ダクトテープ・バクスター:冷血の方程式

「クワイド・ラスという男を知っているか?」

 エアロックのレバーに手をかけ、俺は言った。モニターの中で、ダクトテープに両手両脚を縛られた男がうめく。

「……聞いたこともねぇ。ま、知ってても教えてやらねぇがな」

 男はその銀歯を見せ笑った。俺はちらりと傍らを見る。そこには男の武器であるモンキーレンチ――無重力カポエラとの複合攻撃は手強かったが、もはや俺の勝利は覆らない。

「まぁ、それもそうだ」

 俺は時間を確認する。決闘のリミットはあと10分――それを過ぎれば、目的地の宇宙港に辿り着けなくなる。この宇宙闘船には、1.5人分の燃料と空気しか載せていないのだ。

 生き残るのは常に一人。

 それがこの、冷たい方程式血闘法《コールド・ブラッド・イクエイジョン》の唯一のルールだ。

「それじゃあな、兄弟」

「事象の地平の向こう側で待ってるぜ、クソ野郎のダクトテープ・バクスター!」

 捨て台詞を聞きながら、俺はレバーを引き――俺の対戦相手は宇宙空間へ放り出されていった。

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞 #小説 #SF

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