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バスで行った海ほたるの中で待ちぼうけを喰らった

8月28日。休みをどうしようか悩んでいた。

8月がもうすぐで終わりだというのに、今年は一切夏らしいことをしていないことに気づいた。
海水浴?バーベキュー?キャンプ?怪談話?

さあ、困った。どれも実行するには時間がないし金もない。
空っぽの頭を揺らすと、海に行きたいなら東京湾で妥協するか。と考えついた。
しかし、お台場から見える綺麗な澱んでいる東京湾を見てもなぁと決めきれない。

Googleマップで東京湾をズームイン、ズームアウトをしていると海ほたるパーキングエリアが目に入った。

東京湾の真ん中に行きたい(バスで)

海ほたるパーキングエリア。
神奈川県川崎市から千葉県の木更津市までをほぼ一直線で結ぶ自動車専用道路の「東京湾アクアライン」上に存在するパーキングエリアだ。

日本夜景遺産にも指定されているほど、東京湾が一望でき、天気が良いと東京の高層ビルや富士山も眺めることもできるらしい。

そんな海ほたるパーキングエリアにはバスで向かうことができるというのだ。

東京湾を突っ切るアクアライン上に路線バスがあり、その路線バスに乗れば海ほたるで下車できるという。
バスはJR・京急線の川崎駅かJR木更津駅から乗車できるらしい。

「海ほたる バス」と検索をすると、同じ考えを持った人たちによるブログがGoogle先生の手によって大量に眼前に曝け出された。

「バスから見える東京湾は綺麗で最高!」「パーキングエリアでグルメ三昧!」
なるほど、意外と気軽に行けるようだ。

そうなれば、話は早い。次なる目的地は海ほたるに決定!

そんな高揚感が体を包んだ。
しかし、この時の私は何も知らなかった。
アクアラインの怖さというのを…

知っているけど知らない町・木更津へ

今回は一度も行ったことがない木更津駅からバスに乗り込むことにした。

東京駅から木更津駅まで約1時間20分。
東京駅では横須賀・総武快速線の「君津行き」に乗車すれば、乗り換えなしで木更津駅まで行くことが可能だ。

しかも、快速には普通列車グリーン車が連結されている。
追加料金は平日1000円、ホリデー料金だと800円が掛かるが1時間以上を快適な座席で乗車できるのだから嬉しい。

木更津駅には13時22分に到着。
このとき、海ほたるへ向かうバスは13時15分に発車済み。
次のバスは14時15分だ。

そこまでの時間を潰すため、駅や周辺を散策することにした。

木更津駅について

木更津駅は内房線と上総亀山方面へ向かう久留里線が乗り入れている。
ホームは1~4番線まであり、JR東日本が発表する1日平均乗車人員は12061人だそう。

到着した時間帯は部活帰りの学生が多く、普段から学生の利用が多いようだ。

今回の木更津駅構内で一番印象に残っているものがある。
それは、特急さざなみの案内ポスターだ。

駅構内の精算機近くにあったポスター

便利!快適!という売り文句の他に、
「渋滞の心配なし!」
「指定席なら確実に座れる!」
「えきねっとチケットレス特急券なら購入時に並ぶ必要なし!」
というメリットを3つ並べて、利用者に訴えている。

この一番上の「渋滞の心配なし!」という言葉の重さを後に理解するが、この時はまだ知る由もない。

木更津駅周辺

東西の出口がある。まず、西口から。

西口を出て真正面には大きな建物が見える。

スパークルシティ木更津

ショッピングモールの「スパークルシティ木更津」は、百貨店の「そごう」だったらしい。中に入ると、木更津市役所以外が入居している以外は閑散としている印象だ。

このスパークルシティ木更津は映画やドラマのロケ地としても利用されているようで、最近だとKing GnuのMVであるとかドラマ・コードブルーの撮影にも利用されたようだ。

スパークルシティ木更津の横にはたぬきのモニュメントがある。

これは歩いて5分ほどのところにある證誠寺で伝わる狸囃子伝説のモニュメント。結構でかい。

次に東口。

東口を出ると西口よりもこじんまりとしたロータリーではあるが、大型バスが入っては抜けてまた入っては抜けて。を繰り返していて活気があった。

その大型バスの行き先表示を覗き見ると品川だ羽田空港だ、と東京方面へのバスが発着していた。

そう。木更津駅は高速バスが充実しているのだ。

近隣へ向かう路線バスの他に毎時間のように東京・神奈川方面へバスが出ている。

路線バス案内図の上部に高速バスの線がある。西口からは成田空港行きもある。

東京・神奈川方面へ向かう本数を合わせればJR木更津駅の平日朝7時台の列車本数をも上回るバスが木更津駅から発車しているのだから驚きだ。

そんな高速バスの行き先の一つに川崎駅行きがある。そのバスに乗れば海ほたるへ向かうことが可能だ。

木更津駅から海ほたるへ行く

海ほたるへは「川崎駅行き(海ほたる経由)」のバスに乗車する必要がある。

注意点としては、朝夕の時間帯は海ほたるを通過してしまう。

夜の夜景を見に行こうとして海ほたるで降りたはいいが、バスが来ない!という状況に陥ればとんでもないことになるので、必ず時刻表はチェックしてほしい。

発車前と乗車

木更津駅東口7番乗り場から「「川崎駅行き(海ほたる経由)」が発車する。
この7番乗り場では「品川行き」も発車するので間違えないようにしたいところだ。

バスは14時15分発予定。発車の5分前にバスは到着した。

バスは大型バス。
日中の時間帯では座席を持て余している感があったが、朝夕の時間帯だと満席になることがあるようだ。

運賃の支払い方法は、3つある。

  • 整理券を取り、降車時に現金支払い

  • SuicaやPASMOといった交通系ICカード

  • クレジットカードのタッチ決済
    タッチ決済ではVisaかJCBが2023年8月時点では対応していた。
    American Expressは2023年夏に対応予定とホームページ上では明記されていたが、当日は対応していなかった。
    また、MasterCardについては未対応のようだ。

運賃の支払いについて1つ注意点がある。
時刻表の運行会社「TBS」(東京湾横断道路サービス)と表記されているバスに関してはICカードが利用できないので注意したい。

座席については自由席だが、運転手の後方の列に関しては優先席とされていた。

今回はその優先席の後ろに陣取った。

いよいよ発車

バスは時刻通りの14時15分に発車した。

バスは木更津駅を発車後、袖ヶ浦バスターミナル→木更津金田バスターミナルを経由する。

木更津金田バスターミナルは近くに三井アウトレットパークやコストコがあるので、店舗の利用者もしくは通勤利用の人がいるのかもしれない。

木更津金田バスターミナルの次は、いよいろ目的地の海ほたるである。

バスは木更津金田インターチェンジの料金所を通過し、東京湾アクアラインへ入った。のだが。

料金上を通過する際に、川崎方面の道で軽い渋滞が発生していた。バスはゆっくりと減速し、止まってしまった。
やっと動いたと思っても進む距離は非常に短い。なんともくすぐったさを感じる。

この渋滞はなんぞや?と気になっている時に、前方から運転手近くにある無線が響いた。女性の声だ。
「アクアトンネル近くで車両故障の情報です」
なぬっ!
私は思わず身を乗り出しそうになった。
聞き捨てならねぇ。

アクアトンネルとは海ほたるから川崎浮島ジャンクションを繋ぐトンネルのことだ。
そのトンネル近くで車両故障、事故が起きている。

私は白く霞んでいる東京湾上空を見ながら無線を聞いた。
事故はいつ起こるのかわからない。致し方ないことだ。と割り切った。
しかし、無線はアクアラインの渋滞の怖さを知る号砲でもあった。

アクアラインの渋滞

料金所を通過したのは14時44分。
海ほたるには14時46分に到着する予定なので、この時点で遅れが発生していることになる。

料金所から海ほたるの距離は、約4.4km。車ならあっという間に着きそうな距離がちっとも進まない。

右を見ても左を見ても、下は黒に近い海が広がって上空は白く霞んだ雲が広がる。

隣の木更津方面の車線はこちらの思いを汲むこともなく、ビュンビュンと気持ちよく車が過ぎ去っていく。

Googleマップにはこの混雑をどのように表示しているのだろう。

綺麗なまでに真っ赤。
静脈を流れる血のようにどす黒いような赤がアクアラインを染めている。

時刻は、14時58分。
地図では目の前だというのに、到着する気配がない。
どんどんと時間は流れ落ちていく。

海ほたるへ到着

ゆっくりと進むバスは水を得た魚のようにスピードを上げて、海ほたるへと入っていった。

到着時刻は15時11分。30分近い遅れだった。

降りる乗客は自分一人だけ。
この時の料金は木更津駅から海ほたるまで大人780円だった。

次の川崎方面へ向かうバスは15時46分発。あと35分後だ。

ちなみに、海ほたるから乗り込んだ乗客はカップル1組。
「もうバス来ないかと思ったぁ」と女性が嘆いていたが、「もうアクアラインから出られないかと思ったぁ」と私も嘆きそうになった。

海ほたるから見える景色とこの先を憂う

海ほたるのデッキへ出ると、潮風が体を抜けていく。

海ほたるの川崎方面には広場がある。
建設時に使われたシールドマシンの「カッターフェイス」モニュメントが設置されていたり、映画シン・ゴジラの実寸大足跡もあるので注目して欲しい。

海ほたるの中には回転寿司、レストランやスターバックスもある。ゲームセンターのアドアーズもあり、パーキングエリア・サービスエリアとしては設備が充実しすぎている。

そんな海ほたるを歩き回っていると木更津方面を覗けるデッキに出た。
バスで通った道を一望できるが、その道を見てこの先を憂いた。

車が連なっている姿は毛虫やムカデのそれに見えた。

バス停で待つには長すぎる

バス発車予定が近づいていた。
先ほど降り立ったバス停へ再度戻った。

バス停には大人3人ぐらいしか入れない小屋のような待合スペースが設置されている。
そこには先客、男性一人が座っていた。

長い戦いになることは予想できた。
そのためにスターバックスでダークモカチップ・フラペチーノを準備した。

海からの風が小屋に入り込んでくる。
フラペチーノを飲む。時間は進む。

それらが繰り返されて、気づけば20分が経過。それでもバスが来る気配はない。
先客の男性は痺れを切らして小屋を出た。

バスがせめてどこにいるのかを知りたい。
最近は接近情報を提供する会社も増えてきた。今回のバスの運営は小湊バス。
調べれば接近情報を提供していた。

やった!これでどこにいるかわかるぞ!と喜び勇んでアクセスしたが、高速バスは対象外なのか表示されない。

結果、30分が経過。
フラペチーノのせいか尿意が。

ふらふらと立ち上がり、トイレへ向かった。

その時に撮ったアクアラインの運行状況。

見事に真っ赤。

長い勝負になっていることに辟易としながらバス停へ戻った。
バスがいた
いるじゃねぇか!と思わずダッシュをした。

周りの目も憚らずにバスの扉へ近づき「乗ります!」と叫んでしまった。
運転手は直ぐに開けてくれて、「遅れて申し訳ありません」と頭を下げてきた。
いや、いなくなった私も私なんでと複雑な気持ちを抱いて、座席に座った。

この時点で16時20分。
40分近い遅れでバスは発車した。

海ほたるの壁がどこか要塞のように見えて、やっと脱出できると思った。

しかし、その気持ちをへし折る光景を見た。
連なるテールランプ達が目の前に広がっていた。

バスと鉄道の一長一短

結果として、16時38分にアクアトンネルを脱出。
その後、川崎浮島バスターミナルを経由した後、川崎駅へ向かうが遅れに遅れたバスは帰宅ラッシュに捕まった。

その時点で私は不貞寝を決め込んだ。

結果、バスは17時12分に川崎駅前に到着42分の遅れで到着した。

こうなれば、木更津駅で見かけた「特急さざなみ」のポスターに書かれていた「渋滞の心配なし!」の意味と重みがわかる。

バスのメリット

  • 時間の短縮

  • 始発で空席があれば座れる

  • 鉄道では乗り換えが必要でも、バスなら必要ない

上部2つは鉄道に勝る部分であって、最大の売り文句でもある。
しかし、今回は渋滞によって「時間の短縮」というメリットは全て打ち消されてしまった。

バスのデメリットは以下の通りだ。

  • 渋滞・規制が読めない。

  • 時間が読めない

渋滞や通行規制は生物であって、いつどこで何がおきるかわからない。
バスはそれがあるから怖いのだ。

バスは渋滞があれば時間が読めない。
対して、鉄道は時間が掛かることは明白で座席に座れない可能性もある。

本当の一長一短を思い知った。

なかなかな体験だった

海ほたるへ行きたいだけだったのに、房総半島特有の交通事情を垣間見た。

千葉県ではアクアラインの交通渋滞対策を進めているようだ。
気になる方はアクセスして見てほしい。

対策が取られていけば、バスのデメリットは解消され、鉄道に対する優位さを保つ。
しかし、あんな渋滞を経験しちゃったからには次の利用には億劫でもある。

もっと気軽に使えるような環境になってくれれば、嬉しい話だ。

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