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監査パートナーって、何やってるの?

監査現場で会うことはほとんどなく、事務所でたまに見かける程度。監査責任者であり、高給を食んでいるはずのパートナーはどこで何をやっているのでしょうか?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

「監査パートナーって、何やってるんですか?」
最近、大手監査法人の職員からそんな質問を何回かいただきました。
パートナーたちは、監査もせずに何をやっているのか。その生態を解き明かします。



監査パートナーが担当する業務

まずは、大手監査法人のパートナーがどんな業務を抱えているか挙げていきます。

監査業務の業務執行社員

一人のパートナーが担当している監査業務の数は、クライアントの規模にもよりますが、少なくて5社くらい、多いと20社を超えます。
巨大クライアントでは1社専属だったり、ファンドの監査では何百という監査を担当していることもあります。

上場企業では複数のパートナーで1社を担当します。
若い方のパートナーが、調書レビュー、クライアントの質問対応やクレーム対応、監査チームメンバーのケアなどを担当。いずれもマネジャーが主に動き、若手パートナーはそれを遠隔操作したり、難易度の高いときには自分が出ていきます。

シニアな方のパートナーは、CFOなどクライアント上層部とのコミュニケーションや、非監査業務を提供しているチームがあればそことのやり取りなどを分担します。
調書レビューなど監査に必要な業務もやりますが、若手パートナーほど関与しないことが通常です。その代わり、担当する会社数が多くなります。

審査

監査法人によっては、審査を少数のパートナーに集中させていることもあれば、数多くのパートナーで分担することもあります。

検査などで指摘があれば、再発防止策に「審査の強化」が入ることが多く、審査の時間は増える傾向にあります。
しかも、監査計画から監査意見表明まで、年度を通じての関与が求められます。

余談ですが、審査は一人で担当することが多く、意外と孤独な仕事です。

事務所経営

監査法人に限らずプロフェッショナルファームでは、パートナーが事務所経営も担います。
例えば、こんな役割。

  • 監査部門内の部門長

  • 品質管理責任者

  • 人事責任者

  • 経理責任者

  • 情報システム責任者

このような役割を担当していないパートナーも、株主総会に相当する社員総会や、月次などで実施するパートナーのミーティングに出席して、議決に参加したり意見を述べたりします。

プロジェクト

期間限定のプロジェクトが立ち上がり、パートナーがリーダーとなることがよくあります。
というよりも、何らかの命を帯びたパートナーが、目的を達成するためにプロジェクトを立ち上げてメンバーを集める、という流れが一般的でしょう。
どんなプロジェクトがあるかと言うと……

  • 新しい監査アプリケーションやツールの導入

  • 新規サービスの立ち上げ

  • 新規監査業務の獲得

  • 事務所の引っ越し

その他

このほか、会計士協会、企業会計基準委員会(ASBJ)、企業会計審議会での活動も、担当しているパートナーにとっては重い仕事です。
業界を離れて、経済同友会などで財界活動をしているパートナーもいます。


パートナーはスーパーマン、スーパーウーマンか

これで「監査パートナーって、何やってるんですか?」という質問に表面的には答えたことになると思います。
でも本当の質問はこれですよね?
「なんで監査現場に来ないの?」

端的に回答すると、ほかが忙しいから、ということになりますが、二つの要因があります。

ほかの監査業務が火を噴いている

業務執行社員を担当する会社が多いほど、どこかがトラブルに見舞われる可能性が高くなります。
トラブルが深刻であれば、パートナーが飛び込んで陣頭指揮を執ることが求められます。

例えば、こんなことが起こったときです。

  • 重要な不正が発覚

  • 高難易度の会計案件が発生

  • クライアント執行部や監査役等から強烈なクレーム

監査業務以外の業務が重い

人事にせよ情報システムにせよ、一般事業会社では責任者がフルタイムで担当している仕事です。部門責任者として承認や判断をしないといけないことが無数にあります。
特に、何かを変えようとしたり、新しいことをはじめようとすると、パートナーが手を動かさないと1mmも進まない場合があります。

プロジェクトものや、外部の公的な活動も同じような状況になっていることが通常です。

スーパーマン、スーパーウーマンではないパートナー

このように二つの要因がありつつ、パートナーはすべての監査業務に重い責任を持っています。
これらすべての責任をまっとうすることは、スーパーマン、スーパーウーマンになれと言っていることにほかなりません。そんなスーパーパートナーはほんの一握りです。

ところで、監査業務はマネジャーがいます。
監査マネジャーは、監査や会計に詳しいことを除いても、世の中的にはとても有能な人たちです。簡単な指示で動いてくれるし、指示がなくても監査を前に進めてくれます。
全パートナーは、一日の仕事を終えるときに、マネジャーへの感謝を心の中で唱えるべきだと思います。というよりも、直接伝えてあげてください。

話が横道にそれましたが、パートナーの仕事が多すぎてすべてに思うように関与できない場合、監査業務はマネジャーに任せて、自らが動かないと前に進まないほかの業務を優先してしまう、ということが起こります。

だから仕方ない、というわけにはいきません。
そこで、少し前に若手パートナー向けにこんな記事を書きました。

この中で「間違い❷」として、マネジャーに丸投げしてしまうことを戒めています。


おわりに

私がスタッフのころ、パートナーは雲の上の人というか、自分にはほとんど関係のない人たちでした。
ところが自分がパートナーになってみると、スタッフがそれほど遠い存在だとは思えません。

珍しくパートナーに遭遇することがあれば、何か質問でもしてみてください。喜んで答えてくれると思います。
ただし、話が長いことがありますので、先に謝っておきます。と言うのも……(以下、長くなるため省略)。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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