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「結婚したい独身男性こそベンツを買え!」

「バカとブスこそ東大へ行け!」はドラゴン桜だが、「結婚したい独身男性こそベンツを買え!」という話である。

2020年夏、大学卓球部同期数人でバーベキューをやることにした。皆で千葉のとあるスーパーに集合し、各々が好きな具材を買っていく。「バーベキューで食材を余らせてしまう」はバーベキューあるある1位なので、常に僕が量をイメージしながら買い物状況を観察していた。

しかし、スーパーには魅力的な具材がたくさんあり、なによりこれからバーベキューなのだ。結局、食べたい欲には勝てず多めに買ってしまうものである。もちろんバーベキュー終了後にほぼ食材が残っていなかったら、めちゃくちゃ嬉しいのだが、スーパーでワクワクしながらカゴに食材を入れるのもバーベキューの楽しみの一部であると考えている。結局はどちらでも楽しい。

スーパーからY君のマンションに向かう。マンションにバーベキューが出来るスペースがあり、そこで貸切バーベキューをするのだ。今回のメンバーは、既婚のY君、T君とT君ジュニア。独身の僕、S君、M君。つまり2人のパパと3人の独身男という構図である。

マンションに向かうY君の車内で、簡単に近況を聞いていると、なんとS君がベンツを買ったらしい。それを聞いて「S、速攻で彼女出来るよ!」「昔先輩が言ってたよ、車持ってたら彼女出来るって!」と20代の時に会社の先輩から「車買ったらモテるぞ、だから照井車買え」と言われた記憶を思い出し、反射的に車内で叫んだ。

勝った理由を聞くと数週間前に、リモート飲みをしていてY君がS君に「Sは彼女いないんだからベンツ買えよ!金もあるし、ゴルフやデートでも使えるからベンツ買えよ!」と言ったらしく、その流れで翌週S君は中古のベンツを買ったそうだ。「ベンツって言っても中古の○○クラスだからね」と優しいS君は謙遜するが、「Sすごいよ!絶対彼女出来るよ!」と同じ彼女無し独身男性として仲間意識のあった僕は、S君の素晴らしい決断力と行動力にいたく感動した。


2023年4月15日(土)天気は雨。
「ごめんちょっと遅れるかも」とLINEグループにメッセージを送った。前日、出張帰りの新幹線で飲み過ぎて完全に二日酔いだ。痛い頭とムカつきの残る胸、水を大量に摂取しながら準備し、僕は家を出発し新横浜に向かった。新横浜着後、5分後の新幹線に飛び乗りたい。JR横浜線から新幹線口に移動し、切符を買い新幹線ホームに向かう。なんとか間に合った。向かう先は東京駅。その時間僅か18分。

新幹線好きなら2日連続で新幹線に乗れて嬉しいのだろうが、「なんで2日連続で新幹線乗らないといけないのだろう」と疑問が浮かぶ。新幹線は日常ではなく、非日常なので、2日連続で非日常を経験するのはなんだか疲れる。

東京駅到着後、丸ノ内南口改札を出る。すぐ左にあるドアが目的地だ。「え?こんな近いの?」と驚いた先は、東京ステーションホテル。結構な雨だったが、全く濡れずに移動出来たのは大変ありがたい。

クロークで荷物を預けロビーに行くと知ってる顔がいる。「あれ?まだ始まってないんだね。間に合って良かったわ」

するとバーベキューを一緒にやったY君が「てる!この歳になって結婚式の集合時間に遅刻するなんてクソだぞ!」と、僕と同じように遅刻するかもと焦っていたY君に会ってそうそう言われる。この場面を役者に演じてもらったら、クソみたいなドラマが出来そうだなと想像する。

Y君の言っていることはごもっともであり、前日全く準備をしておらず、朝起きて二日酔いのまま、Yシャツにアイロンをかけ、チーフが見つからず10分以上探し、準備していたご主義用の3枚のピン札を確認すると、なんと1万円2枚と五千円1枚とだったいう衝撃のミスがあり、コンビニで1万円札を多めに降ろしご主義袋を買い、新幹線車内で一番綺麗な1万円を選びご主義袋に入れ、筆ペンで書く。ということをしている大人はクソだと思っている。

その一方で「もうさ、この歳になると結婚式に慣れ過ぎているんだよ。しかも二日酔いだし、なので許して」とY君のコメントを肯定せず僕独自の勝手な理由をつけて、遅刻の言い訳をした。

今回の結婚式はバーベキューメンバーに加えて、先輩1人と同期1人。「皆で会うのはいつ振りだっけ?」と話していると、バーベキュー振りだから3年振りということが分かった。そこで記憶がフラッシュバックした。Y君のマンションでバーベキューをしたこと、夏で暑かったこと、厚切り牛タンが美味かったこと、最後に余った1000円札争奪じゃんけん大会をして、T君ジュニアが勝利するという綺麗な終わり方をしたこと、そしてS君がベンツを買ったこと。

「ベンツだ!」僕は興奮を抑えることが出来ず大声で叫んでしまった。「そうだベンツだよ!Sがベンツを買って俺がすぐに彼女出来るよって言って、そして今日結婚式なんだよ!本当にSはベンツ買ったから結婚することになったんだ!」

S君は彼女無しからベンツを買い、8歳下のお嫁さんをゲットすることが出来たのだ。まさか言った通りになると思っていなかったのでびっくりしたし嬉しかった。

そのストーリーを話すと、「てるもベンツ買えよ」と速攻で言われたことはい言うまでもない。

さらに同期達は僕が彼女無しと聞くと、「てるはそもそも結婚する気ないんでしょ?」「てるりんは多分結婚できないよ」「結婚不適合者だと思うよ」「もし結婚出来たとしても変な人だろうね」と辛辣な言葉を浴びせて来る。

もし僕が幽遊白書の刃霧要だったら、全員に指指紋十字班かけてやって、テーブルにあるナイフとフォークを飛ばしてぶち殺してやるのだが、そんな能力はないので、「違うんだよ、俺もやっと結婚願望が出来たんだよ。だから紹介して下さい」と優しく否定して逆にお願いをした。「いやー、それでもてるは無理だと思うよ」と言って来た時には、実際にナイフをぶん投げてやろうと思ったが、全ては僕が独身なのだから仕方ない。

独身というのは恐ろしく、30代後半独身だとだんだんと人間性がひん曲がって来てしまう。S君はベンツを買い結婚をしたのだが、結婚報告は同期のグループLINEで行われた。(その時はベンツ購入のことは覚えていない)。本来結婚報告はめでたく嬉しいことなのだが「は?Sが結婚した!また取り残された」とまず独身ということを痛感することになる。さらにS君の報告後、「ごめん、実は俺も結婚してたんだ」とまさかのM君の結婚報告。

僕はショックで仕方なかった。学生時代はS君とM君よりも結婚が遅くなるとは夢にも思っていなかった。もちろん社会人になっても同様だ。それよりも、これで同期の中で独身は僕だけになってしまった。もう僕と一緒に遊んでくれる人はいないのだ。

このように同期の結婚報告を受けると、まずプラスよりもマイナスの感情になってしまう。さらにひん曲がってくると、同い年の友人が離婚したとなると仲間が戻ってきた感じがして嬉しくて仕方ないのだ。「この感情は人としてよろしくないな」と、まだ実感出来ているうちに僕は結婚しないと、いつか人間性ひん曲がり独身男として、負の感情に覆われていく。その負のオーラから周りの人間は離れていき、どんどん孤独感を強めてしまう。FUJIWARAフジモンのように「独身やからや!」と関係ないことも独身だからという理由付けをしてしまうようになったら、人間性ひん曲がり独身男の完成となり、僕は宝くじが当たったとしても絶対に結婚出来ない男となってしまうのだ。

今、書きながらも僕の人間性がひん曲がっていく姿が明確にイメージ出来るのが怖い。言霊を信じており、このまま書き続けるとそうなってしまいそうなので、このへんでやめておこう。

ちなみにS君の結婚式は、僕が二日酔いで乾杯のシャンパン以降ノンアルコールしか飲まなかったこと以外は、誠実さが溢れる素晴らしい式で、ハッピーな気持ちをわけてもらった。今気付いたが僕には誠実さも足りないような気がする…。

結婚式数日後、実家で両親と食事をしていると、「誰の結婚式に行って来たの?」と聞かれた。妹2人は結婚して子供も2人ずついて実家を出ているが、長男の僕は実家住まいなのだ。

「30代後半独身彼女無し実家住まい」なかなかのパワーワード過ぎて書いていて目眩がしてくる。

S君の結婚式だったこと、もう僕しか独身がいなくなったこと、ベンツを買ったら本当に結婚出来たこと。を話すと、「じゃあ、雄太もベンツ買いなさいよ」と母親からさらりと言われた。

「か、金はあるから買えるけどね…!」としか言い返せなかった僕の婚期はまだまだ先になりそうだ。




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