著作紹介(1)地場教育
「これからの超スマート社会では地方部にこそ幸福はある」
私はそう考えている。
この本の特徴の一つは「寄せ集めのチーム」によって創られたということだ。本書には特定分野の研究者だけではなく、医学、デザイン思考、特別支援、人文地理学といった多様な分野の研究者に加えて、学校内外で静岡県をベースに教育に関係する活動している17名の著者によって執筆されたのが本書だ。実はこうした試みは珍しいことで、執筆者もちょっと風変わりな人たちだ(ゴメンナサイ)。
チームは寄せ集めですがあてがい扶持で原稿を執筆してもらったわけではない。2018年度から3年間にわたる、本書制作の過程では大学内外の参加者も含めて何十回かの研究会を開いた他、合宿研究会をしたり、視察に出かけたり、講師を招聘して話を聞いたりといったことを繰り返した。
地域のことについて語るなら地元の出版社で・・・ということで静岡新聞社さんに出してもらうことにした。
地場教育 此処から未来へ|静岡新聞アットエス (at-s.com)
本書の第一部では静岡県を中心に、地域と教育の現状を分析して、その課題をまとめ、地域を場とした教育の考え方についてまとめている。
第二部の9つの章では、いずれも冒頭で事例を紹介し、その事例をたたき台として、教育のあり方を論じるように工夫している。事例の各執筆者には、キレイな完成形の実践でなく、それが創られる過程で試行錯誤する姿もできるだけ率直に記してもらうようにした。
第二部は「一、『豊かさ』の章」、「二、『繋がり』の章」・・・というように、人の幸福に欠かせない9つの価値を掲げ、教育という営みを介して各地域でそれらの価値をどのように実現できるかについて、各章の執筆者には挑戦してもらった。
地域の教育について様々な人が集い、膝をつき合わせて語り合う中で、地域が「場」になり、そしてその「場」が人を育てる・・・それがこの本が創られてきた制作風景であり、またタイトル「地場教育」に込められた思いだ。