるのかもしれない。
自分自身が様々な恩恵を受けてきた身として、そうした社会を創造するのはとても楽しい。
同時に、社会システム。
そして、社会の寛容性。
そういった人為的なものによって作られる「障害」こそを1つ1つ撤廃していけたらイイナとも思いながら。
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