強化責任者の交代に主力級の退団、監督人事をどう考えるか エルゴラ浦和担当、沖永雄一郎さんと2024前半戦を振り返る

<全3回中の3回>
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浦和レッズの2024シーズン前半戦というには少し試合数が経過していますが、サマーブレークに入りました。そこで、恒例となったサッカー専門新聞エル・ゴラッソの浦和担当、沖永雄一郎さんとの振り返り企画をしていきたいと思います。

中編までは基本的にピッチ上のチームにフォーカスしてきましたが、今回はピッチ外のところ。選手編成や監督人事、あるいはシーズン途中で強化責任者が交代したことに触れながら振り返っていきます。

そして、クラブから出された声明にもあった「来年のクラブ・ワールドカップ(W杯)から逆算してのチーム作り」という要素。それを念頭に置くならば、この夏に判断しても良いことがあるのではないかという点で意見は一致しました。そして、シーズン後半戦への期待を込めて話していきます。

※文中で敬称を省略します。

沖永雄一郎(エル・ゴラッソ浦和担当)
山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』の浦和担当に。
https://twitter.com/RMJ_muga

轡田哲朗(フリーランス)
埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。https://twitter.com/tetsu11k

大型補強と呼ばれたオフと「キャラクター」も見たい獲得策

轡田 今季に向けた補強は、各メディアで「大型補強」という表現をされました。前田直輝、松尾佑介、チアゴ・サンタナ、渡邊凌磨、石原広教、佐藤瑶大、井上黎生人、武田英寿、宇賀神友弥、あとは早川隼平も正式トップ昇格ということで新加入会見に出ました。まあ、こう並べても井上までの7人は昨季の実績からもJ1のレギュラー級と言えて、武田はJ2でアシストを量産する結果を出して期限付き移籍から復帰しました。そして、サミュエル・グスタフソンとオラ・ソルバッケンというスウェーデンとノルウェーの代表選手が加わったわけです。早川を除くとしても11人が加わって、ここにGKを足せば1チーム組めますし、なんなら1人余ります。

今季に向け土田尚史スポーツ・ダイレクター(SD)が退任して、西野努テクニカル・ダイレクター(TD)が肩書を据え置いて強化責任者になりました。西野さんは今季の補強を「攻撃力の増強というところを、チーム編成の方でもテーマとした」と話していて、ヘグモさんの招聘は「昨年たくさんあった『もう一歩』を埋めるため」と表現しました。また、実績ある選手が多い獲得には「若く可能性、ポテンシャルのある選手への挑戦や投資はクラブとして継続しないといけない。それはこれからも変わらない。ただ、あくまで可能性なので良い方に触れる時もそうでない時もある。ただ、今年に関して言えば少し結果を出すためのところに重きを置いたというのは事実あると思う」と話していました。まずは、このオフシーズン全体の編成についての印象を教えてください。

沖永 ようやく大盤振る舞いができるタイミングがきたのかなと思いました。僕が赴任した2020年は、新加入は新卒の武田とレンタルバックの伊藤涼太郎を除くとトーマス・デン、レオナルドの2人だけで、契約の関係もあってあまり動かせないという話でした。するとそこにコロナ禍が降りかかって、緊縮財政に移行せざるを得なかった。それからポテンシャル重視の獲得が多かったのは、フットボール本部の趣向もあると思いますが、予算の問題も大きかったと思います。当時は、リリースごとに壮観になっていくスカッドを眺めてわくわくしていました。

ただ、ポジションごとに見ていくと若干の不安もありました。明本考浩はある程度覚悟していた中で荻原拓也まで移籍して、SBが一気に手薄になった。石原がここまで成長するとも想像していませんでしたから。前線も豪華にはなりましたが、松尾、前田はどちらかとシャドー寄りの選手だし、サンタナもJ1ブランクがある。逆に、どう組み合わさっていくのかなという期待はありましたが。

轡田 確かに編成はINとOUTがセットなので、明本と荻原に関しては「両方かあ」となったのは事実です。ホセ・カンテの引退は先に決まっていたので気持ちの上で覚悟もありましたし、アレックス・シャルクについても2シーズン全体を見れば仕方ないと。ブライアン・リンセンも納得できる買い手がついたら出していたかもしれないですね。そして、夏の時点で期限付き移籍をしていた犬飼智也、昨季開幕前に移籍の可能性が高かった岩波拓也についても、30歳前後になってきた彼らがアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンのいる浦和でもう1シーズン控えを続けることはできないでしょうから、入れ替えは自然だったと思います。そこで獲得した佐藤と井上は、年齢や野心、そしてプレーを見る限り「良いところを見つけたなあ」という印象でした。

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