監査法人の管理部門トップはパートナーでよいのか
監査法人の人事や広報など管理部門のトップは、その分野のプロに任せた方がよいのでは、という議論が昔からあります。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
先日、急に思い立ってXのスペースを単独でやりました。話題を募集したところ、次のような質問をいただきました。
質問いただいた方、どうもありがとうございます!
これ、昔からある問題で、今も疑問に思う人は多いと思います。
パートナーは監査などクライアントサービスの専門家であり、管理部門の業務は素人ではないか、ということですね。
おそらく監査法人以外のプロフェッショナルファームでも、管理部門のトップはプロフェッショナル(弁護士、税理士、コンサルタントなど)が務め、重要な意思決定を行っていることが多いように思います。
なんでこんなことになっているのか、3つ理由が考えられます。
監査法人の管理部門トップを公認会計士であるパートナーが務めている理由
❶ 適任者の確保が難しい
例えば、上場会社などの人事に長年いて、責任者を務めたような人であれば、専門家として能力を発揮いただけるかもしれません。
しかし、そのような方はなかなか探しても見つからないようです。
一つには、人事のトップより上のキャリアパスが描きづらいことが挙げられると思います。
公認会計士でなくても「特定社員」というパートナーと同等の身分を用意することはできますが、監査部門のトップになったり監査法人のトップになることは考えられません。
適任者の採用が難しければ内部育成の道もあります。
しかしやはりキャリアパスの問題は残ります。
❷ 毅然とした態度で他部門に対峙することが難しい
監査法人においては、経営者であり所有者でもあるパートナーの存在は別格です。
監査部門などクライアントサービス部門にいる職員であれば、複数のパートナーと仕事をする機会があり、いろんなパートナーがいることが分かります。
当たり前なんですが、しょせん同じ一人の人間であることを理解しているはず。
ところが、公認会計士でない管理部門の職員にとっては、監査法人という理解しがたい組織の雲の上にいるような人で、意見する対象とは思えないようです。
人事本部長として監査部門のトップと対等に議論できるのか。
このような意識の壁がある以上、難しいと思います。
❸ 「現場を分かっていない人が判断している」という批判が出る
❶、❷を克服し、その道の専門能力を持った人が部門長に就任したとします。
人事のたとえで言えば、人事評価や働き方について人事から方針が出され、それが監査部門の公認会計士にとって不本意であった場合、「現場を分かっていないからこんな方針が出るんだ」とならないでしょうか?
もちろん、人事のトップに就任した方が、「前の会社でやっていたから」と言った理由で勝手に変更してしまうのは問題があります。
しかし、監査部門の実情をよく聞いて、関係者と相談した上で決めていても、結果に納得がいかない人たちからは批判されてしまうのです。
結局、パートナーがトップを務める現状では「素人じゃダメだ」と言われ、専門能力を持った人が担当すると「現場を知らないからダメだ」となる。
そんな未来を想像します。
解決策はあるのか?
「できない」理由ばかり並べて「だから、あきらめるしかない」とも言いたくないので、改善する方法を考えます。
やり方は二つあり、すでに取り組んでいる監査法人もあると思います。
解決策A
専門能力を持った人と公認会計士であるパートナーとがペアを組む
管理部門の機能ごとに内部で時間をかけてベテランを育成します。
トップはパートナーが務めますが、部署内はその人がリーダーシップを発揮。
他部門にガツンと言わないといけないときは、パートナーに登場してもらいます。
解決策B
専門能力を持つ公認会計士を育成する
パートナーになってから管理部門を受け持つのではなく、もっと若いときから育成します。
例えばシニアスタッフくらいでしょうか。そこから監査の業務を徐々に減らし、管理部門にシフトしていきます。
監査現場を経験し、専門知識も持った管理部門の責任者の誕生です。
若いうちから管理部門にシフトしたい公認会計士がいるのか、が問題となります。
おわりに
かなり乱暴に解決策まで持ってきましたが、本当は「素人じゃダメだ」と言っている人の意見を掘り下げて、真の問題を特定し、そこをつぶさないといけませんね。
この乱暴な解決策が仮に有効だとしても、時間はかかるし人手も必要です。
同じリソースをかけるのであれば、もっと優先順位の高い課題に、となりそうにも思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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