浦和の新シーズン記者会見の感想

浦和レッズは1月17日にリカルド・ロドリゲス監督、18日に新加入選手の会見があって、もちろん個々の人物に対しての興味はあるのだけど、それはシーズンが進む中でおいおい分かっていったり伝えることができたりすれば良いことも多々あると思っていて、むしろ強化部門から出席する人にはこういう時にくらいしか公式に質問する機会がないことから、今までもそちらに質問させてもらう機会が多かった。

過去には山道守彦さんに「え?オレ?」なんて感じで驚かれたこともあったけど、オフシーズンの選手編成は退団する選手と入ってくる選手のトータルであって、過去、現在、未来のラインの中での位置づけも無視できないから、そういう意図をクラブが言葉にする機会を提供する意味もあるのかなと思っている。だから、山道さんから会見が終わった後に「ありがとうね」なんて言ってもらったこともあったけど、そういう意味では2019年末に一新された今の強化部門は、割と言語化が上手になったなという印象がある。

リカルド・ロドリゲス監督の会見で言うと、少し心配しているのは「楽しむ」という言葉が悪く捉えられる歴史を繰り返さなければ良いなということ。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の時にも多くの「楽しむ」という言葉が発されたけど、それはヘラヘラ笑って軽いプレーをする意味ではなくて、「充実感を持ってサッカーをする喜びを感じながらやっていこうよ」という意味合いが強かったんだけど、コメントの文字列としては「楽しむ」になるので、そこで変な溝が生まれていることに伝える側としては残念な思いがあった。

ただ、今回は「目標は良い試合をすること、それを(サポーターに)楽しんでもらうこと。楽しんでもらうためには多くのゴールと勝つことが必要。具体的な数字より、そう考えている。戦うチームを作り、パフォーマンスを高めてどの試合でも勝つように戦うこと」という感じのコメントだったし、「走る、戦うが初めになければいいサッカーはできない」という言葉もあったので、こっちを強調する方が良いのかなとは感じた。まあ、ミシャさんも「走って戦う」ってことは恐ろしく強調していたのだけど、表面に出る言葉が「楽しい」とか「楽しむ」ばかりになってしまったのが難しかったのかなと思うので、少なくとも僕はこの歴史を繰り返したくないと思っている。

それで新加入会見は例年、会見の席は時間の限りもあるしセンテンスが短くなりがちで、むしろ終わった後の囲み取材の方が深さのある話が出てくるものだったのだけど、今は新型コロナウイルスの状況もあるのでオンラインで会見形式のみということになった。だから、それこそシーズン中においおい選手のキャラだとか、ちょっとしたところが出てくれば良いのかなと思うけど、そのためには試合で少し活躍してもらわないとその機会もなさそうなのが難しいなとは思っていて、この辺は世間一般で言う「今までの関係性があるからリモートでやれるけど、新しくリモートだけで入ってくるのは割と大変」みたいな感覚と似ていると思う。

ユースからの昇格や高卒で入ってくる選手もいるけど、西野TDに投げかけて返ってきた「トップチームのレベルが上がっていけば、そういった意味ではアカデミーの選手が試合に出るハードルが高いのは理解しています」という言葉そのままなので、まずは特別なことをせずに彼らを取材する機会があれば良いなという部分からかもしれない。

ただ総じて、やっていること、あるいはやろうとしていることを言語化しながら進もうとしているのは好印象で、理屈で整理してあるのは大事。例えば「ピンチはチャンス」と言って、そのピンチを必死に乗り越えたとしても、なんでピンチになったかを整理して理解できていなければ、また同じピンチを迎えるものだし、冷静に考えれば10回に1回か2回くらいしか成功しないようなやり方がたまたま上手くいったとして、成功体験が悪さをしてその理由も考えずに同じことをやろうとすれば、10回に8回か9回の失敗を順当に重ねる。それが整理されていないと、「上手くいったあの時のやり方に戻したらいい」と負の無限ループを過ごすことになるので、そういう意味では、上手くいってもいかなくても理由と理屈が言語化されて残っていくのは大切なことだと思うので、これは続いていった方が良いと思っている。

そんなところで、2年連続リーグ戦が二桁順位で終わったチームがピッチ上でそんな簡単に何でも上手くいくとは思わないのだけど、まずは前向きに見守りたいなと感じた記者会見でした。


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