見出し画像

『前だけを見る力』での挫折が『異端のチェアマン』を生んだ?「#徹壱塾」塾長ヒストリー<7/7>

 写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱です。これまで27年の活動の間に、ノンフィクションを中心に14冊の書籍を上梓してきました(参照)。そこで培ってきたノウハウとメソッドを体系化して、2024年7月11日より「宇都宮徹壱ブックライター塾(#徹壱塾)」を開講します。

※昨日、新たな入塾希望者からのメールをいただきました!

 ただいま「#徹壱塾」では1期生を募集中6月30日締め切りまでの間、宇都宮徹壱の過去の作品を「塾長ヒストリー」として7回にわたってお届けしたいと思います。第7回は、構成として参加した『前だけを見る力』、そして最新作の『異端のチェアマン』です。

<6/7>はこちら

2022年『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』(KADOKAWA)

『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』(KADOKAWA)

 2019年のFIFAクラブワールドカップに、オセアニア王者の一員として出場した唯一の日本人選手、松本光平。そんな彼が、コロナ禍のさなかにニュージーランドで失明寸前に陥いるアクシデントに見舞われながらも、不断の努力でピッチに復帰するまでの物語。版元はKADOKAWAです。

 目の手術のために帰国した松本選手と、たまたまお会いする機会があり、それを記事にしたところ、私には珍しくYahoo!のランキングでトップを獲得することに。一般的には知られていないフットボーラーの記事が、これだけ多く読まれたのは、極めて異例なことでした。

 この出来事がきっかけで、出版大手のKADOKAWAから松本選手の出版企画の話が持ち上がります。「著者」が松本選手、私は「構成」という建付け。人物ものというジャンルも、私にとって初めてのチャレンジでした。少し迷いましたが、これまでのスタイルから脱却するチャンスと捉え、謹んで受け入れることにしました。

 松本選手のキャリアは、怪我を含むさまざまな挫折の連続。けれども自身のキャリアについて語る、彼の言葉は常に前向きで明るく、聞き手である私はどんどん引き込まれていきました。そして執筆をつづけながら確認しました。「松本光平の生き方こそ、ポスト・コロナ禍の時代を生き抜くヒントになるのではないか」と。

「コロナ4部作」の3作目である本書は、人物ものという新しいジャンルを確立したという意味で、非常に重要な作品となりました。ただし、商業的には成功したとは言い難く、それ以外でもいろいろ悔いが残る仕事となってしまいました。そうした悔しさが、次の作品へのエネルギーとなっていきます。

2023年『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)

『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)

 Jリーグの前チェアマン、村井満さんの4期8年を再現した作品。「コロナ4部作」の4作目であり、四半世紀にわたるブックライター人生を懸けた作品でもあります。版元は集英社インターナショナル。

 かねてより私は、村井さんの書籍を出したいと考えていました。ビジネスパーソンとしての手腕や人間的な魅力に加え、チェアマン4期目でコロナ禍という未曾有の危機からJリーグを救った舞台裏については、きちんと形にして後世に伝えなければならないという使命感を持っていたからです。

 もうひとつ、自らに課したテーマが「ノンフィクション作品に定評のある大手で出版する」というもの。あらゆる人脈を駆使して、ようやく集英社インターナショナルにたどり着いたのですが、ここから企画を通すまでには想像以上の労力を費やすこととなりました。

 今でもよく覚えているのですが、のちに担当編集者となるOさんに最初のプレゼンをした時、彼が村井前チェアマンをまったく知らなかったことに面食らいました。自分が考えていた以上に、サッカーやJリーグは世の中には知られていないという現実。それゆえ本書は、サッカーにあまり関心がない層に対しても、面白く読める作品となるように心がけました。

『ディナモ・フットボール』以来となるハードカバーに仕上がった本書は、そこそこの価格(2200円+税)だったにもかかわらず、増刷に次ぐ増刷で現在3刷りとなっています。版元に対して最低限の面目を果たし、村井さんの功績を形にできたという意味でも、一定の満足感が得られた作品でした。

 私自身、本書の制作過程でさまざまな学びを得られました。企画の立て方、版元へのプレゼン方法、インタビューの手法、執筆の進め方、編集者とのコミュニケーション、そしてプロモーション。これら一連のノウハウをメソッド化して、次の世代の書き手に伝えられないだろうか──。

 こうした思いから生まれたのが「#徹壱塾」だったのです。

JR西荻窪駅より徒歩1分、会場の「factoria」。塾長の普段の仕事場でもあります。

 当塾は「自ら取材して執筆する」ことで「書籍デビューを目指す」方に特化した講座となっております。また当塾は、オンラインではなく「対面での指導」にこだわります。

 ブックライターになるメリットとは何か? 私の経験に基づいて断言できるのは、以下の4点です。

1)ライターとしてのステイタスが上がる。
2)作品を通してファンを獲得できる。
3)自分の仕事が読者の記憶に残る。
4)ライターとして息の長い活動ができる。

 書籍を出せば、間違いなく書き手としてのステイタスは上がるし、ファンを獲得できるし、読者の記憶にも残るし、息の長い活動も可能になります。

 そこに価値を見出だせるのであれば、まずは「3年後の書籍デビュー」を目標に、当塾を受講してみてはいかがでしょうか? 当塾では、あなたの努力と才能と運を最大限に引き出すべく、これまで培ってきたノウハウをメソッドにしてお伝えしていきます。

 1期生を迎えての最初の講義は、7月11日(木)18時30分。これまで4冊の書籍を執筆してきた、東京・西荻窪のコワーキングスペース「factoria」でお待ちしています。

塾長:宇都宮徹壱(写真家・ノンフィクションライター)

プロフィール:
近著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)。
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、1997年に「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追い続け、積極的な取材活動を展開中。
2016年より個人メディア「宇都宮徹壱ウェブマガジン」をスタート。
著書多数。2010年に『フットボールの犬 欧羅巴1999‐2009』(東邦出版)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。2017年に『サッカーおくのほそ道Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)でサッカー本大賞受賞。

「#徹壱塾」に興味を持たれた方、あるいは入塾をご検討されている方、下記の記事にアクセスしてみてください。

 主な内容は以下のとおりです。

■どんな方に向けた講座か?
■どんな学びが得られるか?
■どんな特徴があるのか?
■どんな効果が期待できるか?
■6カ月で学ぶ11のメソッド
■第1期「#徹壱塾」概要

<この稿、了>



よろしければ、サポートをよろしくお願いします。いただいたサポートは、今後の取材に活用させていただきます。