おとぎ話「バベルの塔」
記事の概要
「米澤穂信」の『儚い羊たちの祝宴』の紹介記事です。
作者情報とか
アニメ『氷菓』を始めとする(古典部シリーズ)の原作者。
アニメでは淡くまぶしい青春物としての側面が強いが、本記事で取り上げる作品にそんな光はない。
暗く、冷たく、無慈悲である。
作品情報とか
ミステリ独特の暗さ、鋭さがある作品です。
ジャンル分けすればサスペンスに近いと思います。
要素としてはホラー要素もありますが、生々しさや異物感はあまりないです。
他方、「貴志祐介」の『天使の囀り』や「乙一」の『死にぞこないの青』では、生々しさ、得体の知れなさ、で恐怖感煽るような表現があるように思います。
一方、本作品では、そういった不気味さではなく、むしろ明瞭であり、精緻に組まれている。だからこそ、丁寧に逃げ道を塞がれていくような恐怖感を煽られます。
「森博嗣」の『すべてがFになる』のような精巧さと、「乙一」の『失われる物語』の儚さを組み合わせたような作品かもしれません。
雑文
「米澤穂信」って文体で作品の雰囲気を作るのがとても上手いですよね。
『儚い羊たちの祝宴』というタイトルも綺麗で淡い中にどこか不幸を予感させる空気を孕んでいて。
作品を読み終えた後に、改めてタイトルを読み返すと、その秀逸さにため息がでます。
作中の舞台もおとぎ話チックで、「恩田陸」の(理瀬シリーズ)に近いものを感じました。
読み応えは本格サスペンスですが、構成は5本立ての短編集なので、ある程度ライトに読めるのも良いですよね。
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