見出し画像

「俺たち4人は切っても切れない家族だ」Sick of It All 物語③

2024年1月に7年ぶりの来日ツアーを開催するNew York Hardcoreの重鎮”Sick of It All”。来日直前のこのタイミングで、彼らがコロナ禍に出版した洋書、メンバーのKoller兄弟による正にSOIA物語な『The Blood and the Sweat: The Story of Sick of It All's Koller Brothers』をGETした、現在は通訳の仕事などをしている元nimベースのハヤトが、良かったらコレ和訳してみない?と話をくれたのが今回のキッカケです。

SOIA物語①SOIA物語②をチェックしてくれた皆さんありがとうございます!まだ読んでない方も是非です。分厚い本の、ほんの僅かな部分ではありますが、今回がひとまずラストの3回目になります。今回の話も初期の方の話です。ハードコアシーンの中ではビッグなバンドとして成長を遂げていく彼らですが、それゆえの葛藤や悩みが主な焦点となっています。ちなみに本はAmazonなどで購入可能。これを読んで来日ツアーに足を運んでいただけたら言うことなしですね!ではラスト宜しくお願い致します!

和訳:Hayato(PMA ENGLISH LAB)
編集・校正:Erolin


Part IV
ROAD LESS TRAVELED

ー自分の人生を生きろ
ちがう道をいく覚悟を
押し進め証を残せ
恐れるべきは時の経過のみー

(Road less traveledより引用)

1. "で、これからどうするつもりだ?"

Pete(弟、Gt.)
SOIAを組んだときはバンドの始まりも終わりも考えたことなんてなかった。その瞬間瞬間に物事が起こっている感じさ。

Lou(兄、Vo.)
1989年あたりだったかな、「Blood, Sweat and No Tears」が発売される頃にBad Brainsとの西海岸ツアーのオファーを貰ったんだ。でもその直前に、母親から「フランスにいる叔父さんが農場の手伝いに来ないか、農場で4日間働いて、週末はパリのど真ん中のアパートを使って良いよって、どう?」と言われていたんだよ。

若者にとってこれ以上の条件なんてないだろ?Peteとマジかよ!めちゃくちゃ楽しそうじゃん!ってときに、このBad Brainsとの2週間のツアーのオファー、西の方ではなんとLeewayも同行するってさ。

なんで同じ時期なんだよって思いながら、Bad Brainsのツアーを選んだんだ。その決断に不満があった父親に「父さんにしたら、エルビスプレスリーから一緒にツアーを回って欲しいんだって頼まれたようなもんだよ」と説得して、なんとか納得してもらった。

Pete
1枚目のレコードを出すときはちょうどアート系の学校を卒業した頃で、親父に就職しろよっていつも求人雑誌を見せられていたな。

Lou
その当時、僕は金持ちのカーペット工場のアート部署で働いていてね。超大金持ちのマイケル・ジャクソンみたいな人のラグを作っている様な工場さ。

そこでツアーに出るから、2週間の休暇をくれないかと工場に頼んだら「バンドをとるか、ここで仕事をするか」の2択を迫られたから、そのまま工場を出て二度と戻らなかったよ。その頃は寝室が3つあるQueensのアパートに住んでいたから、どうやって家賃を捻出したらいいんだって焦ったよ。

Pete
両親はいつも俺たちのことを誇りに思ってくれていると同時に、未だに超心配しているよ。親父はもっと電話をしてこいと言ってくる。

電話をかけたらかけたで「ツアーはどうだ?こっちは快晴だ。それで、ツアーが終わったら次はどうするつもりだ?」 っていう感じなんだ。そこで「親父の遺産がもうすぐ入るだろ?」って冗談を言ったら親父はいつも笑っている。

初期は郵便配達、建築関係、解体屋、色んな仕事をやっていたよ。それでヨーロッパツアーに行き始めたとき、1人あたりのギャラが$3000(当時で恐らく30万円ほど?)だったんだ!

これは文句じゃねぇよ、だけどツアーは本当に過酷だったんだ。移動距離も半端なかったし、毎日が睡眠不足だった。ツアーが終わってマンハッタンに帰って、家賃を払ったら何も残らなかった。これでメシが食えるほどになるまでには相当な時間がかかったよ。

Lou
なんで大学を卒業しなかったんだ、ウダウダ、、、って時期も正直あった。その頃はツアーに出て、帰宅してクソみたいな仕事に直行して。それで金曜日の仕事が終わったらまたバンに機材を積んでライブに行く、その繰り返しだった。それが普通にできたのは、ライブをするのが心底好きだったからだけどね。

Pete
ただこのままで本当にいいのか?と現実的に自問自答したときも多々あったのは事実だ。

Lou
それの典型例が、NYでよく行われていたAmnesty International のベネフィットショウだな。2,000~3,000人の前でやるのにギャラは無し。

ベネフィットショウ(慈善興行)だということは勿論のこと理解していたし、当然ギャラ無しなのも分かっていたけど、道を挟んだ向こう側ではメタルのショウが行われてたりしていて、ツアーバスもあれば機材のエンドースメントもある、さらに客もこっちより全然少ない。それなのに、僕はショウが終わった4時間後には仕事に向かわなければいけない、と違和感を覚えたことはある。

なぜ当時の音楽業界はメタルばかり取り上げて、ハードコアは無視をするんだ、って。

のちに”利益を生むこと”が基盤にあると分かってきた。あっちの音楽は利益を生んでレーベルに還元、それの循環をさせている。ハードコアは"それをするべきではない"風潮があるんだ。残念ながらハードコアはアティチュードの為に、自分の首を絞めているところがある。

Pete
それからだいぶ経った後の話だけど、ドイツのFull Force Festivalに呼ばれた。その数年前から成功をし始めて俺たちもバンドとして良くなっていたから、より高い報酬を期待出来る立場までいけたんだが、そこでエージェントの奴が「ウソだろ?ハードコアバンドにお金を払わないといけないのか!?」って。

いやいや、俺たちは家庭のある男たちだ、請求書もクソ程ある。俺たちを頼っている家族と払わなければいけない家賃がある、他の人たちと一緒だ。当たり前の話だ。メタルバンドには同じことを言わないくせにな。


2.ギブ&テイク

Lou
ここまでバンドを長く続けていけている最も大切なことは、愛するもの(ハードコア/バンド)に出会えたことと、続けていきたいという気持ちだ。自分たちのエゴは出来るかぎり切り離している。

もちろん口論もよくあるし、お金が絡むこともある。このバンドに関しては全てを4等分にしているんだ。不満があることは個々でたまにあるが、そうやっていくのが唯一の続けていく方法だと思っている。

Armand Majidi(Dr.)
俺以外のメンバーが興味ないから、俺がビジネス面の管理をしている。これが割と性に合っているんだ。予算を出して、その予算内でツアーを回る。運がいいことに、これまで他のメンバーと大きな問題になったことはない。みんな俺のことを信用してくれているし、それに俺は応えるのさ。

Lou
このバンド内で誰1人として"クレーム(強要した主張)"をするべきではないんだ。皆んなが愛していることをしているのだから。

ときどきバンド内で変な空気になるときはある。

喧嘩を避ける為に、例えばArmandがPeteに言いたいことがあるときにあえて僕を通して彼に伝えるとか。僕たち兄弟と、Armand・Craigの2対2になることが多い。最近の例で言うと、最新アルバム「Wake the Sleeping Dragon!」の曲順で真逆の意見に分かれたり。

Pete
俺とLouはアイツらの意見を渋々だが呑んだんだ。俺は全くあのアルバムの曲順が好きではない、全然だ!アルバム自体は勿論愛しているけどね。

Lou
”ギブ&テイク”の繰り返しだよ。

面白いよな、ArmandがPeteに何かあるときは僕というフィルターを通して伝えたり、逆も然りでPeteを通して、意見を聞くこともある。僕たちが兄弟だから。でないとOasisやThe Black Crowesみたいに兄弟喧嘩になって分裂してしまう。それぞれエゴと各々の思いがあるのは当たり前だ。Craigはいつも謙虚でいろと、口を酸っぱくして言っているよ。そう思えば、俺たちは謙虚なバンドだと思う。

Pete
Craigは死ぬほどナルシストのクセにな!(笑)

Lou
それもみんな一緒だよ。

Craig Setari(Ba.)
色々あるけれど、なんだかんだであの兄弟は上手くやっているよ。性格は真逆なのにな。

バンドを継続させていくという共通の目標が大きい。よく周りのバンドである揉めごとみたいなことに俺たちはならない。無意味だから。もし殴り合いをしたとしても、根底には共通の目標がある。

Lou
未だにステージに立って観客が僕たちの曲を歌ったり、狂ったように踊ったり、表情が変わっていく様子を見ると高揚するよ。例えば「Death or Jail」はギターから入って、急にみんなが叫ぶのを見たりすると、コイツらマジで俺たちの曲大好きじゃん!って生きている心地がするんだ。時代も、僕たちの年齢も関係ない。

よく周りの人間に若さの秘訣を訊かれたりするけれど、コレをやっているからに決まってるじゃん!Aerosmithみたいなバンドもきっとそうだろ?好き嫌いはあるだろうが、何十年もやっていて、未だにステージに上がれば全身全霊でやっている。だいぶ前のインタビューだけど、Steven Tylerも未だにステージに上がったら興奮すると言っていた。

バンド結成当時によくつるんでいた友だちが、久しぶりにライブに来て言ってくれたよ、「お前たちは俺たちが10代の頃にやりたかったことをやり続けているな!すげぇよ!」ってさ。

Pete
俺たち4人は切っても切れない家族だ。


■SICK OF IT ALL JAPAN TOUR 2024

::1/18 (THU) TOKYO DAIKANYAMA @ UNIT::
w/ NUMB / COCOBAT
OPEN 18:00 / START 19:00
ADV 7,000YEN / DOOR 8,000YEN
Ticket: bloodaxefest.thebase.in | e+[eplus.jp]
Will Call for international customer: info@bloodaxefest.jp
Venue Info: https://www.unit-tokyo.com | 03-5459-8630

::1/19 (FRI) NAGOYA @ RAD HALL::
w/ FACECARZ / BEYOND HATE
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV 7,000YEN / DOOR 8,000YEN
Ticket: bloodaxefest.thebase.in | e+[eplus.jp]
Will Call for international customer: info@bloodaxefest.jp
Venue Info: http://rad.radcreation.jp/hall/radhall | 052-253-5936

::1/20 (SAT) OSAKA @ YOGIBO HOLY MOUNTAIN::
w/ T.J.MAXX / NODAYSOFF
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV 7,000YEN / DOOR 8,000YEN
Ticket: bloodaxefest.thebase.in | e+[eplus.jp]
Will Call for international customer: info@bloodaxefest.jp
Venue Info: https://selebro.co.jp/holymountain

::1/21 (SUN) TOKYO SHINJUKU @ ANTIKNOCK::
w/ LOYAL TO THE GRAVE / ETERNAL B
OPEN 17:30 / START 18:00
ADV 7,000YEN / DOOR 8,000YEN
Ticket: bloodaxefest.thebase.in | e+[eplus.jp]
Will Call for international customer: info@bloodaxefest.jp
Venue Info: https://www.antiknock.net | 03-3350-5670

■Total Info
https://bloodaxefest.jp/baxetour/sick-of-it-all-japan-tour-2024/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?