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コラム 『マーケットの行方』  2022/11/14

初めまして。
てらす証券アドバイザーズ株式会社の代表取締役 満平隆志です。
定期的に金融マーケット情報を発信していきますのでよろしくお願いいたします。

日米の金利差やエネルギー価格の高騰により円安と貿易収支の悪化が続いています。日米間の金利差が拡大し、円からドルへの(投機的資金を含めた)資金移動が増大することでドル高円安の構造が説明されていますが、同時に、高額な資源輸入や大半を輸入するスマホ、及び家電製品などの輸入代金の高騰により本邦企業によるドル買い需要が拡大するなどで実需のドル買いが大幅に増加していることにも注意が必要です。
つまり、資源高が続く間は円高に戻り辛い構造となります
経常収支の黒字幅が小さくなっていることから、いずれは経常収支が赤字になると言った思惑も重なることでも円が売られ易くなっているのでしょう。

経常収支は大きく、貿易収支、サービス収支、所得収支の3つから構成されます。

貿易収支は「輸出-輸入」で算出されますが、日本は資源の大半を輸入に頼っていることから、昨年来の資源高により支払額が倍増しています。同時に円安により海外生産品の輸入にも円安分だけ支払額が増えることで、ドルへの買い需要が増加します。

サービス収支は主に旅行収支と捉えれば分かり易いです。コロナ禍以前には外人旅行客による日本国内での多額の消費がサービス収支の黒字となっていました。

所得収支は海外への工場移転などへの投資や、そこから得られる利益が国内に還流する事や、海外有価証券へ投資された資産などから得られる利益の総額になります。

昨年からの大幅な経常収支の縮小は主に資源高と円安の双方の相乗効果となっており、当面は現在の140円程度のドル円相場が続きそうな気配ですが、資源価格が治まってくれば決済用のドル買いが減少することで無茶な円安には向かい辛いと考えられます。

天然ガスに比べて輸送し易い原油については、特段のアクシデントが無い限り米国他の増産や備蓄取り崩し、一方で世界的な需要減退などにより100ドルを大きく超える価格への高騰は避けられる見通しであり、投機資金の後退と共にウクライナ侵攻前の水準へと落ちついてきました。とは言え、当面は資源高が続くとの想定と短期的な投機資金の動向を踏まえ、1ドル140円を中心とした値動きを想定しておきたいところです。

中国でのロックダウンによる供給不足を発端としたコストプッシュインフレについては、FRBも利上げでは対応に限界があることを認識しているはずであり、今後の政策対応が注視されます。少なくとも円安危機を煽るようなエコノミストの発言には気を付けねばなりません。

株式市場については、仮に米国利上げが減速して株価が反発する場面でも一過性の可能性が高いため安易に強気にはなれません。資源価格が高止まりしている場合には企業業績に下押し圧力が続きますため、来年以降の企業業績には注意が必要です。資源価格が高止まる場合には株価に業績悪化を織り込む動きが出てくると予想されるため、個別企業毎の影響度合いを踏まえた検討が必要になります。

資源価格の高止まりや主要国の利上げが懸念される局面では、中長期において昨年までのようなトレンドが出来辛いマーケットが続くと予想されるとともに、今後の米国金利の不透明感によっても株式市場の動向は読み辛い時期に入ったと言えます。

当面の日経平均株価は今期EPS予想を2,100円程としてPER13倍=27,300円を中心に上下1,000円程度で推移すると考えています。但し、グローバルマクロ・ファンドの年内の決済(ポジション調整を含む)が月内に済めば、年末以降は大幅な下落を懸念する必要は無いと考えています。

また、来年度についても海外景気の鈍化の影響を受けるため、国内企業の業績にも期待できません。特に欧州経済はエネルギー価格の高騰が続くことで厳しい状況が予想されることから世界景気への圧迫要因となるはずです。

個別銘柄については3月期決算企業の中間決算が概ね好調であったことから、下期の収益増が織り込まれる企業も出てくる見込みであり、年末にかけては上方修正に期待した買いが増える可能性も高い事を視野に入れておく必要があります。

注意点は、国内製造業については資源高の影響とユーザーとの価格交渉を踏まえ、年度決算ギリギリまでコンサバ予想を維持する傾向があるため、少なくとも来年1月下旬からの第三四半期決算発表までは上方修正などには余り期待できないところです。

個別銘柄の選定候補としては、製品価格の上昇や円安がストレートに効いてくる輸出型企業や、世界シェアの高い製品を持つ企業群であり、四半期決算の進捗率が高かったにもかかわらず通期の上方修正が控えめだった企業、及び修正自体をしなかった企業を選ぶのが良いかと思われます。

短期的には12月決算企業の中で来期も伸長しそうな企業が狙われると思われます。



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