見出し画像

#1409 「見通し」のある授業の弊害~教師が「きっかけ」を与えることの重要性~

今回の記事は、前回の記事と合わせての「二部作」である。

ぜひ、前回の記事も合わせて読んでいただきたい。

前回の記事では、子どもたちに学習の「見通し」を持たせることの重要性を述べた。

今回は、それとは矛盾した内容の記事を書いていく。

これからのVUCAの時代は、先行き不透明であり、文字通り「見通し」が持てないことが多くなっていく。

問題解決の「見通し」が持てず、試行錯誤する経験が多くなるだろう。

そのような時代において、「見通し」を明確に持って学んできた人間は、とたんに「見通し」が持てなくなることで、思考が混乱してしまうことになる。

そして、問題解決に至る思考に行き詰まり、機能不全に陥ってしまう。

それは、「試行錯誤」の経験がないからである。

だとしたら、学校教育において、「見通し」を持たずに、試行錯誤しながら問題解決をする経験も重要となってくるのだ。

今回は、前回の記事と矛盾した形で、「見通し」がなく「試行錯誤」のある授業について述べていきたい。

今回の記事においても、重要となるのが「問い」である。

教師からの「発問」だけで進む授業は、教師への依存心を生む。

子どもたちは「教師がいないと学べない」人間になってしまう。

そこで、教師は「きっかけ」を与えるだけに留めることが必要となる。

過去の記事でも書いたように「きっかけとなる発問」「触発的発問」を意識するのである。↓

#754 子どもの問いを生み出す「きっかけ」としての発問|眼鏡先生 (note.com)

#1024 触発的発問|眼鏡先生 (note.com)

#1085 子どもが問えるように問う|眼鏡先生 (note.com)

また、発問でなくても、「問題提示」「資料提示」でもよいのだ。

そのような「問題」「資料」が、思考する「きっかけ」となり、「問い」を生むようになる。

「問い」が生成されれば、あとは子どもたちがそれを解決するために主体的に学んでいく。

そこには「学習の流れ」「見通し」は存在しない。

子どもたちの間で生まれた「問い」であるので、「見通し」のない中で、解決のために試行錯誤するようになる。

もちろん、「協働」「対話」「議論」が必然的に行われるだろう。

このように、「見通し」はないが、「試行錯誤」のある授業をつくることができるのだ。

そのためには、子どもたちに生まれる「問い」が重要となる。

そして、その「問い」を生成するための「きっかけ」が必要となる。

それは「発問」「問題」「資料」などである。

それらは、教師が事前に用意したものなので、「教師発」かもしれない。

しかし、その「きっかけ」から「子ども発の問い」が生まれれば、「試行錯誤」のある問題解決型の授業となるのだ。

今回の記事は、前回の記事と矛盾しているように見えるが、否定しているわけではない。

「見通しのある授業」も「試行錯誤する授業」も、どちらも重要なのである。

それらを二項対立で考えるのでなく、必要に応じて使い分けることが必要なのだ。

「見通しのある授業」は、やるべきことが決まっているので、「個別最適な学び」が向いているだろう。

一方、「試行錯誤する授業」は、自力解決が難しいので、「協働的な学び」が向いているだろう。

前者は、「知識・技能」を効率よく習得することに向いているだろう。

後者は、「思考力・判断力・表現力」を粘り強く発揮することに向いているだろう。

また前者は、「演繹的アプローチ」と呼べる。

一方後者は、「帰納的アプローチ」と呼べる。

さらに前者は、「自由進度学習」「自己調整学習」などと相性がよい。

一方後者は、「協同学習」『学び合い』などと相性がよい。

両者は、その様相が異なるので、教科や単元の種類によって、適性が変わってくるのである。

このように、どちらか一方に偏るのではなく、バランスよく位置付けることが必要となる。

しかし、忘れてはいけないことがある。

それはどちらも「教師発」であるということだ。

「見通しのある授業」は、学習計画を教師から提示する。

また、子どもに学習計画を立案してもらう場合でも、教師が教材を用意する。

一方の「試行錯誤する授業」においても、教師が「発問」「問題」「資料」を用意する。

全て「教師発」なのである。

これは教師が「教材研究をしなければならない」ことを意味する。

それは、学習指導要領を把握している「教師」だからできることなのである。

この本質は変わらないのである。

これから授業を創る際は、「見通しのある授業」と「試行錯誤する授業」を使い分け、どちらも意識するようにしていきたい。

そして、どちらか一方の授業スタイルを神格化したり、全否定したりしないようにしたい。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?