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昼と夜

僕は自堕落な人間なので、例えば長期休暇なんかはしょっちゅう昼夜逆転の生活をしてしまう。

とは言っても、夜中なんてそんなにすることはない。スマホいじって、ゲームやって、漫画読んで、気が向いたら曲作って、それ以上のことはほとんどしない、というか、できない。

にもかかわらず、何故か昼夜逆転の生活は止まらない。それはひとえに、僕は夜中が大好きだからだろう。

夜中とは実に不思議な時間だ。

僕が田舎住まいだからということもあるかもしれないが、多くの人が寝静まり、道に車はほとんど走らず、店はシャッターを下ろし、昼間とはまるで別世界のように静かな空間が広がる。

明かりの灯る部屋の中にいても、昼と夜の違いは、やはり如実に感じる。カーテンと窓を隔てた向こう側の世界は、昼間の喧騒よりも夜中の静寂をより強く伝えてくるように感じる。それは物理的な意味はもちろんのこと、精神的な意味でも。

そして僕は、夜中のそれこそが世界の本当の表情だと感じている。昼は人通りも多いし、車もたくさん走る。店は賑わい、街は喧騒に包まれている。昼の街には情報が溢れすぎているのだ。しかし、夜中の街では、これらの情報は極限までカットされている。

夜中の街にはただ街だけが存在する。

僕はそれがたまらなく心地良いのだ。情報過多な昼の街は、僕の心には些か荷が重い。ただ散歩をするだけで多くの情報が僕の中に流れ込んでくる。

もちろん、それを悪いこととは言わない。情報に浸されて満たされる瞬間というのも確かにある。しかし、本来的に僕は凪を好んでいるのだ。こちらから干渉しない限り、向こうからも干渉してこない夜中の方が、少しばかり居心地が良い。

思えばこれまで作ってきた曲も、夜中にできたものの方が僕の内面世界が色濃く現れているように感じる。巧拙の話ではない。あくまで感覚的な話だ。

これからも、夜中は僕を救ってくれるだろう。夜中は決して何も語らないし、手を差し伸べてくれるでもない。しかしその冷たく、静かな無機質さが、僕にとっては何よりも優しい。

夜中、僕は誰にも、何にも侵されない。僕はただ純粋に僕自身と向き合う事ができる。それが、きっとたまらなく夜中が好きな唯一の理由なのだろう。

もっとも、夜更かしし過ぎると翌日の仕事に影響を及ぼしてしまうことは、少し考えものでは、ある。

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