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日本一の監査チームになるには?と聞いたら思わぬ展開になった話【監査ガチ勢向け】

YouTubeの釣りタイトルのようになってしまい、すみません。Twitterで質問したところ、議論がちょっと意外な方向に行きました。


てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。

Twitterで次のように聞いてみたところ、たくさんのご回答をいただきました。ご協力いただいた皆さま、まことにありがとうございます。🙇‍♂️

質問したときに想定した回答は、「AIを駆使して…」「最先端の…」「グローバルに…」といったもの。
ところが、さすが実務家の皆さま。地に足の着いた回答をたくさんいただきました。しかもそれらを眺めていると、「日本一」うんぬんではなく、現状の課題を訴えておられるように思えてきます。
そこで、勝手ながら「日本一の監査チームになるには?」を改題し、以下では「監査チームの重要な課題とは?」として進めさせていただきます。

いただいたコメントは、おおむね次のように区分できます。

❶ コミュニケーション(チームワーク、リーダーシップを含む)の課題
❷ 人材育成の課題
❸ プロジェクト・マネジメントの課題
❹ 監査品質の課題
❺ 効率性の課題
❻ その他

この区分に沿って書いていきます。
なお、いただいたご回答を私の方で咀嚼、反芻、消化してまとめています。そのまま取り上げられていなかったり、趣旨が違うと思われたら申し訳ありません。

❶ コミュニケーション(チームワーク、リーダーシップを含む)の課題

いただいたご意見から、次のような課題が浮き彫りになりました。

  • チーム内のコミュニケーションの機会が足りない

  • 相談しやすい雰囲気が足りない

  • パートナーのリーダーシップが足りない

コミュニケーションの機会とは、仕事上最低限のやり取りだけでなく、情報共有や雑談を含めた機会です。
コロナ下で本格的に始まったリモート執務はメリットも大きいものの、話す機会、特に雑談が減ったとよく言われます。

相談しやすい雰囲気は、監査チームだけでなく内部専門家も含めて、疑問があったり意見が異なっているときに安心して声を上げられるか、ということです。
よく言われる、心理的安全にも関係しています。

パートナーのリーダーシップは、責任感をもって監査チームを管理(現状把握と必要な介入)ができること、必要に応じてクライアントとバトれること、問題提起は余裕をもって行えること、が課題と感じられています。
私自身、胸に手を当てて反省しております。

❷ 人材育成の課題

人材が成長できることは、監査チームにとっても監査法人にとっても死活問題。と言いながら、目の前のほかの問題を優先してしまうことが少なくありません。

監査チームで育った人が巣立ってほかのチームで活躍してもらえると理想的ですね。経営者を多数輩出しているリクルート社のようなイメージです。
人が育つためには、監査チームによく考え議論する風土がないといけない、そのための時間が十分に確保できていないといけない、と言えます。

また、チームメンバーに一年限定で、一般事業会社の経理に修行に出てもらう、という具体的なご提案もいただきました。
企業の立場で決算や監査対応を経験することで、クライアントの気持ちや悩みを知ることができます。

❸ プロジェクト・マネジメントの課題

プロマネについてのご意見もたくさんいただきました。皆さま、苦労されているようです。
監査は一年かけて走る「プロジェクト」ですので、プロマネの巧遅はチームのパフォーマンスに大きく影響します。

プロマネの専門要員を置くべきプロマネのプロを置くべきといったご意見も複数いただいています。
これは実際にやってみたことがあるのですが、監査チーム側の問題で簡単にはいきませんでした。別の機会に、そのときの経験を書きたいと思っています。
結局、プロマネの問題解決には監査チームメンバーの多大な努力が必要になる、というところが個人的な結論です。

❹ 監査品質の課題

監査品質に関するご意見は、意外と少ない結果となりました。
もうお腹いっぱいで、これ以上何をするの?というところかもしれません。

一ついただいたのは、「監査品質って何だろう、と議論してチームとしての結論を出す」というご意見です。
なんとなく、監査品質は、誰かに決められて、そこに向かうようにムチ打たれるもの、と思ってしまっていないでしょうか?(私だけ?)
本来は自分たちで腹落ちしたゴールに向かうべきですね。そうすることで、自分事として監査品質に取り組むことができます。

❺ 効率性の課題

クライアントと十分なコミュニケーションを図り、監査上の論点を十分に検討し、さらに十分な睡眠をとるために、効率化の不断の努力が必要です。

そのために、過剰な監査手続は徹底的に排除しなければなりません。必要最低限を超える手続を実施しない勇気も必要になります。

❻ その他

番外編として、「日本一になるためには」に直接対応するご意見も紹介しておきましょう。むしろこちらの方が本来の趣旨に沿った議論なのですが…

「日本一」に意味はあるのか?

クライアントの状況によって監査チームの在り方は変わるはずで、クライアントごとに最強の監査チームであることが重要なのではないか、というご意見。

クライアントにとっての日本一、という議論もありました。
あえてあいまいな問いにしましたが、誰にとっての日本一か、どのような基準による日本一か、で答えは変わってくるはずです。

目指すは世界一ではないか?

日本一なんて、志が低いのではないか、とのお叱りもいただきました。
おっしゃるとおり。グローバル組織からの指示に対して「日本では難しくて…」と泣き言を言ってないで、日本発で世界に向けて見本を見せてやればいいんです。

おわりに

日本一を目指すかどうかは別として、監査チームごとに中長期的なゴールや年度の目標を定めることは意味があります。そうでないと、「誰からも怒られないこと」が唯一の目標になってしまいます。

最後に、Twitterでの議論に参加いただいた皆さまへ。
必ずしも治安のよろしくないTwitter上で、皆さまと意味のある議論ができたことで、たいへんよい刺激になり学びとなりました。
改めて感謝申し上げます。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま


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