【JOIN×テラドローン対談(前編)】決め手は「実績」と「信用」。官民ファンドが創業間もないスタートアップへの支援に乗り出した背景とは
こんにちは、テラドローン広報チーム(@TerraDrone_JP)です。
今回、テラドローンがUTM(Unmanned Aircraft Systems Traffic Management:ドローン運航管理システム)の開発を手がけるベルギーのUniflyを子会社化したことに伴い、2021年にテラドローンを通じてUniflyに出資している海外交通・都市開発事業支援機構(以下、「JOIN」)でUniflyの支援を担当している宗村奈保さんを迎えて対談を実施しました。
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国土交通省傘下の官民ファンドであるJOINが、なぜ、メインである都市開発や海外交通関連の案件とは異なるドローン運航管理システムを展開するスタートアップへの支援を決めたのか。そこには、前例がないがゆえにいくつもの障壁が立ちはだかっていました。
2回にわたりお届けする対談のうち、前編となる今回はJOINがUniflyへの支援を決めるまでの経緯を中心にトークをお送りします。
ーまずはそれぞれの会社に関する紹介をお願いします
植野:UniflyはUTMと呼ばれるドローンや空飛ぶクルマの運航管理システムを手がけています。自動車でいえば信号機や道路標識といった役割のものをプラットフォームとして提供してきました。スペイン、ベルギー、ドイツ、カナダ、サウジアラビアなど世界各国に展開し、UTMの分野で世界No.1と言っても差し支えありません。
創業は2015年ですが、テラドローンは2016年11月という早期にUniflyに出資しています。最初は4分の1ほどの株式保有比率でしたが、今回51%まで引き上げて子会社化しました。
宗村:JOINは国土交通省を監督官庁とする海外インフラ投資に特化した官民ファンドです。2014年に設立し、日本企業が海外進出する際のリスクマネーを提供してきました。2023年6月時点では、累計で40件の案件を展開しており、出資金は計2464億円です。海外の交通や都市開発案件の支援に加え「交通事業を支援する事業」や「都市開発を支援する事業」への支援といった周辺分野も含め、海外で展開する対象事業であれば地域の要件はなく支援検討ができる体制となっています。
ーそもそも国交省傘下の官民ファンドがテラドローンに注目した理由とは?
宗村:最初のテラドローン側とのやり取りは2020年12月でした。政府系の銀行である国際協力銀行( JBIC:Japan Bank for International Cooperation)出身の担当者がテラドローンの存在を知っており、徳重社長にアプローチしたのがきっかけです。それまでJOINの業務は空港や鉄道、港湾などに関わる「THE インフラ案件」への投資が中心でした。設立5年後の2019年に、近年の世界動向を踏まえた国交省の見直しにおいて、インフラ周辺分野を含めた様々な事業分野への支援にも力を入れていく方針となりました。当時はドローンの活用方法は建設や都市開発を中心に考えられていたため、徳重社長にお会いした時もそのような話が出てくると思っていました。ただ、Uniflyの買収に関する話題が上がり、「運航管理システム」の交通という観点からJOINが支援できるのではとなりました。
ーUniflyが投資できるレベルにあるかをどう判断していきましたか?
宗村:JOINで投資判断をするまでには3つの通過点があります。1つ目は、社内・社外取締役で構成される事業委員会でデューデリジェンス(DD)を開始することです。2つ目は、実際にDDを実施すること。その結果を基に3つ目は、事業委員会での支援決定や国土交通大臣の認可を取るプロセスがあります。
この3つのプロセスは早ければ3~4か月で完了しますが、Uniflyの案件で国土交通大臣認可を取得できたのが2022年3月でしたので、最初に徳重社長と話をしてからUniflyの可能性を見出し、JOIN内外の説明を終えるまでに1年以上を要しました。
ーJOINがUnifly支援を決断するまでの道のりについて教えてください
宗村:支援を決断するまでにクリアしなくてはいけなかった点は大きく3つあります。1つ目は、Uniflyの事業がJOINの投資対象の枠に入るのかといったJOIN設立法上の確認に時間を要したことです。この点をクリアできたのは、Uniflyがやっていることがドローン自体ではなく「運航管理システム」だったからです。ドローンが空を飛び回る世界では、飛行機やヘリコプターなどとの衝突や空港・港等のインフラ設備への侵入も起こりえます。人が乗る航空機の安全・安心な運航や空港・港の運営にはドローンの管理が必要であり、我々の支援対象であると整理しました。
植野:ドローン業界は2010年代から産業が大きくなってきたものの、まだ黎明期で問題が山積みです。2018年にイギリスのガトウィック空港でドローンが侵入して滑走路が数日間閉鎖される事件がありました。空のインフラがないと今後ドローンが増えた時に、死傷者が出るような「暗い未来」が訪れる可能性があります。明るい未来を作るためにも、空のインフラづくりに向けたJOINの支援は非常に意義があると感じています。
ーテラドローンという会社自体に対してはどのような認識でしたか?
宗村:クリアしなくてはいけなかった点の2点目がまさにテラドローンという会社自体に関することでした。JOIN内外の説明の過程でテラドローンの企業としての信用力についても問われました。JOINは過去にもスタートアップの支援実績はありますが、いずれもレイターのステージにある会社で株主には有名な大企業が数多く名を連ねていました。それに比べると、当時のテラドローンの株主構成は徳重社長を主体にINPEX(元国際石油開発帝石)などごく少数で、当初会社組織を見た限りでは、まだ「この会社って徳重社長がメインの会社だよね」といった印象でした。そこでさまざまな方へのヒアリングや、徳重社長への直接面談、信用調査などを実施して「徳重社長は蓋然性の高いビジネスのアイデアを持って事業展開している」との信頼性を持てるようになりました。同時に、テラドローンが三井物産など他の方面からも資金調達を実施したことも、テラドローンが着実に成長するとの判断につながりました。
植野:JOINが出資を決めたタイミングでは、テラドローンはまだアーリーステージのスタートアップでしたのでJOIN側がシビアになるのも理解できます。その後、三井物産などの事業会社やVCなどからシリーズBのタイミングで資金調達ができ、最近ではサウジアラビアの国有石油会社であるアラムコのVCからも出資を受けました。現在は組織も事業も拡大しており、当時と比べると信頼を重ね周囲に安心してもらえるようになったと思います。
ー最終的にUniflyへの支援に至った決め手は?
宗村:スタートアップ支援、テラドローンの信用力について考慮し、3点目としてようやくUnifly自体についての詳細なDDを行いました。最も我々が評価したのは、ドイツ政府傘下のDFS(ドイツの航空管制サービスプロバイダー)が出資提携しているなどの実績を通じて成長していく姿がイメージできたところが大きかったです。
植野:DFSは2018年に1300万ユーロをUniflyに出資し、現在もテラドローンに次ぐ第2筆頭株主となっています。UniflyからDFSには2017年から製品を納め、両社は非常に深いつながりがあります。他にもベルギーの航空管制サービスプロバイダーであるskeyesにもシステムを提供し、カナダのNAV CANADAとは10年間の戦略的パートナーシップを結ぶなど、各国のANSP(航空管制サービスプロバイダー)と関係性を築いてきたことは、JOINが支援を判断する要因になったと思っています。
まとめ
アーリーステージでのスタートアップへの支援実績がなかったJOINにとって、Uniflyへの投資判断は未知の領域でした。官民ファンドとして多方面に亘る説明責任もあり、慎重な議論を何度も重ねた上で支援決定に至ったことが窺い知れます。
支援決定から約1年半が経過した現在、当初の目的や期待感に対してUniflyは、どのような進化や変化があったのでしょうか。次回は、JOIN側による現状でのUniflyやテラドローンに対する印象や今後への期待感を中心とした模様をお届けします。
最後に
テラドローンはUniflyの子会社化を発表いたしました。グローバルでは空の革命が進行中で、テラドローンも積極的にグローバルな空のインフラ構築に取り組んでいきます。しかし、このミッションを実現するためには、共に進むメンバーが必要不可欠です。少しでもテラドローンのこと興味がある方、ぜひカジュアル面談でお話させてください。
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