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インドで荷物がなくなった結果カレーよりおにぎりが食べたくなった話

インドで荷物がなくなった。



日本人はインドでアライバルビザが取得できるので、アライバルビザを申請していたら、忽然と姿を消した。

※この記事を書いている2021年4月5日現在は、アライバルビザの発給は停止されています。


空港に着き、係の人にアライバルビザを申請したいことを告げると、明らかに動揺していた。

めったに動揺しないインド人が動揺していることに衝撃を受けた。

めったに長ズボンを履かない勝俣州和が長ズボンをはいた時くらいの衝撃だ。見たことないけど。


オフィスにある箱という箱をひっくり返し、申請に必要な書類を探す空港職員。1人が2人になり、3人になり、結果オフィス総出での作業となった。

今こそ井上陽水の出番である。

「探し物はなんですか?それより僕と踊りませんか〜♪」

からの、インド映画ばりの全員まとめてのダンス。なかなか楽しそうじゃないか。


もしや、僕と妻が、記念すべき初のアライバルビザ申請者なのか?

30分以上かけて書類が発掘され、全ての申請が終わるまでに約1時間半ほどかかった。結果的にみんなで踊ることはなかった。

でも、まぁいい。踊る妄想もそれなりに楽しめことだし。


ただ、そのあとが問題だった。申請を終えて、荷物を取りに行くと、僕たちの荷物がなくなっていた。

近くの職員に聞いてみる。

「お前たちは国内線に乗り継ぎするんだろうが。だったら荷物はすでに国内線の方へいっとるわ。」との返答だった。

優しい。バファリンより優しい。3分の2が優しさでできている。乗り継ぎの荷物を自動的に運んでくれる仕組みがあるなんて。


徒歩15分ほどかけて国内線のターミナルへ移動して、国内線のターミナルで手続きをする。

カウンターのお姉さんが「おい、荷物はどうした?」と聞いてくる。

先ほど聞いた話をすると、お姉さんは衝撃的なことを口にする。


「荷物なんて預かっていない。そんな仕組みはこの空港にはない。」



今すぐバファリンに謝りたい。


冷静に考えると、国際線と国内線では航空会社が違ったので、もう一度チェックインが必要なのだ。

荷物がうまいこと引き継がれるはずはない。

優しさに甘えていただけ。いわば、惰性で付き合っているカップルと一緒だ。


仕方がないので、荷物の捜索を始めることにする。再び井上陽水が頭の中で流れ出す。

なんと航空会社のお姉さんが、手伝ってくれるらしい。本当に優しいのはお姉さんだ。惰性で付き合っているカップルであれば、すぐにお姉さんに乗り換えるべきである。


惰性で付き合ってるカップルってなに?


調べてもらうと、やっぱり国際線のターミナルに荷物が残っている可能性が高いとのこと。


バファリンに土下座したい。

半沢直樹の伊佐山(猿之助)ばりに「詫びろ、詫びろ、詫びろぉぉぉ」とバファリンに詰められても仕方ない。その際は、柄本明ぐらいするっと頭をさげる覚悟だ。


またまた15分かけて、国際線のターミナルに戻る。

お姉さんが職員に聞いてまわってくれた結果、忘れ物センターに保管されていることが判明。

「それは、忘れ物じゃない!探し物だ!」

この話が映画化されたら、ここが一つの山場だろう。

「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」青島!


そもそも、バックパックを忘れるってどんなやつだ。どれだけはしゃいでいたんだ?どれだけうっかり者なんだ。うっかり八兵衛でもしない忘れ物だろう。


お姉さんのあとを追う。頭の中の井上陽水はドナドナへと変わった。


余談だが、なぜドナドナって教科書に載っているのだろう。切なすぎて、全然教科書向けの曲ではないと思う。

誰かわかる人は教えて欲しい。教えてくれたら、美味しいインドカレーを奢ります。


国際線ターミナルの中をかなり歩いて、忘れ物センターへたどり着いた。保管されている荷物を出してもらう。

出てきたのは、ミイラに巻かれた包帯ばりに、ラップで何重にもぐるぐる巻きにされた荷物だった。

こんなにラップで巻かれた何かを見たことがない。おにぎりも、食べかけのバームクーヘンもこんなにはラップで巻かれない。


ようやく対面したのに、簡単に受け取ることはできず、X線検査場へと連れていかれた。

検査場のお兄さんはとても面倒臭そうだ。

ラップでぐるぐる巻きにされた、うっかり八兵衛の忘れ物を検査しろといきなり言われたら、そんな顔なるわな。


何重にも重ねたクリアファイルに入れられた、うっかり上司の健康診断書を、くまなく点検して異常がないか教えて欲しいと言われることを想像して欲しい。


うっかり上司ってなんだ。うっかりしたやつは出世するな。



検査を終えたお兄さんが言い放つ。

「次回からは、忘れ物に気をつけろ」

猛反論したことは言うまでもない。

仮にその時、蓮舫が相手でもやりあえる反論ぶりだったと思う。


無事に荷物が帰ってきた。ラップでぐるぐる巻きにされた状態で。

お姉さんに謝辞を述べ、ぐるぐる巻きになっていたラップを取りながら、思った。




「おにぎりが食べたい。」


これがインドのスタート地点の空港で起きた出来事だ。インドに行ってアライバルビザを取得すると、カレーよりおにぎりが食べたくなることがあるので、旅する際は気をつけて欲しい。

サポートしていただいたお金は、旅の資金に回し、世界のどこかであなたのことを勝手に想像してニヤニヤしたりなどします。嫌なときは言ってください。