見出し画像

拝啓 ツルッパゲさま

拝啓 ロバート・ツルパゲさま

ずっと、アニさんからの本が届くのを待ち望んでいました。

最初は、オヤジギャグを散りばめたフォトエッセイ的なものかと思っておりましたら、何と、もう一人の人格者、ツルッパゲさんとの哲学的な対話というじゃないですか。
また、田中ひろのぶさんの、『読みたいように書けばいい。』に触発されて大幅に書き直した。というから、キングタムの新刊じゃあるまいし、これほどまでに、事前に予約した本が待ち遠しいというのは初めてでした。

いざ、本が届いて読み始めました。

もう、ワクワクしながら、お風呂場に持ち込み、3つも書かれてあって前書き部分だけを読んで放心状態になりました。
おかげでツルッバゲの顔がお湯で光り、しまいにふやけてしまいました。
本を買う金がない方は、もう、最初の前書きだけを立ち読みするだけで十分だと思いますが、
満員電車の中で、敢えて、堂々とツルッパゲを丸出しにして、アニさんの痛快なジョークを堪能したい方は、絶対に買った方がいいと思います。
きっと女子高生にも、どういう反応かは分かりませんが、ウケられますし、奇跡的に、同じ本を通読中の淑女が同じ車両の中にいたら、途中下車をして「こんなカフェって、アニさん好きそうだねって」と言いながら、ツルッパゲの上で手と手を重ね見つめ合う。というような妄想に耽ることも出来ます。

その前書き(前書きだけ頼まれた人)には、こんなセンテンスがありました。

人間の価値というのは、何かの競技で表彰台に乗ることだと思っていませんか。そうじゃない。勝手に『誰かの価値観』という、エントリーしたおぼえのない競技のスタートラインに立たされていると思ったら断固拒否していいのです。
今までどこにも存在しなかった競技を自分のために発明してもいい。

何と、勇気が出る言葉じゃないですか。自分が大事だと思える価値を見つけて、そこで自分だけの競技をしていけば、いつかは、そこで一番になれるし、それを持って自分の価値を肯定できたら、俺は一番を持っていると、他の人にも退けを取らずに、堂々と渡り合って、生きていけるってことではないですか。

そして、次の前書き(アニの前書き1)には、こう書いてあります。

哲学という言葉を『センス』と読み替えてもらってもいい。自分が見ている世界を面白く受け取るのもつまらなく感じるのもセンス次第。センスとは、感覚=センサーのこと。だから俺は、世の中のどんなことでも面白く楽しく敏感に反応するセンサーを持っている人が好きで、尊敬している。

高校生が降りた後、誰もいなくなったJRのBOX席で、風呂でふやけたツルッパゲの表紙をかざしながら、
この”センス”という言葉、別の箇所で”了見”とも表現していたと思うが、
この言葉をガッタン、ゴットんと、噛み締めていたら、かつては青春の門の舞台、今は我が職場の田川後藤寺駅に着いてしまった。
そして、昨夜作り上げていた2020年度業務方針に、この文言を加えることにしたのだった。
働き方改革うんぬんより、仕事に対する自分の”センス”をツルッパゲ、いや磨け!
忘れないうちに上の文言を追加して、朝のラジオ体操が終わって直ぐに、物分かりのいいO所長に説明を始めたのでした。←ツルッパゲの部分は嘘ですが。。

この本(アニさんとツルッパゲさんの対話)における前書きは、その哲学のエッセンスが丁寧に言葉を選んで書かれているけど、やっぱりその哲学を裏打ちする、アニさんが体験して来た本編の一つ一つのエピソードは、とにかく腹を抱えて笑えますし、そこにはちゃんとシャネルの5番の香りも立ち込めて来ます。
僕なんか、最近始めたヨガの練習のために、胸の肋格筋のインナーマッスルが筋肉痛の時だったので、笑うたびに胸が攣って呼吸困難になるところでした。← これは本当です。

アニさんの事、僕も、ほとんど何も知らないまま、どんな本かも分からずに、予約してしまったのだけど、多分、直感的に、この人は凄い!と思ってしまったからだと思うし、
考えてみると、僕の中でこの人は信じられる(尊敬できる、好きだー)5つの基準を持っている人だったのだと思う。それもすっごい高い次元で!


1. 人を国籍や生得的属性で差別せず、その人そのものを見ようとする人
2.ユーモアとアイロニーがあり、哲学を語ろうとしている人
3.先に言葉を持っていて、言葉にならない表現ができる人
4.旅好きで、孤独を愛し、写真好きで、寂しさを受け入れている人
5.  ずっと、大事な友人との日々を忘れないでいる人
6.野糞をしたことがある人
(このような生理的生命危機を体験した人は、人に寛容であると思うから)

当然、上の6つのことは、この本の中の随所に詰まってもいます。

ある人が、「デシャンは、”見るとは、2度見る”ことだ言っている」と教えてくれたけど、アニさんは、オヤジギャグを10倍ぐらい洗練させたジョークで、何度も読みたくなるような仕掛けをして来ます。
これは、村上春樹が、戦略的にエロ描写を忍ばせて読ませているというより、とてもゲリラ的で無作為な持って生まれた天才的文体センスだと思います。

僕などは、読み終えた後、あのオリエンタル・エクスプレス、時速160キロの男、郭源治(格言児)のギャグが、どこだったかを見つけるために、前から読んで、後ろから読んで、また前から読む羽目になってしまって、もうここは、91ページだと、ページを折り曲げ記録に残すことにしたぐらいです。

ただ、困ったことに、このジョークの全てを理解するには、ある程度の教養だったり、当時の時代カルチャーの知識が必要です。
僕は、会社で、本好きな、平成生まれの新人に、面白い本があったら献本して読ませているのだけど、いちいち「このジョークの意味、楽しさは、新人君には読んでも分からんやろうなー。」今の若いやつ、勿体無いなぁーと思うところがありました。
こういう自分も、場末のスナックの「来夢来人」の意味がにわかに分からず、アニさんよりも、少し下の年代だが、かつて丸ノ内OLでバブルを経験し、当時は文学教養のあった(今は皆無の)妻に訊ねると、スナック菓子をポリポリした手で、本を取り上げながら教えてくれました。無論、チャップリのことだとも。

アニさん。話が冗長になって、ごめんなさい。

ともかく、改めてアニさんの大ファンになりましたよ。
いつか、本の中に出て来た女性のように、ふとある街角のギャラリーに出かけて、そこでじっくり選んだアニさんの写真を手にし、それを恭しくカフェで眺めたりして。そんな妄想もしながら。。

サラリーマンでも、それ以外の世界でも、自分が信じる、これっていう何かを、その感覚を大事にして生きていこう。
教会で子供達が賛美歌を唄うような純真さで、そんなにはない大事なことを掲げながらサルトルのように楽しく行進して行こう。そこに一緒に歩いてくれる仲間がいてくれたら、なおいいなー。

アニさん、ツルッパゲさん、ありがとう! 
また、どこか、街角で、いつか会える日を 夢見て! Chao!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?