#1864 発達が気になる子への指導・支援
今回は、渡辺道治氏の『発達が気になる子の教え方 THE BEST』からの学びを整理していく。
・不適応行動に相対したときの入口
➀「困ったな」と問題児扱いする
②「一体なぜこの行動をしているのか」と考える
※②が重要である。
※「行動」の水面下には「背景要因」が存在する。
※不適応行動を起こす子どもも、認められたい、ほめられたい。
・特別支援教育の学びを血肉化し、瞬間で反応できるまで技能化させる。
・不適応行動はどのように発生するのか
➀感覚:世の中を感じる
②認知:意味づけをする
③行動:反応する
※「認知」「感情」「行動」という見方もある。
※➀「感覚」の凸凹がある。
※②「認知」の歪みがある。
※③「行動」のレパートリーが少ない。
・すべての行動は4つに分類できる
➀逃避行動
②要求行動
③注意喚起行動
④自己刺激行動(自動強化行動)
※MAS(Motivation Assessment Scale)
・逃避行動への効果的な対応法
➀起きた際の条件を探る
②環境調整を行う
③場にいること、参加すること自体の価値を増やす
※トークンエコノミー
・要求行動への効果的な対応法
➀正しい要求の仕方を教える
②できたときはほめ、できなかったときは確認する
※誤った要求行動には取り合わない。
③「消去バースト」は仕方ないことなので、じっくり向き合う
・注意喚起行動への効果的な対応法
➀誤った注目の集め方のときは低刺激で極力反応しない
※ポジティブノーリアクション(意図的な無視)
②正しい形で注意喚起ができたときは強刺激で強化する
③日頃から多めに声をかけて、信頼関係をつくる
・自己刺激行動への効果的な対応法
➀学習作業にバリエーションをもたせる
②代替刺激を入れる道を探る
③教師の対応に頼らずともできる刺激の入力方法を教える
・行動を数える・増減を記録する
➀数えられる行動を見取る(観察可能、再現可能)
②ABC分析を活用する
・最高の先行条件(信頼・尊敬される先生の特徴)
➀ほめ上手:喜び上手、驚き上手
②話が短い:端的ですっきりしている
※ワーキングメモリに配慮する。
③叱るときに叱ってくれる
④言葉のキャッチボールをよくしている:言葉のラリー
※無変化状態でも関わる。
⑤明るい
・セロトニン5(ほほはさみ)
➀ほめる(目)
②微笑む(歯)
③話しかける(時間帯・時期)
④触る(肩や背中をタッチ)
⑤見つめる(目線を止める)
→安心感や癒しを与える
・ドーパミン5(うみもこへ)
➀運動を取り入れる
②見通しをもたせる
③目的を伝える
④高得点でほめる
⑤変化をつける
→ワクワク・ウキウキする
・「ほめる」「叱る」は、子どもが何らかの変化を起こしたときにする「肥料」として関わりである。無変化状態での関わり、全ての土台(土壌)となる関わりは「認める」ことである。
・人を動かす唯一の方法:自ら動きたくなる気持ちを起こさせること
➀人格と行為を分ける
②「もったいない」「めずらしい」「待っているよ」
③法律などのルールを教える
【ケーススタディ】
・発達に課題のある子とその周りの子への対応
➀以前の自分と比べる「縦の変化」を重視させる
②具体的に教えてほめる(習慣化するまで3週間かかる)
③他者評価を変えていく(みんなに聞く、学級通信で紹介する)
・不規則発言への対応
➀ポジティブノーリアクション
②巻き込み感:テンポとリズム、位置エネルギー、視線と表情
③ノンバーバル対応
・関係が崩れている子への対応
➀工夫してほめる:間接的、薄めて、文字で、ノンバーバルで
②知的で楽しい授業
③大切にしているものを見つける(関心事に関心を寄せる)
・癇癪を起こす子・不貞腐れる子への対応
➀落ち着いているときにふさわしい行動スキルを教える
②ダメなときは、ポジティブノーリアクション
③全体指示の中で自然とその子を動かす
④手招きをして指示を出す
⑤タイムアウト
⑥トークンエコノミー
⑦できたときには格別の強刺激を入れる
・休み時間のトラブル対応
➀望ましい行動スキルを前もって教えて、できたらほめる
②コミックトーク
③憧れを抱かせる
・専科の授業で荒れるときの対応
➀分人主義を前提にする
②先生が授業の質を変える
③内省を促す
④自己認知向上質問をする
※「今度からはどんなふうにしていきたい?」
⑤挑戦するコースを選択させる
⑥強刺激でほめる
⑦お膳立てしても、それをできるだけ見せない
・ひどい言葉を使った落書きへの対応
➀どういう対応が望ましいのかを共有する
②正しい行動スキルを教えて、できたらほめる
③「器物破損」であるとルールを伝える
④モラルのある人に憧れを抱かせる
※ルール、マナー、モラルの違い
・衝動性や攻撃性のある子への対応
➀世の中のルールを伝える
②「成長している」と線のほめ言葉を使う
③代替行動とトークンエコノミー
④当事者研究、「イライラくん」と名付ける
※客観視させる。
⑤怒りの段階を可視化する、対処法を教える
・意図的に授業を妨害する子への対応
※反抗挑戦性障害
➀ドーパミン5を使った面白い授業
②ほめ方を工夫する
③望ましい行動スキルを前もって伝える
④タイムアウト
⑤セーフラインを確認する
⑥代替行動を練習する
⑦周りの子へ指導する(個別に)
・複数の学級崩壊クラス・学年への対応
➀トップが動く
②仕組みをつくる
③長い時間、指導しない
④自分の行動を言語化させる、内省させる
⑤記録をとる
⑥セーフラインや代替行動を示す
⑦できたら強刺激でほめる
⑧授業を改善する
・学校・教室に行き渋る子への対応
➀家にいても退屈な状態にする
※アミューズメントパーク状態をなくす。
②トークンエコノミー(さじ加減が重要)
③目先を変える(「左足から入る」など)
・指導に反発する子への対応
➀ポジティブノーリアクション
②授業を知的で面白いものにする
③低刺激で手招きする(カウンター対策)
④選択肢を提示して選ばせる
⑤教師の説明を減らして、子どもの作業を増やす
⑥タイムアウトを予告しておく
⑦心が落ち着いたら授業に戻らせる
・授業を抜け出て好き放題する子への対応
➀授業を改善する
②学校に来る目的を教える
③タイムアウトを予告する
④個別最適な課題の量にする
⑤トークンエコノミー
・衝動性が強く立ち歩く子への対応
➀望ましい行動スキルを前もって伝える
②快刺激が入力されるよう環境調整をする
※スタンディングシートも有効
③ドーパミン5を活用する
④代替行動を提案する
・無気力な子への対応
➀朝食を食べているかどうか確認する
②ファーストステップで「作業興奮」を起こさせる
※少ない課題量を設定する。
③スモールステップで、できたらほめる
・関係が崩れている子への対応
➀指導の重要度で分ける
②やってはいけないことの世の中のルールを伝える
③「親に来てもらうことになる」と予告する
④タイムアウトを予告する
⑤周りの子には「不公平ではない」ことを伝える
※応援すること、よい姿は教えてほしいことを伝える。
⑥認める、ほめる、励ますという強化を使う
・耳元で大きな声を出して楽しんでしまう子への対応
➀「騒音」はルール違反であることを伝える
②できたときにほめて強化する
・書くのを嫌がる子への対応
➀スモールステップでほめる
②筆記用具を代替する
③集中できるよう環境調整をする
④選択肢を駆使し、手応えのあったものを引っ張り上げる
・注意に過敏に反応する子への対応
➀子ども同士では注意させない(大人の仕事である)
②善悪ではなく、「損得」で教える
③怒りのピークになる前の代替行動を提案する
④成長を期待していること、お祝いしたいことを伝える
・面白いことに反応していつまでも笑い続ける子どもたちへの対応
➀授業に「無駄な空白の時間」をつくらない(休符には意味がある)
②学習活動を被せる
③「時間を無駄にしていること」を伝える
④目指すべき行動指針を示す(死人テストを乗り越える指示)
・癇癪を起こしてフリーズする子への対応
➀怒りの度合いを可視化する、対処法を教える
②癇癪を起してもポジティブノーリアクション
③できたら強刺激でほめる
④周りの子どもにも説明する(応援してほしい)
・特定の物事に熱中しすぎてしまう子への対応
➀生活に不具合が起きていないのなら、対応しなくていい
②熱中しているものを通してコミュニケーションをとる
・衛生面に課題のある子への対応
➀成長や努力を引き出し、強化する
②教室をシングルスペース構造にする
③家庭に「その子のよさ」を伝える
④家庭に本題をやんわりと伝える
⑤一緒に洗う練習をする
・初日から反発・反抗してくる可能性が高い子への対応
➀パーソナルスペースを活用し、近づいて声をかける
②注意や叱責は絶対にしない
③ほめることができるように仕組んでおく
④本人も保護者もポジティブな気持ちにさせる
※「教師」への歪んだ認知を変えさせる。
・「タイムアウト」の危険性も知っておく。不適応行動を減少させていくことと、適応行動を増加させていくことを同時並行的に進めることが重要である。
以上が書籍からの学びである。
これからの特別支援対応にぜひとも活用していきたい。