見出し画像

監査法人でプロジェクトを任せられたら~プロジェクトは立ち上げ方が肝心~

どんな会社でも「プロジェクト」と名のつくものが無数に走っています。
社運を賭けた業務改革プロジェクトから、部署の飲み会まで。日常業務でも、期間限定のものはだいたいプロジェクト。
でも、はじめてやってくれと言われたら、誰でもとまどいますよね?


てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。

監査法人でも、新会計基準への対応、監査ツールの刷新、新部門や新規サービスの立ち上げなど、プロジェクトには事欠きません。
中には、採用活動や部門のイベントなどで、スタッフが中心となることもあります。
プロジェクトをはじめて任せられたらどうしたらよいか。今回は、プロジェクトの立ち上げ方について考えてみましょう。

プロジェクトの立ち上げ方

プロジェクトオーナーとすり合わせ

どんなプロジェクトにも、「オーナー」とか「スポンサー」と言われる人がいます。プロジェクトの最終的な責任者で、あなたにプロジェクトを頼んだ人が該当するのが普通です。
あなたが発案者であっても、仲間うちだけで完結するものでなければ、うしろだてを誰かにお願いするでしょう。

まずはその人と、プロジェクトの目的をすり合わせましょう。
最初にボタンをかけ違えてしまうと、軌道修正がたいへんになります。
このときに、表面的な言葉に飛びつかず、プロジェクトが必要になった背景も含めて深掘りすることが重要です。

例えば、こんな指示を受けたとします。

うちの部門の所属者ががんばってくれているので、それに報いるイベントを何か繁忙期前にやってくれない?

「かしこまりました!」と走り出すのは、待ってください。
もうちょっと解像度を上げていきましょう。

  • 「がんばってくれた」とは、具体的には何を見て思っているのか

  • 「報いたい」と思った背景に何があるのか

  • そのために「イベントをしたい」と思ったのはなぜか

そうすると、こんな本音が見えてきます。

忙しすぎて所属者が疲弊していて、退職が増えることが心配。特にシニアスタッフを引き留めるために何かやりたい。

ここまで来たら、「イベントやっても意味ないので、○○をやった方がいいですよ」と、より意味のある提案ができるかもしれません。
以下では、イベントを実施する前提で進めます。

プロジェクトオーナーと条件を握る

まだプロジェクトをはじめてはいけません。
返す刀で、引き受ける条件として、プロジェクトを成功させるために必要なものを要求しましょう。

指示を受けたその場が難しくても、その日中など、時間をおかないことがポイントです。
「引き受けてくれるかな、どうかな」とドキドキしたり、「引き受けてくれてありがとう!」と強く思っているときの方が、応じてもらいやすいため。

プロジェクトの期間、メンバー、予算、利用する施設などに加えて、プロジェクトオーナーに関与してほしいところも重要な要求事項です。

先ほどのイベントの例で言うと…

・通常、2、3名で行う幹事を5名にしたい
・いつもの小予算では意味がないので、その1.5倍はほしい
・イベントの内容は、幹事に任せてほしい
・シニアスタッフを最優先したイベントにしたい
・部門のパートナーはできるだけ全員が参加し、飲み食いは控えてシニアスタッフと会話してほしい
・イベントの冒頭に、事務所トップからモチベーションがあがるあいさつ(ただのあいさつではなく)をしてほしい
・プロジェクトオーナーとは週1回30分打ち合わせの時間が欲しい

こんなにたくさんは承諾が得られないことが多いと思いますが、ここで間口を広げておけば、あとあと自由度が増します。

チームメンバーを集める

目的達成に向けて、必要なチームメンバーを集めましょう。
人選のポイントは、次の二つです。

  • プロジェクトを成功させるために、必要な能力、時間、やる気がある人

  • プロジェクトの足を引っ張らない人

いくら能力が高くても、時間もやる気もなかったら貢献できません。
また、ほかのメンバーの批判ばかりする人だと、本人の貢献が大きくても、ほかの人のパフォーマンスを下げてしまいます。誰とも接触せずに一人で活動ができるのでない限り、招かない方が正解です。

ミッションと成功基準を決定する

メンバーが決まり、初顔合わせでプロジェクトのミッションと成功基準を決めます。
ミッションとは、プロジェクトの存在意義のことです。これが達成されないのであれば、プロジェクトは解散する方がいい、と言えるものです。
成功基準は、成功したか否かがデジタルに分かる基準です。

ミッションと成功基準をまず決めるのは、メンバーが正しく意思決定できるようにするためです。
あなたがすべての意思決定をできるのであれば、これらは必要はありません。
しかし、メンバーにも自ら考えて動いてもらいたいのであれば、判断の軸となるよりどころが必要です。ミッションと成功基準は、そのよりどころになります。

ちなみに、ミッションは、プロジェクトオーナーとすり合わせした目的と同じでもよいですし、その目的を達成できる範囲で独自に設定しても構いません。
作りたてほやほやのミッションに、メンバーがわくわくできたら合格です。

イベントの例で言えば…

ミッション
シニアスタッフが、自分たちが大切にされていると感じられ、繁忙期を乗り切れるようにモチベーションを上げる。

成功基準

シニアスタッフが○人以上参加する。さらに参加者のうち8割が「モチベーションが上がった」と評価する。

重要なマイルストンを設定

いよいよ本格的な計画に入ります。
超短期のプロジェクトでなければ、途中に重要な節目(マイルストン)があります。マイルストンを明確にし、一つひとつ達成していくことで、着実にゴールに近づくことができます。

マイルストン設定のために、情報が必要です。

  • プロジェクトチームの外から入手する情報

    • 関連する重要な会議体とその日程

    • 必要な承認とそれを通すために必要な日数

    • 周知が必要であれば、説明する方法と時期

  • プロジェクトチームの中で検討する情報

    • ざっくりしたタスクと所要日数

イベントのおおよその開催日から、主要なタスクと所要日数を使って逆算していきます。
会議の日程や承認の所要日数にうまくはまればそれでよし、はまらなければ調整します。
不確定要素が大きいプロジェクトだと日程が組みづらいですし、あとで変更になる可能性が高くなります。それでも、分かっている範囲で計画すれば、スケジュールの無理な部分が分かるかもしれませんし、どの程度の余裕があるかも分かります。

イベントの例では、こんなところでしょうか。

○月○日 イベントの内容と開催日を仮決定
○月○日 内容と開催日をコントロールオーナーに報告
○月○日 詳細を詰め、○○会議事務局に提出
○月○日 ○○会議にてプレゼン、承認を受ける
○月○日 事務所全体に、メールで案内

マイルストンが固まれば、プロジェクトオーナーに報告し、同意を得ておきましょう。

計画に沿ってプロジェクトを推進!

あとは最初のマイルストンめがけて、プロジェクトを進めます。
予想外の事態が発生することが通常ですが、ミッション、成功基準と照らし合わせながら、さらにあなたはメンバーをケアしながら、目的に向かって走りましょう。

おわりに

ほとんどのプロジェクトは、計画がうまくいけば、8割がた成功が見えてきます。
計画段階では雲をつかむようで、やってみないと分からない、研究開発のようなプロジェクトもあります。それでも、しっかり立ち上げ、計画することで、迷走を避けることができます。

監査だってプロジェクトですね。
何をやるかはお互い分かっている前提で、わらわら集まっておもむろに始めていませんか?
本当は、監査も上記のプロセスを経由することで、よりストレスのなく進めることができます。

監査にせよ、ほかのプロジェクトにせよ、皆さまが任せられたときの参考になれば幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?