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現代に必要な『聴く力』の重要性と身につけ方

最後に誰かの話に耳を傾けたのはいつですか?
誰かがあなたの話を本気で聞いてくれたのはいつですか?

今回は、著書『Listen-知性豊かで想像力がある人になれる-』を読んで、「聞く」ということはそもそもなんなのか、また自分なりに普段の聞く姿勢について振り返ってみました。
2021年読んだ本の中でも、かなり印象に残っている一冊だったので、ぜひ皆さんにもおすすめしたい一冊です。

著者はケイト・マーフィというニューヨクタイムズにも寄稿するジャーナリストの方。本人の様々な人へのインタビューを通して様々な聞くことによる影響力など深い洞察を書かれています。

◆Summary
・実は多くの人が話をちゃんと聞いてもらえた経験が少ない
・人の話をちゃんと聞けない理由
・ちゃんと話を聞く上で重要なポイント
・まとめ
・【番外編】僕が話を聞くときに注意していること

実は多くの人が話をちゃんと聞いてもらえた経験が少ない

著書の中では、実は多くの人が「人に話を聞いてもらえた経験が少ない」ということを語っています。

最近は、「伝え方が○割」とか「プレゼン能力を高める〇つの方法」などと、伝えること・話すことに重きのおいたコンテンツが多くないでしょうか。SNSではインフルエンサーやyoutuberが好きなことを発信しています。

しかし、これだけSNSやデジタルが普及して全世界と繋がって便利になって自分の考えや意見を発信できるのに、孤独を感じる人が増えているそうです。「孤独 調査」で検索するといろいろな情報が出てきますが、日本人は世界でもトップクラスに孤独に感じる人が多いそうです。

現在、傾聴力が働く上でも大事など言われる中で、なぜこれだけ孤独を感じる人が多いのでしょうか。
それは一つに「誰も『本当に』話を聞いてくれないから」だと思います。

そういえば僕も親や先輩方に言われて育ってきたと実感があります。例えば、

俺(私)の話を聞きなさい!

このときの話を聞くっていうのは、「言うことを聞きなさい」なんで、もはや命令なんですよね。親御さんはこの言葉を子どもに言ってないでしょうか?

ではなぜ人は人の話をちゃんと聞けないのでしょうか・・・?

人の話をちゃんと聞けない理由

著書の中では、なぜこれだけ人の話をちゃんと聞けないのか、いくつかのポイントがあるのでご紹介していきます。
おそらく誰もが一度はやっている聞き方だと思います。

①さえぎる

相手が途中で話をしているときに、つい自分の意見を重ねてしまう、そんな経験はありませんか?
最後まで話し手が話しきってこそ話は聞いたことになるのに、これでは自分の意見ばかり言ってしまうのです。政治の討論とか仕事のミーティングとかでよくあるなあと感じます。

②次に何を喋るか考えている

よく話をしている最中に「次はこの質問をしよう」とか「こんなアドバイスしよう」とか考え事をしながら人の話を聞くときってありませんか。これは「相手の話を聞いてるフリ」をしているということです。次に何を喋るか考えてしまうことで、相手の話を半分程度で聞き流して、自分の体の良い部分だけ切り取って聞くことになります。だからこれは相手の話をよく聞いているわけではありません。都合よく人の話を聞いているのです。

③レッテルを貼っている

話し手に対して「こういう人だから」と思い込みをもちながら話を聞いているケースです。著書の中にはこのような言葉がありました。

「出会った日とずっと同じ人間」なんていない

『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 p120

人は日々成長し変化していくものです。ただ、レッテルを貼っているとその人の変化や大事な部分を見落としてしまいます。
色眼鏡をかけながら人の話を聞くと、そもそも聞き手に入ってくる情報がまるっきり変わるということです。
自分ではそんなことを思っていないというほど、そういう視点で人を見ているので結構話をしていると決めつけで人を見ているなと感じる場面が多々あります。

その他にもスマホに注意を取られたり、作業をしながら話を聞いたりしていると、「この人は本当に話を聞いているのだろうか」と話し手は不安になります。1on1やミーティング時にそういう上司とか先輩いませんか。

自分の話を聞いてもらえない人には信頼しないので、話の聞き方一つでめちゃくちゃ損してる人、世の中にたくさんいると思います。
聞き手としては「聞いてる」と思っていても、話し手が聞いてくれていると思わなければそれは聞いていないのです。話を聞いてくれないと思った人にはホウレンソウもしなくなります。聞くということは心理的安全性にも繋がってくるんですよね。

では、どのような話の聞き方がいいのでしょうか?

ちゃんと話を聞く上で重要なポイント

著書には話をよく聞く上で重要なポイントをいくつか紹介しています。こちらもポイントを絞ってご紹介します。

【前提】話を聞く上で何より大切なこと

著書の中では、話を聞く上で何より大事なことは

好奇心による質問

だと言っています。「Hearing」と「Listening」で違いを説明しています。
この2つの違いは、聞く姿勢の違いです。
Hearing → 聞こえる(受動的)
Listening →聴く(能動的)

漢字も「聞く」ではなく「聴く」というのが大事です。(これまではずっと「聞く」を使ってましたが)
人の話を「よく聴く」にはListening、つまり自分から話し手のことを積極的に知ろうとか理解しようと意識を全集中させようとすることが何より大事であり、そのために好奇心がとても大切であるということです。
(好奇心がないのにそもそも人の話を聞くって結構しんどいですよね。笑)

ではこの好奇心をもって、どのような聞き方をするのが良いか、ということをポイントをまとめました。

①自分の感情や考えを横においておく

人の話をちゃんと聞けない理由にも書きましたが、とにかく多くの人は話を聞いてる途中に自分のことばかり考えているわけです。話し手の言ったことに対して自分の余計な感情や思考は一度横においといて、まずは話し手の話を全て受けいれるということが大事だということです。そして、同時に自分の感情も受け入れるということ。「会話には我慢が必要だ」と著書では言っています。

②沈黙を恐れない

会話が途切れてしまうと、場をもたせようとアレコレ話をしようとしてしまいます。しかし著書の中では、沈黙は「相手の話をよく聞いてる時間」であると言っています。つまり話をよく咀嚼しているということなのだと。沈黙をどうにかしようとしてしまうと、何を喋ろうかという思考になるのでまた相手の話が入ってこなくなるのです。その瞬間からあなたは人の話を聞いてません。

③「なぜ」という質問はしない

これは意外にも思えますが、「なぜ」という質問には相手を身構えさせるからだそうです。身構えることによって、本当に話し手が話したいことを引き出せないということです。ユーザーインタビューでも「なぜあなたはこれを購入したのですか?」と直接聞かれても、おそらくインサイトは見つからないでしょう。なぜなら、質問に合わせてそれにあった答えを作るからです。だから、なぜという質問はNGということです。
聞き方によって出てくる答えも変わってくるということですね。

一旦まとめ

長々と書きましたが。著書には、この他にも様々な具体例を用いて聞くことの重要性を説いています。400ページを超えるのでまとめるのはとても大変ですが、とどのつまり

よく聞くということは自分にも周りの人にも良い影響を及ぼし、人生を豊かにしてくれ、誰にでも伸ばすことができるスキル

ってことだと思います。ビジネスマン、親御さん、色んな人に読んでいただきたい一冊でした。ぜひ興味を持った方はお手にとって見てください。


【番外編】僕が話を聞くときに注意していること

ここまで著書のことをまとめてみました。
この本を読む前から、僕は人の話を聞くのが好きだなと思っていたので、そもそもなぜに人の話を聞くのが好きなのか、また人の話を聞くときに注意していることや気にかけていることをこれから話していこうと思います。

なぜ僕は人の話を聞くのが好きなのか?

(なぜって使っちゃってるけど)この問いへの答えは「歴史が好きだから」ということに集約されると考えています。
僕は小学生のころから歴史が好きです(今も)。歴史の何が面白いのかと言われると、歴史は人間ドラマだからなんですよね。
歴史は人類の歩みそのものであり、歴史という長編ドラマの中に一人ひとりの人生が連綿と過去から現在そして未来に繋がっているんです。
そのドラマには、一人ひとりが歴史上の登場人物で、昔の人にも、今を生きている人にも、その人なりの歴史があります。

その上で「聞く」という行為は、僕にとっては歴史調査と一緒といえます。人の話を聞くことによって、歴史を知り、今を知る。その調査研究活動みたいなものなんだなと思ってます。聞くのが好きなのではなく、聞くという行為によって歴史を知るということが好きなんだな!(書きながら気づいた)


「聞く」に目覚めた質問力を鍛えるワークショップ

2018年か2019年くらいに、知人の紹介で質問力を鍛えるワークショップを開催している方と出会いました。
そのときのワークショップが自分の質問力を飛躍的に向上させたと思います。ワークショップを通して何より目からうろこだったのは、「聞き方ひとつでこれだけ知れることが変わるのか」ということでした。あと、話す練習はみんなしてるかもしれないけど、聞く練習ってほとんどの人はしたことないだろうなとおもいました。

良い話し手のことは聞きますが、良い聞き手についてはなにか聞いたことがあるかと言われると少ないと思います。
そのくらい、世の中は自分の考えや意見をどのように伝えるかばかりが広がっていて、聞くということにこれっぽっちも注目されてないんです。
だからこそよく聴くということが大事だなと、今回のワークショップの経験そして著書を読んで改めて感じたことである。

ワークショップで得た学びと聞くことで気をつけていること

そのワークショップでは「聴く」ことの具体的なスキルについて多くのことを学びました。その時の学びを今も意識していますので絞ってお伝えできればと思います。

①「決めつけ質問・誘導質問」をしない

「決めつけ質問・誘導質問」とは、簡単に言うと聞き手の意図や考えを質問を通して話し手に伝える質問です。これは結構やってるとと思います。

例えば僕もめちゃくちゃ言われますが、将来の話やキャリアの話になったとき、「やっぱり将来は〇〇になるの?」という質問をされたりします(家系のこともあるので)。

これは、聞き手が相手に対してバイアスを持っている質問なんですよね。聞き手が勝手にそう思っていることを話し手に押し付けている質問の方法なので、本当に話し手が考えていることを引き出せなかったりします。(実はそうじゃないんだけどな)とかって内心思われながら会話が進んでいくと、話し手のことを理解することから最も遠いところに行ってたりします。
なのでなるべくこの質問のしかたはしないように気をつけています。
これがなかなか意識していてもポロッと出てきたりするので自分のバイアスというものは思っている以上に強いものなのです。

②逆説の質問・前提を覆す質問で深堀り

僕がよく質問の中で使うのは、「逆に~」とか「仮に~」だったり、「もし○○だったら~」と使う。
いま現状で考えていることから一歩枠をはみ出すことで、思考の幅を広げるために使っています。歴史にもしもはないといいますが、もしもを考えることによって、その人の価値基準に触れれたりします。
前提条件を覆すような質問も、それまで考えていたことの枠からはみ出ることによって、より思考を深めることができます。

③(当たり前だけど)相槌をしっかりとうつ

これは基本的なことだと思うかもしれませんが相槌をうつうたないでは、話し手のモチベーションに大きく影響します。また、言葉だけの相づちと本当に聴いている相づちは話し手に伝わるので良い聞き手であるか、悪い聞き手であるかは話し手にバレます。

合コンでもよく言う「相槌さしすせその法則」みたいに、やはり相槌は話を引き出すためにはとても大切なこと。
僕が意識している相づちのポイントは、以下です。
・小さく細かく、相手の邪魔にならないタイミングで
・リアクションは大きめに(というか勝手に大きくなるだけれども笑)
・質問の間を大切にする

そもそも相づちをスキル的にやるというのはやらしいことだと個人的に思っています。ライフハック的に相槌するのではなく、まずは純粋にその人に対しての好奇心をもって質問しましょう、というのがやはり大前提で大事なことなんだと思います。だからこそ相づちも自然なものとなるんですよね。

④聴く:話す=9:1

よく「聴く:話す=8:2」とは言いますが、僕個人として9:1くらいの割合です。そもそも人に意見するとかそういうのはおこがましいと思っているし、歴史探求での聴くなので話すことは特にないと思っていたりします。笑(これはいいのか悪いのかわかんないけど)なにか意見を求められるとき意外はなるべくは聴きに徹するという姿勢を大事にしています。

以上、僕が人の話を聴くというときに気をつけていることでした。

僕が思う「聴く」ことの大切さ

「聴く」とは、新しい自分に出会うアプローチ

聴くということは僕にとっては一種の出会いなんだと思います。
今まで知らなかったこと、考えたこともなかったこと、多くのことが聴くという行為によって見えてきます。

あるラジオ番組では、IT評論家の尾原和啓さんが「問いをたてなきゃ見えない」と言っていました。問いを立てることによって初めてそのことを認識できるということなのだと思います。

つまり、聴くということは、問うことにより、氷山の一角の見えない部分を掘り起こすような作業と同じなのだと思います。

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この氷山の見えない部分にアプローチするには、やはり自分のバイアスと向き合い、それを手放して話し手に身を委ねることがすごくすごく大事なのです。自分のバイアスは常に見えている氷山にしかアプローチしないので。

また、聴くということは、ある種、他者と自己を重ね合わせることでもあります。他者の中に自分を溶かしていくようなことでもあり、話し手という他者の意見や考えに共感するということです。

多くの人が「聴く」というスキルを得て、お互いのことをよく聴きあう社会になれば、もっと社会は良くなるのではないかと思います。
自分の言いたいことではなく、相手の話したいことをまずは聞いてあげる、そういう他者理解のアプローチを社会全体が大切にできればなと思いました。

東京都副知事の宮坂さんのR25の記事も傾聴力のことが書かれており良記事なのでぜひご一読ください。

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