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拝啓 お母さん。 今日まで何とか親父は生きています。 〜桜の下で女の子の写真を撮ったあの日の記憶〜

もう、5年前経ったんだ。桜の下で女の子の写真を撮ってから、そして親父はまだ、満身創痍に変わらりはないけど、アイロン一つもって仕事に立っている。

これまでのと今の平穏に感謝❗️

今ここを幸せと喜べばいい。
明日の事は明日が考えるだろう。

#知らんけど

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桜の開花をこれまであまり気にしたことはなかったし、ゆっくり愛でるというようなこともなかった。
京都に行く時は、きまって桜の蕾が膨らんだ頃の3月の終わりだったし、花見も会社でやらなくなってしまって、残業の帰り道に闇に白んだ花を見るばかりだった。
ただ、今年は30日にどうしても満開になってもらう必要があって、見事に桜が咲いてくれ、素敵な桜を背景に前撮りの写真を撮らせてもらうことができた。
これに安心したのか、ほとんど桜はどうでもよくなっていた。

師匠のTさんから、桜吹雪の撮影に誘われても、年始で忙しくそういう訳にもいかなかった。そして金曜日には、実家の大分に帰らなければならなかった。
父親を連れ立った病院の近くの土手には、見事な桜と菜の花が咲いていたが、スルーして、約束の時間に遅れないように車を走らせた。
話を聞くまでは、どうなるか不安があった。それが先生の顔と余裕のある説明とこれまでの実績で、一気に安心感が充満した。
やっぱり、先生は顔であると思った。笑
親父にいたっては、今にも小躍りしそうなほどニヤけていた。それは、単純に入院の治療が2泊3日で終わると聞いて、仕事の心配がなくなったからである。
72歳になっても、アイロンをもつ。これが親父の全て!all about my father

病院を出ると、外は薄曇りで午後5時になろうとしていた。突然、行きがけに見かけた桜並木のところに行きたくなり、脇道を見つけて、自転車を投げ捨てるように車を横付けし、カメラを2台ぶらせげて土手に向かった。
土手の脇で、二組の若いママ達が子供を連れて花見をしていた。
幻想的な桜並木の天蓋の下で、可愛いフリルの服を着た女の子が立っていた。56mmのレンズを取り出し、息を止めシャッターを切った。
違う構図からも数枚撮った後、突然、雨が降り出し。ママ達が駆けつけ、大慌てで退却していった。親父は土手で黄昏ていた。

また、来年この桜を見るために、ここに帰って来たいと思った。桜は散り、再び1年の充電を得て咲いてくれる。これが僕らにとっての希望だ。
そうだった、明日はイースター(イエスの復活祭)

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