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独立開業している会計士22人に聞いて分かったこと

監査法人を退職し、独立開業している人たちに話を聞くのが楽しくて、気がついたら20人を超えていました。
そこで分かったこととは…


てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。

監査法人を退職してもうすぐ5か月。
これまで、私より先に退職した元先輩、同僚、後輩に声をかけて、直接会ったり、リモート会議で話しました。
スタッフで辞めた人から、私のようにパートナーで辞めた人までいます。
その数、30人超。うち22人が独立開業しています。

今回は、この22人から学んだことを以下の二つに分けてご紹介します。

  • 22人の多様な業務

  • 22人が口をそろえて言うこと

22人の多様な業務

一人で複数の業務を担当している人が多く、バラエティーに富んでいます。

税務

想像はしていましたが、大なり小なり税務を中心に開業している人はかなりの数にのぼります。
法人税、消費税、所得税、相続税などに加えて、記帳代行も。

特徴は、税務スタッフを雇っている人が多いこと。
税務は競合が多く、単価がおさえられているので、事務所の規模を大きくしてボリュームを出す必要があるようです。

一方で、継続業務が多く収入が安定することと、人に任せやすい部分が大きいことが魅力です。

会計アドバイザリー業務

監査と近い業務として、決算支援、IPO支援、決算早期化支援、内部統制構築支援なども一般的です。

クライアントに入り込んで一緒に手を動かす仕事から、月一回数時間助言するだけといった会計顧問まで、クライアントのニーズによってさまざまな関与度合いがあります。

内部監査支援

内部監査を強化しないといけないが、社内に人材はいないし、何をしてよいのか分からない、という会社は多いようです。
特に海外子会社の内部監査となると、英語を話せる人材の不足もあってニーズは高いようでした。

FAS業務

買収時の財務DD、事業再生、バリュエーション、不正調査などのFAS業務もよく聞きます。
いずれも、比較的短期間に終わらせる必要があり、一人でできないことも多いので、仲間を誘ってそれぞれの強みを活かしてサービス提供しています。

単価はよいようですが、依頼は急に来てすぐに始まるため、あらかじめ予定を立てづらいことが難点です。

起業

「独立開業」とちょっと違いますが、自分で会社を作って社長として活躍している人もいます。
「監査の経験しかないから無理」と思うかもしれませんが、会社のすべての機能を経験した上で起業する人などほとんどいません。
もともと持っている強みを活かして、ほかの機能は学んだり、できる人に任せたりして経営している人ばかりです。

パートタイムCFO

自ら起業しなくても、上場を目指す会社にCFOとして招かれることも多いようです。
しかもフルタイムの業務量はなく、個人事務所と両立させている人がいます。

CFOといっても部下はゼロから数名。
経理だけでなく人事や総務を含めた管理部門業務を一括して面倒をみています。誰の仕事でもないような「その他業務」を拾うことも多いようです。

教える仕事

大学の教授や講師になる人もいます。
ただ、希望者は多く、有名大学の教員になるのは狭き門とのこと。

専門学校で教えている人もいました。
実務を分かったうえで教えることができるため、受験生の評判も良いようです。

セミナー講師もときどき聞きます。
特に有名でなくても、「公認会計士」という資格が効くようでした。

監査役等

監査役や監査等委員も多いですね。
若くて50代と思いきや、40代や30代でもニーズがあるようです。

監査

最後に回しましたが、監査業務をメインとして、あるいは部分的に関与している人も意外と多くいました。
独立直後は、出身監査法人や中小監査法人でパートをして生活費を稼ぎ、個人事務所が立ち上がるにつれてフェードアウトしていくパターンをよく聞きます。

個人事務所が軌道に乗ってからも、監査から離れたくないので細々とパートを続けていたり、久しぶりにやってみたくなって監査に戻る人もいました。

22人が口をそろえて言うこと

さまざまな異なる分野で活躍している皆さんから、共通して聞くことがいくつかあります。

「仕事のきっかけは、知り合いからの紹介がほとんど」

ホームページをきれいにしたり、SNSで拡散したりしていても、結局仕事は知り合いから紹介してもらうことが多いようです。紹介してくれるのは、

  • 出身監査法人の上司、先輩

  • 出身監査法人で担当していたクライアント

  • 開業後に知り合った士業

  • 開業後のクライアント

が大半とのこと。

「監査法人のスタッフは優秀」

監査法人では、スタッフ同士比べられることが多いため、能力にばらつきがあるように思いますが、世の中を広くみると、監査法人のスタッフは優秀だったんだとなつかしく思い出すようです。
監査法人時代、簡単な指示でよくあれだけやってくれたなあと話していました。

「監査法人で学んだことが役立っている」

22人の中には、監査法人時代にアンハッピーだった人もいますし、そうでなくても不満はいろいろあったと思います。
それでも、今になってみると、監査法人で学んだことは無駄じゃなかった、と皆さん言っています。
監査、会計、内部統制に加えて、プロジェクトの回し方や対人関係も含めてのことです。

「会計士でよかった」

これだけ幅広く活躍していることだけを見ても、会計士はすばらしい資格だと改めて思います。
22人の皆さんからも、資格があることで信用してもらえる、いろいろな業務に挑戦できる、会計士同士の助け合いも頻繁にある、なんだかんだ言って食いっぱぐれない、と聞きました。

おわりに

10年以上音信不通だった人から突然声がかかって、忙しい中なのに気持ちよく時間を割いてくれた皆さんに感謝しています。
もっとも、元部下や後輩が多いので、面倒に思いながら付き合ってくれていたら申し訳ありません…

22人のほかに、大きな組織に所属して活躍している人たちも、もちろんたくさんいます。
それぞれ苦労しながらも活躍している姿を見ることはうれしく、またよい刺激にもなりました。

最後に、これをお読みいただいている皆さまのうち、現在監査法人で監査をしている方々にひとこと。
会計士という仕事は、いつでも個人でスタートできるので、退職を迷っていても焦る必要はありません。実際、22人が辞めた時期はスタッフからパートナーまでさまざまで、それぞれ自分の居場所を見つけて活躍しています。
この記事と矛盾しているかもしれませんが、「何かあったらいつでも独立できる」ことで心の平穏を保ちながら、監査を続ける人が増えたらいいな、と思っています。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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