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経営パワーの危機

【読む背景】
この本そのものは、2019年4月頃から家にはあったもののいつか読もうと思っていた長年の積読本であった。本書は元戦略コンサルタントで、現ミスミグループの名誉会長を務める三枝匡氏によって書かれた、いわゆる「経営3部作」のうちの一冊である。3部作の1作目『戦略プロフェッショナル』は2019年6月に読み、大学2年生ながら経営の理論と小説とが、ここまで綺麗に融合した読み物が存在するのか、と感動したことを覚えている。

時は経ち、私は事業再生を得意とするコンサルティング会社の最終面接を前にしていた。そんなある日、本棚に眠っていた本書がきらりと光った。開いてみると当企業にて行う業務内容と書かれている内容とが、おおよそ合致しているように思えた私は、「面接の対策」を言い訳に読みはじめたのであった。

お陰さまで!?私は良い結果を受け取ることになった。入社日まで日の無い中で、次作にあたる『V字回復の経営』については、1か月以内に読めれば良いなと思っている。

【感想】
本作も非常に面白かった。
『戦略プロフェッショナル』も良かったが、あれから約3年間分知識を溜めた分だけより正確に本作を味わえるようになってきたと思う。再建において大切な箇所を誤魔化すことなく書ききっており、リアル再建者のリアルな心境やステークホルダーの動きが記載されており、楽しくも含蓄のある内容だった。

【印象に残った箇所】
117p
「というのは、伊達君、会社を倒産まで至らしめたその本人が、同じ会社を立て直すのは至難の技なのだ。人間なんて、自分で作り上げたカルチャーを自分で壊しきれるほどの自己否定はできないからだ。社員もそれを素直に聞けなくなっているしな。だから会社を再建するときはその人はいない方がいい」by財津社長
→ここにコンサルティングないし、外部の人間の介在予知が発生する。

154p
経営パワーの醸成[損益責任を負う]
経営者的人材の育成は損益責任を負うところから始まる。本人が深刻に思う状況ほど習熟は早い。最後には勝利の味を覚えることが肝心だ。そのためには十分なサポートを事前に確保する必要がある。財津は最後まで伊達の育ての親の役割を果たしてくれるのだろうか。
→目の前の作業に追われる中でも、どこかでマネージャーの目線を忘れずに持っておく。

155p
事業再建の教訓[イモヅル式改革を狙う]
再建では前任者と同じゲームをしてはまずい。問題のボトム(底)に降りて一番複雑で大きく見える問題から切り込む。あとはイモヅル式に問題を体系化する。社長が表層的なことで局地戦ばかりしていると、社員をキリキリ舞いさせる割には問題の核心に行き当たることができない。
→簡単に言っているが、一番複雑で「大きく見える問題」を特定するためには経験に基づく勘が必要なはずだ。

318p

しかし、「失敗体験」はいつまでも生きる。経営がどのようなメカニズムで動くのか、さまざまな要素の因果関係が見えてくる。その「因果律」のデータベースが貯まってくると、経営者の「勘」が冴えてくる。
→155pへのコメントとつながる。

385p
伊達陽介に限らず、予想外の苦境に立たされた時に、その精神的重圧に耐えて走りぬく最大の力は若さだ。だからリスクへのチャレンジはなるべく早いうちにトライした方がいい。頑張って努力を続け、この不安定な時期を抜けて、ああ、これで俺の人生、何とかなりそうだと思えた時の安堵感。そしてみなぎる自信とプライド。こうした苦しみの経験を経て、人は「実力」という名の切符を手にするのである。
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